台湾進出スタートアップガイド

目次

外国人が投資可能な業種

台湾は経済・貿易の自由化を推進しており、外国人および華僑の資本導入に積極的な政策をとっている。個人消費者向けの飲食、小売、ITサービスといった一般的な業種についてはおおむね問題なく展開できると言ってよい。

外国人による投資を禁止または規制している業種は、経済部投資審議委員会がネガティブリストとして公表している。最新の2013年6月17日付のリストによると、禁止は化学薬品、軍事武器、公共交通、郵便、テレビ・ラジオ放送、金融など14業種、規制は農林水産業、電力、水道、航空、第一種通信事業など30業種となっているが、経済政策や産業の発展状況に合わせて随時見直しが行われている。

台湾への進出形態

台湾への進出形態は、営業活動が可能な「現地法人」および「支店」と海外本社の補助的業務のみを行う「駐在員事務所」、「連絡事務所」に大別される。また台湾領内での工事請負時に税金申告のため便宜的に用いられる「工事事務所」や特定の契約遂行のみを行う「営業代理人」という形態もあるがここでは触れない。

「FIA法人」とは、台湾において外国法人および個人の身分で投資設立された現地法人を指す(FAI : Foreign Investment Approval)。設立にあたっては外国人投資条例に基づいた審査があるものの、ネガティブリストにかからない業種であれば原則全て認可される。外資の出資比率は問わないが、運送業、土木建築業、旅行業、通関業など一部の業種ではそれぞれの管理弁法で最低資本金額が定められているため確認が必要だ。

実際の進出にあたってどのような企業形態をとるかは、その目的によって決まることが多い。輸出入を伴う事業やサービス業を展開する場合、台湾で生産・製造・販売を行う場合、特に製造業で現地企業に出資をしたり逆に出資を受ける可能性がある場合には現地法人の形をとることが多い。現地法人は直接その下に支社や駐在員事務所を設置できるため、台湾領内で多拠点展開がしやすいという利点もある。一方で台湾に製造拠点を設けず、主に輸出入拠点としたり、商品の販売・保管、アフターサービスなどを行う場合には支店という選択肢が考えられる。いずれにしても、全ての設立手続きが完了するまでに2-3カ月の時間がかかり、日本側で用意する書類の多くには、公証役場や台北
駐日経済文化所での認証が必要となる。また製造業の場合、入居する工業団地によって別途申請やライセンスの取得が必要となることがある。

台湾の税制

台湾には現在17の課税項目があり、国税と地方税に分かれている。外国人を含む個人で台湾源泉の所得がある場合は、法律に基づいて所得税を納める必要がある。

●法人税 (営利事業所得税)

台湾領内で経営される営利事業を対象に、当該年度の総収入から各種費用や損失、税金を控除した純利益額を課税所得額として課税する。申告は事業年度終了後3カ月以内(会計士の税務監査を受けた場合には5カ月以内)に行う必要がある。税率は、課税所得120,000元以下は免税、120,001元以上は17%となっている。

なお台湾の法人税は属地主義を採用しているため、営利事業の主たる事務所が台湾領内にある場合、全世界の所得に対して課税するが、所得源泉地で当該国の税法に基づき納税している場合、外国利税控除方式によって二重課税を調整することになる。

●営業税

台湾では「統一発票」と呼ばれる公式のインボイスを用いており、台湾領内での物品の販売、サービスの提供、物品の輸入を課税対象としている。納税義務者は物品の販売およびサービスの提供側(販売店側)や輸入物品の受取り側で、2カ月分を一括して奇数月の15日までに申告する。税率は5%。統一発票には会社設立時に与えられる8桁の事業者番号「統一番号」を記入または印字する必要がある。

台湾政府は、販売業者の脱税防止を目的として統一発票の番号を使った宝くじの抽選を隔月で行っており、消費者に対し買い物をしたら必ず統一発票を受取るよう呼びかけている。

●所得税

所得の源泉が台湾領内にあるものを対象に、外国人かどうか、台湾に居住しているかどうかを問わず、総合所得に対し5%から最高40%の累進税率によって課税される。

台湾では1月1日から12月31日までの1課税年度内に台湾領内に183日以上居住した場合は居住者として扱われる。在留期間が182日以下でも90日を超えて居住した場合は、日本から支払われた所得についても課税対象となる。

