中国版 YouTuber「網紅」が急増!専門の養成所も

目次

1. 中国で話題の「網紅」とは

今や中国での商品プロモーションには欠かせない存在となっている「網紅(ワンホン)」。 インターネット(=網)で人気のある(=紅)人物を指す言葉で、2015 年の流行語トップ 10 にも選ばれている。日本の YouTuber に近い“動画で有名になった一般人”だけでなく、 インターネット上でファンの多いモデルや俳優、作家なども含まれる。

網紅が活躍する舞台は主にネット動画やその生配信で、最も多いパターンは若い女性 の配信者が Web カメラの前で歌やダンスを披露したり、視聴者からの質問に答えたり、 あるいは自分の生活の一部を見せたりするものだ。中には広告料やファンからのプレゼ ント(サイトを通じて換金可能なバーチャルプレゼントを贈ることができる)で生計を立 てている網紅もいる。一方で軽妙なトークが人気となり、おしゃべりの動画配信だけで 一躍ネットアイドルと化した女性や、オンラインゲームの実況中継で有名になった男性 の網紅もおり、タレント化するケースも多くみられる。

しかし、人気を得ようとするあまり過度に性的なものや社会道徳に悪影響のある内容 を配信するケースが増加。2016 年 4 月には文化部が動画配信サイトを名指しで批判し、 女性がバナナを食べる様子の配信から、暴力的なゲームの実況まで事細かく禁止事項を 定めて不良網紅の取締りを強化している。

2. 網紅産業の成長

中国の IT 調査会社、Analysys易観の予測によると、2016 年の網紅産業(網紅および網紅が関わる宣伝広告、育成、プロダクション、配信収益、出演契約等を含む)の規模は 528 億元に達し、2018 年には 1,000 億元を超えると見込まれる。2018 年までの年平均成長率は 59.4%だ。

2016 年は EC と生配信による収益だけで全体の 86.4%を占めているが、この傾向は 2018 年になっても変わらないと予想される。なお EC の収益とは、網紅自身が開設し たネットショップなどにファンを誘導することで発生する各種売上、生配信の収益とはファンからのバーチャルプレゼントの現金化などを指す。

網紅が増えてきたため、最近では圧倒的な美貌を備えているとか、トーク力が抜群といった特徴に加えて、ファッションやコスメ、教育、旅行、アニメ、育児、ゲームとい った得意分野を持って差別化を進める動きがでている。こういった網紅は、ファンにとって身近なオピニオンリーダーとなってコミュニティを率いていることから、企業の宣伝広告やプロモーションには欠かせない存在となっており、今や「網紅が紹介した商品は必ず売れる」のだという。

しかも生配信やネット動画にとどまらず、微博(Weibo)や微信(WeChat)、ソーシャル型 EC、E スポーツ、知識共有サイト、各種エンターテイメント等でもその発信力と影響力を発揮しており、旧来のテレビ CM、雑誌広告、一般的な Web 広告よりも網紅による宣伝効果は高いとされる。

3. 自身をブランド化する網紅

有名になった網紅の多くが、自分のコンテンツを発表するための独自媒体を開設したり、会社を設立したりしている。

上記のランキングでも 1 位となっている「papi 醤(papi ちゃん)」は、週に 1 回のペースで動画を投稿する網紅で、今年 7 月に演劇の名門校、中央戯劇学院の修士課程を卒業したばかりのアラサ―女性だ。動画の投稿を初めて半年ほどで 1,000 万人を超えるファンを獲得し、2016 年 3 月にはベンチャーファンド 4 社から 1,200 万元の資金調達に成功、続けて動画の広告枠が 2,200 万元で落札され話題となった。自身が主催するショート動画プラットフォーム「Papitube」を開設している。

2 位の王尼瑪は、ギャグ漫画アプリの「暴走漫画」の創設者だ。他にも自身が得意とするテーマの動画プラットフォームや SNS を立ち上げる例が見られるが、独立したことで大衆化するケースとより個性化するケースに大別される。また網紅自身を IP ブランドとしてビジネス展開する例も見受けられる。以下に独自媒体や企業を開設した網紅の例を挙げてみよう。

4. 網紅養成所は 4 タイプ

自宅で動画配信をして大金を得る、そんな“チャイナドリーム”を目の当たりにした 若者が網紅の養成所に殺到しているようだ。養成所には専門学校や企業など様々あるが、 大きく以下の 4 つに分けられる。それぞれの主な例を挙げてみよう。

①タレント事務所型:トップ網紅やアイドル・タレントへの転身を目指して、養成所が網紅志望者と長期間の独占契約を結ぶタイプ。網紅志望者の募集から、養成、デビュ ー、収益化までを養成所が担う。

②EC ふ化型:網紅個人の EC ブランド樹立までを目的とするタイプ。網紅が商品の選択と宣伝を行い、養成所は宣伝方法の指導、サプライチェーンや店舗の運営を行う。

③コンテンツ MCN 型:網紅の高いコンテンツ(動画・文章等)作成能力を活かして、マルチチャンネルネットワーク(MCN)による収益獲得を目的とするタイプ。養成所はコンテンツに適した媒体を探してマッチングを行い、宣伝や収益化を担う。

④プラットフォーム型:網紅にコンテンツを発表するプラットフォームを提供するタイプ。プラットフォームを運営する養成所は網紅と契約を結ばないことが多く、より多くの網紅に自由にプラットフォームを利用してもらい、将来有名になってもらうことを目的とする。

● 中櫻桃(Z-CHERRY)・・・タレント事務所型

2009 年に「中櫻桃」ブランドを立ち上げ、2013 年に上海中櫻桃文化伝媒有限公司を設立。今や中国最大の女性芸能プロダクションとして、ドラマ、バラエティ、映画、ゲーム等様々な分野で活躍する女性タレントを数多く抱えている。

年に 2 回あるオーディションに合格した後、1 カ月間のレッスンを経て最終選考をパスするとタレントとして契約できる。最低報酬付きの専属契約は契約期間が 8 年で、動画 サイト「搞莱坞(http://www.gaolaiwu.com)」で配信されるドラマ作品や生配信への出演のほか、タレントやモデルとしてゲーム、EC、広告分野での活躍が保証される。

● 如涵電商(RUHNN)・・・EC ふ化型

元々は女性向けのアパレル EC サイトを運営。 人気タレントやモデルの発言内容が力を持つことに気づき、2014 年から契約する網紅に商品の選択と SNS 等での宣伝を任せ、自社ではEC サプライチェーンや販売システムの管理を行うという現在のビジネスモデルをスタートする。二度の大型資金調達に成功し、モデルの张大奕、大金、左娇娇など 50 人ほどの網紅と契約して出店している。アパレル製品の在庫率は一般的に15-18%だが、如涵電商は 2-3%に抑えることができており、2015 年の売上伸び率は 500%を超える。

● 新片場・・・コンテンツ MCN 型

ニューメディア向けコンテンツのプラットフォームとして 2013 年 8 月にスタート。2014 年 5 月には阿里巴巴(Alibaba)グループの出資を受 ける。監督、撮影、美術、特殊効果、ポストプ ロダクションなどの人材を抱えており、作品の制作からネット上での公開、プロモーション、収益化までを支援する。所属するクリエ イターの作品に挿入する動画広告や Web 広告、クリエイターへの広告用動画の制作依頼で利益を挙げている。

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この記事を書いた人

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