中国の共同購入型クーポン市場

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共同購入型クーポンサイト(団購)市場の概況

中国では2010年頃から「団購」と呼ばれる共同購入型クーポンサイトが登場し、ピーク時には全国に6000以上のサイトがあった。団購の情報が集まるポータルサイト「領団網」のまとめによると、2012年末時点で運営中のサイトは2695あるが、長期間更新されずに放置されているものも多く、実際に利用できるサイトはさらに少ないと見られる。

また中国互聯網絡信息中心(CNNIC)の発表によれば、2013年6月末時点の団購の利用者数は前年比21.29%増の1億91万人で、これはインターネットユーザー総数の17.1%にあたる。モバイル端末から団購を利用する人は7636万人に達しており、日替わりで登場するクーポンを出勤時にチェックしたり、出掛けた先で携帯電話からクーポンのあるレストランを探して食事をするといった使い方をしているようだ。

団購市場の売上は2010年にわずか25億元だったが、2011年には216.33億元、2012年には348.85億円と増加を続け、2013年は9月末の時点で前年実績を上回る378.55億元(約6000億円)に達している。なお2011年の米国の同市場規模は約2000億円、日本は約350億円と言われている。

現在はレストランやレジャー施設のようなサービス分野のクーポンだけでなく、食品、家電、生活雑貨、アパレル、美容・化粧品といった実物商品の取扱いが増えており、なかにはマンションや新車といったものまで共同購入の対象となっている。2013年9月単月の品目別売上第1位は化粧品で5億3442万元(約85億円)、2位はホテル予約で4億4144万元(約70億円)だった。また地域別では北京市が2億7172万元(約43億円)、上海市が2億1038万元(約33億円)で、大都市の若者を中心に利用が広がっている。

主要な団購サイト

中国の団購サイトは運営元の業態から大きく6つに分けることができる。

●拉手網

北京拉手網絡技術有限公司 が2010年3月に開設した。2012年の売上は20.23億元で、会員数は2000万人以上。レストランのクーポンの取扱いが豊富で、現在は全国500都市以上でサービスを展開している。2011年にはナスダックにIPOを申請していたが、直面する課題が多すぎるとして後にIPOの無期限延期を発表している。

●淘宝聚划算

2010年3月にECサイトの淘宝網などを運営する阿里巴巴集団が開設した。2012年の売上は前年同期比で200%を超える207.5億元で、都市別の売上トップ3は、上海の6.9億元、北京の6.2億元、杭州の5.7億元。1日平均800万人がサイトを訪問しており、年間で延べ2000万人以上がクーポンを購入している。

●QQ団購

インスタントメッセンジャー(IM)の「QQ」を運営する騰訊(Tencent)が2010年7月に開設した。QQ団購自身は販売を行っておらず、提携する他の団購サイトの情報を掲載するプラットフォームとして成長している。「QQ」のアクティブユーザー6.4億人が主要ターゲットで、QQのチャット画面からワンクリックでアクセスできる。

●糯米網

2010年6月に中国最大のSNS、「人人網」グループの団購サイトとしてオープンした。人人網のユーザー約3億人が主要ターゲットで、2012年の売上は前年同期比149.6%増の1610万ドル。2013年8月に百度が1.6億ドルで糯米網59%の株式を取得すると発表しており、買収は年内にも完了する見通し。

クーポンを購入する

日本の共同購入型クーポンサイトと同様で、各団購サイトに掲載されている商品はほとんどの場合1-3日程度の販売期間が設定されており、クーポンが成立する最低購入人数が決まっている。

購入の手順は各サイトともほぼ同じで、まずは会員登録(SNSのアカウントを使ってログインできるサイトもある)をして、居住する都市を選択する。

拉手網はトップページに当日の目玉商品が並んでおり、クリックするとクーポンの詳細を見ることができる。左例は北京市内にある外資系ホテルのアフターヌーンティーのクーポンで、定価88元が6.6掛け(34%OFF)の58元で販売されている。下には「すぐに購入(抢购)」と「カートに入れる」のボタンがあり、現時点の購入人数は6人、販売終了まで3日以上あることがわかる。

その下には、この店が用意する他のクーポンの情報、店の地図、利用時間などの細かい説明が書かれており、さらに下には料理の写真が掲載されている。

クーポンを購入するには、「すぐに購入」ボタンをクリックして、次に表示される注文画面で購入する枚数を入力する。その後、「注文(提交订单)」をクリックすれば、すぐに決済手続きの画面に移動する。 