なお台湾では日本の年末調整に該当する制度がないため、居住者は翌年の5月中に確定申告を行う必要がある。

台湾の労務事情

台湾では基本法規として労働基準法、労働者休暇規則、従業員福利金条例、労働保険条例、労働者退休金条例などが定められている。2013年時点の主な内容は以下の通り。

また日本と同様に「労工保険」と呼ばれる労働保険(労災保険および雇用保険)、強制加入の国民健康保険「全民健康保険」がある。いずれも台湾領内に勤務し、居留証を持つ外国人ならば強制加入となり、保険料は給料から天引きされる仕組みになっている。

なお、2012年の主な産業の1カ月の平均賃金収は以下の通りで、全体的に女性の給与は男性に比べ8割程度の水準にとどまっている。製造業や娯楽・レジャー産業で給与が上昇する傾向にあり、特に娯楽・レジャー産業では男性が前年比6.34%、女性が同5.17%それぞれ増加している。また産業別の就業人数をみると、いずれの産業においてもおおむね増加傾向が続いており、特に卸売・小売で男性が同1.84%、女性が同2.86%増加している。

台湾に進出した外国企業について法律上、現地人の雇用義務はないが、外国人の雇用にあたっては行政院労工委員会に許可申請が必要で、就業できる業種にも制限がある。日系企業の進出にあたっては、日本から役員や駐在員を派遣したり、日本人を現地採用する場合が考えられるが、これまでのところ現地法人の役員となる者や専門性や技術性を有する職業に就く者であればほぼ問題なく許可されているようである。

また現地の従業員を採用する際の募集手段は日本と同様で、求人サイト・新聞に広告を掲載する、人材紹介会社から紹介を受ける、知人などからの紹介といった方法がある。

台湾の賃貸物件事情

ビジネスの中心地である台北にあるオフィスの賃貸料金は、駅に近い場所で坪あたり2,000元前後が相場と言われる。近年新しくビジネスエリアとして開発された信義区を除き、オフィスビルは築年数が古い場合が多い。また日本と同様にレンタルオフィスやバーチャルオフィスもあり、バーチャルオフィスの場合、法人登記可能な住所を月額5,000元程度で借りることができる。一方、店舗や飲食店などのテナント物件の場合、月額のテナント料に加え売上額に応じた歩合(デパートなど集客力のあるフードコートでは25%以上に設定しているところもある)を払う場合もある。

台北の不動産仲介会社の中には、日本人スタッフが常駐していたり、日本語が通じるところも多いので、駐在員用の住居探しも比較的スムーズだ。商業エリアに近く飲食店の多い中山区では、広さによって月額15,000-65,000元程度が目安となる。外国人が多く居住し、日本人学校やアメリカンスクールがある天母地区にはファミリー向けの物件が多く揃っており、セキュリティや設備の良い物件ならば月額50,000元を超える。

台湾では一般的に保証金として家賃の3カ月分を支払い、敷金や礼金はない。仲介手数料は家賃の1か月分が相場だ。契約期間は1年または2年の場合が多く、中途解約には違約金を払う習慣があるため注意が必要となる。なお外国人向けの物件には家具や家電が備え付けられていることが多い。

台湾での商標登録

台湾進出を決意したら、何よりも先に商標登録を行ってほしい。台湾では海外の商標が第三者によって勝手に出願される冒認出願が増えており、多くの場合において当該商標は中国本土や香港、マカオでも押さえられている。台湾は先願主義のため、後から商標を取り返すことは難しく、多くの日本企業や地方自治体が頭を悩ませているのが実情だ。台湾では日本ブランドであること自体に価値があるため、漢字の表記と併せてひらがなやカタカナでの登録も必ず行いたい。

①出願…願書、商標見本、委任状、優先権証明書などの必要書類を提出する。文字、図形、記号、立体形状のほか、色、動き、ホログラム、音による商標も出願できる。

②方式審査…書類の様式や申請手数料の確認が行われる。不備がなければ出願が受理され、受理通知書が発行される。

③実体審査…すでに登録されている商標との類似性や誤認性、不正の有無などが調査される。審査には一般的に8カ月から1年ほどの時間がかかる。

④公告…登録査定書送付の翌日から2カ月以内に登録料を納付すれば、商標の登録および公告が行われる。商標権は公告日より10年間存続し、更新回数に制限はない。 商標登録にかかる1区分あたりの費用は、出願料が3,000元、登録料が初回2,500元、2回目以降4,000元となっている。

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この記事を書いた人

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