上海におけるシェアサイクルの現状

目次

1. 上海で利用できるシェアサイクルは

2021 年 1 月時点で、上海で利用できるシェアサイクルには、美団単車(Meituan)、ハローバイク(哈囉騎行、Hello Bike)、青桔単車(Didi Bike)の 3 種類がある。いずれも全国展開のシェアサイクルサービスで、それぞれのブランドカラーは美団が黄色、ハローバイクが水色、青桔単車が緑色となっている。

美団単車(Meituan) ……ブランドカラー:黄色

運営元の美団は、デリバリーアプリの「美団」やグルメアプリの「大衆点評」などを運営する会社だ。2018年 4 月にモバイク(摩拝単車、Mobike)を買収して、名称を「美団単車」に変更した。利用料金は、1 回 15 分まで 1.5 元で、以降 15 分ごとに 0.5 元が加算され、30 分の利用なら 2 元となる。

今はどのシェアサイクルサービスも「定額で一定期間使い放題」のサブスクリプションでの利用を推しており、美団では 30 日間乗り放題で定価 25 元のところ、割引されて 15.8 元から利用できる。日ごろから通勤などで利用回数が多い人には、とてもお得な仕組みになっている。

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美団では、駐輪禁止区域やサービス提供エリア外に自転車を停めると 20 元のペナルティが課される。GPS で自転車の位置を特定しており、駐輪した場所がこのペナルティエリアに該当すると、アプリとショートメッセージの両方から通知が入る仕組みだ。

ペナルティの 20 元は美団のアプリから支払うことができるが、救済措置もある。通知を受け取ってから 12 時間以内にペナルティエリアにある美団の自転車のどれかをエリア内に移動させれば、ペナルティは解除される。万が一、GPS の不具合などで駐輪禁止区域ではないのにペナルティが課された場合は、美団のアプリから申し立てをすればペナルティは解除される。現在のアクティブユーザー数は 2,200 万人ほどだという。

ハローバイク(哈囉騎行、Hello Bike) ……ブランドカラー:水色

ハローバイクは EC 大手のアリババ(阿里巴巴)グループが支援するシェアサイクルサービスだ。アリババの決済サービス「支付宝(アリペイ)」のアプリから直接利用できる便利さと、その強い資本力で一気に利用者が増えた。

利用料金は、1 回 15 分まで 1.5 元で、以降 15 分ごとに 1 元が加算され、30 分の利用なら 2.5 元となる。ハローバイクもサブスクリプションを推しているようで、30 日間乗り放題は定価が 25 元のところ、割引されて 17.5 元となっている。アリペイのアプリを使って自転車を利用するのではなく、ハローバイクの専用アプリを使うのならば、1カ月で 14.5 元と更にお得になっている。

駐輪禁止区域やサービス提供エリア外に停めた場合のペナルティは厳しくないようで、ペナルティは 3-5 元と規定されている。駐輪禁止区域は、美団と異なる区域が指定されている。現在のアクティブユーザー数は 3,000 万人を超えるとされる。

青桔単車(Didi Bike) ……ブランドカラー:緑色

青桔単車は日本にも進出しているタクシー配車サービス「滴滴出行(Didi)」が運営しているシェアサイクルで、最近一気に自転車を投入した。

利用料金は、1 回 30 分まで 1.5 元、以降 10 分ごとに 1 元が加算される。ただし上海以外の地域は料金体系が異なり、30 分まで 1.5 元、以降 30 分ごとに 1.5 元が加算となっている。サブスクリプションサービスはあるが、30 日間乗り放題が定価 25 元で割引はない。代わりに継続契約ならば、初月は 9.9 元、2 カ月目以降は 16.8 元と破格の設定になっている。

駐輪禁止区域やサービス提供エリア外に停めた場合のペナルティは、いずれも 5 元となっている。現在のアクティブユーザー数は、ハローバイクと同じく 3,000 万人を超えるとされる。

3 社の利用料金の一覧は次の通りとなっている。

2. 駐輪禁止区域の導入や交通違反の取り締まり強化

過去には自転車が山のように積み上げられていたり、壊れた自転車があちこちに放置されていたりする様子が SNS やニュース記事で報じられていたが、現在は政府の介入もあり、かなり改善されている。

