AppStore の中国向けゲーム配信ポリシー変更か

1. 中国向け配信のポリシー変更

Apple が運営する iOS 向けアプリストア「AppStore」が、中国における配信ポリシーを変更した模様だ。

今月に入って iTunes Connect のページ上に、「中国におけるゲームの使用許諾」との タイトルで、「中国の法律により、オンラインゲームには国家新聞出版広電総局の承認番号を取得することが義務付けられています。ゲームの承認番号および日付は、 AppReview に関する情報セクションのメモ欄に入力できます」との文言が表示されて いることが分かった。

該当する規定として 2016 年 7 月 1 日に施行された「モバイルゲーム出版サービス管理に関する通知(关于移动游戏出版服务管理的通知)」が併せて案内されている。

2. 当局の意向を強く反映か

中国国内でのモバイルゲーム配信事業(アプリストアなどのプラットフォーム事業)には、増値電信業務経営許可証のほか、ネットワーク文化経営許可証やネットワーク出版 サービス許可証などの取得が必要となる。しかしこれらの許可証は原則として内資企業にのみ発行されるもので、Apple は現在も必要な許可証を有していない。過去には政府系メディアが「AppStore は中国において違法状態である」と指摘する記事を掲載したこともあるように、中国側から見れば実質的に中国で配信事業を行っていると捉えられ、 限りなく黒に近いグレーの状況となっている。

一方で Apple は、AppStore が中国の法令の及ばない海外からの配信であることを盾にしながら、しかしながら中国当局の意向を汲みながら、これまで配信を続けてきた。 日本を含む海外のゲーム会社が中国でゲームをリリースするには、前述の許可証を有する現地のパブリッシャーなどと提携し、国家新聞出版広電総局の内容審査を受け承認番号(版号)を取得しなければならないが、今まで AppStore は承認番号を求めてこなかった。

中国には一定規模の iPhone/iPad ユーザーが存在する。現地パブリッシャーを通さな くても中国向けに配信できる AppStore は重宝されていたわけだが、今回の Apple の対応によってその“抜け道”は封鎖される可能性がある。

3. 回答は要領を得ず

Apple は 2016 年の段階で、中国国内にあるパブリッシャー向けに承認番号を要求する旨を通知しているが、海外向けのポリシー変更は突として行われた感がある。

今回の件について、弊社より中国の Apple デベロッパーサポートへ問い合わせたとこ ろ、「中国当局の通知を全てのデベロッパーに伝えるだけだ」との回答にとどまった。また「承認番号等の記入がない場合は状況によって判断することになる。最終的には Apple の審査部門が個々に確認するため、一律強制的にストアから削除されることはない」との回答を得た。

また管轄する国家新聞出版広電総局への問い合わせには、上海の担当部門からのみ 「中国で配信するものならば承認番号を取るべき」との回答が得られた。しかし該当規定で求められているネットワーク出版サービス許可証は外国企業が取得できないことから、外国企業も対象となるのか確認したところ、担当者に詳細についての理解はなく、 中央総局に確認するようにとの返事であった。

4. どう対応すべきか

現時点では実務上、外国企業が直接ゲームの承認番号を取る手段はない。Apple も強制的に削除はしないとしているが、審査の基準やタイミングは明らかにされておらず、 いわば八方ふさがりの状態だ。

弊社では引き続き情報収集を行っているが、AppStore の中国版では承認番号のない 中国製ゲームアプリが継続して多数配信され続けていること、外国企業が承認番号を取 る手段が用意されていないこと等を考えると、極めて短時間のうちに Apple が承認番号の無い全てのゲームアプリを削除するという対応は考えにくいとみている。

また Apple 側が行うというアプリごとの確認は、おおむね政府の意向に沿った基準になる可能性が高い。「インターネット情報サービス管理弁法(互联网信息服务管理办法)」 をはじめとするインターネットコンテンツ関連の法令では、禁止されるコンテンツの例として、国家の安全に危害を与えるもの、わいせつ、暴力などの内容が示されている。これらは当局がしばしば行う違法・低俗コンテンツの取り 締まりで対象となるもので、国家新聞出版広電 総局が行う承認番号の審査でも確認される。

  1. 憲法に定める基本原則を否定するもの
  2. 国家の安全を脅かしたり、国家機密を漏えいしたり、国家政権を転覆したり、国家統一を破壊したりするもの
  3. 国の名誉および利益を損なうもの
  4. 民族間の怨恨や民族差別を扇動し、民族の団結を破壊するもの
  5. 国の宗教政策に違反し、 邪教および封建的迷信を鼓吹するもの
  6. 根拠のないうわさを広め、社会秩序を乱し、社会の安定を破壊するもの
  7. 卑猥な内容、 色情的な内容、 賭博、暴力、殺人、テロまたは犯罪教唆を広めるもの
  8. 他人を侮辱または誹謗したり、他人の合法的な権益を 侵害したりするもの
  9. 法律行政法規が禁止するその他の内容を含むもの

互联网信息服务管理办法  第15条より

コンソールゲームの例ではあるが、Microsoft が 2014 年の ChinaJoy(上海ゲームショウ)に出品 した Xbox One の「Watch Dogs 中国語版」は、 パトカーを破壊したり警察を襲撃したりする反権力的な内容が当局の怒りにふれたのか、結局実際に販売されることはなかった。AppStore が 行う通常のアプリ審査をクリアしていても、当局の意向に沿わない内容が含まれるゲームアプリについては、削除される可能性があることを念頭においた上で、しばらくは Apple の対応を見守るしかなさそうだ。

クララオンラインコンサルティング事業部

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