拉手網が対応する決済方法は、快銭、財付通、支付宝、銀聯の4種類となっており、いずれかの第三者決済サービスを通じて銀行振込みやクレジットカード、デビットカードで支払いを行う。モバイル端末から利用する場合は、事前にモバイル決済の機能が使えるように設定が必要だ(拉手網はiPhone、iPad、Androidに対応)。

購入が成立すると携帯電話やPCメール宛てにクーポン券や二次元バーコードが送られてくるので、店頭でクーポンを見せたり、バーコードを読み取り機にかざして利用すればよい。

なお、多くの団購サイトでは決済完了後の購入者側の理由による返金は受け付けていないため注意が必要だ。返金されるのは、クーポンが最低購入人数に満たず成立しなかった場合のほか、店側の理由によりクーポンが取り消された場合、店が営業停止になったり転居した場合、決済期限(購入から30分以内)を過ぎてから決済手続きをした場合、実物商品のクーポンで商品に不具合があった場合に限ると規定されていることが多い。

また、ほとんどの団購サイトには微博や微信、QQなどにワンクリックで投稿する機能がついている。紹介した商品を友人が購入すれば、サイトから10元程度の謝礼が支払われるため、どうしても欲しい商品の最低購入人数を満たそうとSNSを通じて友人に購入を勧める人はかなり多いようだ。

団購をビジネスで利用するには

出品側として団購を利用する場合、基本的にはECモールへの出店と同じように、まずは営業許可証や商品の販売許可証などを提出した上で信用調査を受ける必要がある。クーポンの掲載に際しては、保証金のほか売上額に応じた手数料を支払うのが一般的だ。

淘宝聚划算の保証金規定によると、送料込の商品の場合は「商品単価×数量」、送料別・送料なしの商品の場合は「(商品単価+10)×数量」を事前に保証金として預ける必要がある。保証金は販売終了から15-30日後に返金されるが、商品の品質に問題があったり掲載内容に虚偽があった場合、コピー商品や海賊版を販売した場合などには購入者への返金等に充てられる。販売手数料の利率は品目を問わず3%で、このほか技術サービス料として品目により売上額の1-7%を納める必要がある。

団購サイトに掲載すると、地元地域の消費者を中心に一度に何万人もの目に触れることになり、店舗やブランドの認知度を飛躍的に高めることができる。新規顧客の獲得を望む飲食店やネットショップにとっては、成功報酬型で費用対効果の高い広告手段としてすでに欠かせなくなっているが、次の項で挙げるようなトラブルも発生している。

団購サイトにまるわるトラブル事例

日本でも数年前に「グル―ポン」で販売したおせち料理が見本と違いすぎるとして話題になったが、中国でも団購にまつわるトラブルは多い。中国消費者協会に寄せられた苦情を分析すると、元の値段を吊り上げて不当に安く見せている、サイト上の写真と全く違う物が届いた、商品が壊れている、いつまでも商品が送られてこない、販売数があまりにも多く店側が対応できていない、クーポンが成立しなかったが返金されない、セキュリティがしっかりしておらずアカウントが盗用されたといった苦情が多い。また中小の団購サイトが乱立する中国ならではとも言えるのは、有名団購サイトにそっくりな別のサイトだった、偽造クーポンを受け取った、店が突然閉店し連絡がとれない、領収書や保証書の発行を拒否されたといった苦情だ。

大手サイトは出店者の審査を厳しくしたりセキュリティの強化を進めているが、クーポンの取扱い数が多すぎて確認が追い付いていない状況だ。悪質な中小サイトは淘汰が進んでいるが、消費者協会は運営元がはっきりしないサイトや安すぎる商品には手を出さないよう注意を呼び掛けている。

逆に団購を自店の宣伝手段として利用する際には、当該分野が得意で集客力のある大手サイトを選び、無理のない数量を適正な範囲の値引きで販売して高評価のクチコミやリピーターの獲得につなげていくことが成功の近道になる。スマートフォンの普及に伴い若者を中心にモバイル版サイトを利用する動きも広まっており、団購を利用したビジネスチャンスはさらに拡大しそうだ。

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この記事を書いた人

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