米電気自動車(EV)メーカーのテスラは2021年10月25日までに、上海市浦東新区臨港新片区に建設中のデータセンター(DC)が完成したと発表した。このDCでは中国国内で生じた生産関連データを保存するといい、近く正式に運用を始める。
同社は、「上海市DC建設ガイドライン2021版」に照らしてDCの建設を進め、必要な商人手続きや届出登録をすでに済ませたとしている。また2021年5月には、公式微博(Weibo)を通じて、今後もさらに中国国内にDCを増やしていく計画を明らかにしている。
テスラの上海DC(IDC圏より)
膨大なデータを扱うスマートカー
スマートカーの自動運転機能は、車両や路面、環境に関するデータを収集し、計算を行い、そのデータを保存している。ある調査によれば、2020年時点で、スマートカー1台につき毎日平均4テラバイトのデータを生成している。これには車両の性能に関するデータ以外に、運転者のデータ、位置データ、周辺データ等といった個人情報や国家の安全に関わる重要なデータも含まれている。
2021年に入り、スマートカーが収集するデータの安全性が議論を巻き起こしている。なかでもテスラは外資系企業であり、データの越境移転の問題もある事から、ユーザーの不安は高まっている。
法規制の面から
2017年6月1日に施行されたサイバーセキュリティ法では、「重要情報インフラの運営者は、中国国内で運用され収集、生成された個人情報と重要データは、中国国内で保管しなければならない」と定めている。
また2021年7月に、工業情報化部が発表したスマートカー産業の管理強化を定める通達(关于加强智能网联汽车生产企业及产品准入管理的意见)では、「中国国内での運用によって収集・生成された個人情報と重要データは、関連法令の定めに従い国内に保存しなければならない。国外にデータを提供する必要がある場合は、データ越境移転セキュリティ評価に合格しなければならない」と規定している。
つまり、自動車メーカーは中国国内にDCを建設し、データの安全に関する法令の遵守が必要となる。さらにDCに関連する各種政策や規定にも対応する必要があるが、北京や上海といった大都市では、DCのPUE(電力使用効率)値、省エネ指標の達成など様々な制限が設けられている。
テスラは法令順守の姿勢をアピール
早くも2020年6月には、テスラ中国の内部情報として、中国のユーザーデータと認証サービスを米国から中国に移管する、つまりサーバーを中国に移すという報道が出ていた。実際に同社の人材採用では、DCの運用管理に関わるITエンジニアを着々と増やしている。
2021年4月には、同社の陶琳副総裁がインタビューの中で、テスラが中国で収集した全てのデータは、今年第2四半期(4-6月)に完成予定となっている上海のテスラ中国DCに保存する計画であることを明言した。
イーロン・マスクCEOも、2021年世界新エネルギー車大会に出席した際のオンライン会見で、「テスラは世界の監督管理機構に協力し、自動車データの安全を確保する」と約束した。さらに、自動運転技術の急速な発展に伴い、車両データの安全への不安が増していることに触れ、「我々は必要な技術措置をとることで、皆様の不安を取り除くことができると考えている」と法令順守の姿勢をアピールしている。
原文:http://news.idcquan.com/news/189739.shtml、翻訳編集クララ