上海では違法駐輪や不法投棄されたシェアサイクルは行政が回収し、保管するようになっている。おかげで長期間放置されたままの壊れた自転車を市内で見かけることはかなり少なくなった。さらに 2020 年あたりから自転車の再配置が行われるようになり、基本的には整備された自転車が市内に満遍なく配置される状況となっている。

こういった放置自転車や故障自転車の回収と適所への再配置は、「政府車両」という表示のついた車が行っているのだが、作業は年中通して、利用者の少ない夜間だけでなく朝や昼間にも行っている。街中には自転車を整理する専門の作業員もいて、シェアサイクルは整然と並べられていることが多くなった。

このほか迷惑駐輪を改善するために、歩道には駐輪可能であることを示す自転車マークと白い枠が設けられた。枠が囲ってあれば、なんとなくこの中に自転車を停めようと思う人が多いかと思うが、きれいに並べられている自転車は恐らく整理作業員が並べたものだろう。

そして駐輪禁止区域が設けられ、違反するとペナルティが課されるようになった。前述した通り、上海でシェアサイクルを展開している 3 社のサービスを確認すると、各社ともそれぞれに駐輪禁止区域を定めており、主に外灘周辺をはじめとする観光地・繁華街で人が非常に集中する場所、ターミナル駅周辺、大通り沿いなどが対象になっている。
ただし、この駐輪禁止区域は上海市政府が定めたものではないため、各社共通ではない事に注意が必要だ。

シェアサイクルは 2016 年ごろに登場した新しいサービスということもあり、まだ法整備が十分ではない。現時点では、省や市レベルの意見書などに従ってサービスが運営されており、上海の場合は 2017 年に公布されたシェアサイクルの発展に関する意見書「上海市鼓励和規範互聯網租賃自行車発展的指導意見(試行)」の中にある「行政とサービス事業者がともに責任を果たす」という規定に基づいて、駐輪禁止区域の取り決めや余剰自転車の回収などが行われているようだ。さらにシェアサイクルの管理を定めた法律である「上海市互聯網租賃自行車管理弁法(草案)」が公表されており、近いうちに正式に施行されるものと思われる。

また、多くの人がシェアサイクルを利用するようになったことで、交通違反の取り締まりが厳しく行われるようになった。自転車での道路の逆走や歩道の走行は禁じられており、上海在住の日本人の間でも罰金を払ったという声をよく聞くようになった。自転車と電動バイクは通行禁止となっている道もあり、うっかり走っていると切符を切られてしまう。

政府の介入や運営側の努力によって、シェアサイクルの「野蛮な時代」は幕を下ろたように思う。ただ利用者自身のマナーが向上したわけではないので、違法駐輪対策がなくなったり、自転車を整理してくれる人がいなくなったりすれば、あっという間に数年前のような状態に戻るだろう。

3. 返金騒ぎもあった ofo の現状

今は亡きシェアサイクルサービスの「ofo(オフォ)」は、2014 年に北京で創業し、モバイクと共に中国のシェアサイクルの黎明期を作りあげた。一時は世界 20 カ国に進出し、日本でもサービスを展開していたが、2018 年 9 月に資金繰りが悪化し、車体サプライヤーであるフェニックス自転車から訴えられた頃から正常な運営がされなくなった。ofo は元々「大学生のキャンパス内の移動を楽に」というところから創業しており、創業者が若くて経営に関して未熟なうえ、頑固で我儘で幼稚だったとも伝えられている。

通常であれば、もっと早い段階できちんと破産手続きなどをすべきだったのだと思うが、デポジットの返金ができない状況に陥っているにもかかわらず、正常に運営しているとの声明を出していたこともあって、サービスがいつ停止したのかははっきりしない。おそらく 2019 年の前半頃には、利用する人がいなくなっていたように思う。

最後にはデポジットの返金騒ぎも起きた。経営悪化を知った利用者が一斉にデポジットの返金申請を行ったのだが、1,000 万人以上の返金待ちがあり、すべて返金するまでには数百年かかるという計算も出されていた。そんなうやむやな最期だったこともあり、ofo の黄色い自転車は大半が回収されずに放置されたようだ。あれから 2 年が過ぎ、最近は ofo の自転車を全く見かけなくなったが、つい先日、自前のカギが付けられ私物化されてなお愛用されている姿を見かけた。

ちなみに、中国在住の日本人で ofo を利用していた人は多いが、デポジットはいまだに返ってこないままだと聞いている。

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この記事を書いた人

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