中国 5G 最新動向 2019

目次

1. 商用サービス開始に向けた動き

工業情報化部は 2018 年 12 月に、中国移動(チャイナモバイル)、中国聯通(チャイナユニコム)、中国電信(チャイナテレコム)の通信大手 3 社に 5G ネットワークの運用試験の許可を下した。

それから半年後の 2019 年 6 月 6 日、工業情報化部は 5G の商用化サービスの運営を許可する、いわゆる 5G ライセンスを発行した。ライセンスを取得したのは、中国移動、中国聯通、中国電信、そしてテレビ・ラジオ網等の運営を行う中国広電の 4 社である。事前の計画より半年ほど前倒しでの発行となった。

現在までに具体的な日程は明らかにされていないものの、遅くとも 9 月末までに全国の主要な十数都市で 5G サービスが始まるという。

5G 対応端末は、2019 年 6 月 27 日までに 31 社が合計 42 機種を発表している。このうちスマートフォンは 13 機種にとどまる。

5G サービスの経済効果は、2020~2025 年だけで 10.6 兆元に上り、300 万人の新規雇用を創出するとの試算がでている。(中国情報通信研究院「5G 産業経済貢献」)

2. 各社の動き

● 中国移動

2019 年だけで 5G サービスに 190 億元を投入する計画がある。現在は上海や杭州など 5 都市で商用ネットワークの建設と試験が完了している。2019 年中に全国 50 都市に 5 万カ所の基地局を設置し、2020 年までにすべての地級都市で 5G サービス開始を計画している。

5G 対応端末は、2019 年中に高価格帯の基幹モデル、2020 年初頭に中間価格帯のミドルエンドモデル、2020 年末に普及モデルとなる「1000 元スマホ」を発売する計画で、2019 年中に 30 機種の発売を予定している。

5G と 4G の周波数帯は一部同じであり、中国移動は全国の 4G 通信基地局のおよそ半数を所有していることから、5G と 4G を組み合わせたサービス展開を計画している。

● 中国聯通

2019 年だけで 5G サービスに 60~80 億元を投入する計画だが、資金難で投資が増やせない状態と伝えられる。

全国 40 都市で試験用ネットワークを構築済みで、すでに北京や上海など 7 都市では商用ネットワークの建設と試験が完了している。残り 33 都市の商用ネットワークは2021 年末までに完成予定。

● 中国電信

2019 年だけで 5G サービスに 90 億元を投入する計画。現在は北京や上海など 17 都市で商用化試験を実施しており、2021 年までに 40 都市で試験を完了予定。

● 中国広電

2014 年 5 月に設立された国有企業で、全国の有線テレビ網の建設、運営を行っている。2016 年に基礎電信業務経営許可証を取得し、第 4 の通信事業者となった。

2019 年 7 月に山東省で商用化試験をスタートしたばかりで、具体的なサービス開始予定は明らかでない。テレビ網事業者であることから、5G サービスでは 4K8K 放送とIoT を組み合わせたサービスで、他の 3 社との差別化を図る考え。

3. 5G を用いたサービス展開

5G の携帯電話契約はまだ始まっていないが、2019 年に入ってから各地で続々と 5Gを利用したサービスが始まっている。一部の店舗などでは、一般の消費者も 5G の通信スピードを体験することができる。

● 1 月には成都で地下鉄駅としては全国で初めて 5G の利用が可能に。5 月には北京の地下鉄 16 号線の全線で 5G の利用が可能になった。

● 3 月、広東省人民医院と広東移動が全国初の 5G モデル医院を創設。オンライン診察などで 5G の利用を計画中と発表。

● 5 月、甘粛省中医院で 5G を使って手術の様子を生中継するリモート研修を実施。今後は病院間で電子カルテ、X 線画像、病理検査結果等のデータを送信し、リモート診断にも 5G 回線を利用する計画。

● 中国銀行深セン支店が 6 月より 5G を導入する中小企業を対象に、「5G ローン」の提供を開始。1 社あたり最高 1000 万元、融資期間は最長 2 年間。

● 6 月、雄安新区に全国初の 5G 新華書店がオープン。24 時間営業の無人店舗で、5Gを使って本の貸し出し、返却、購入、インターネット上での閲覧などが可能。

● 北京の志強北園小区で、7 月から全国初の「5G+IoT」コミュニティ実験がスタート。マンション入り口ドアに顔認証システムを導入したほか、高齢者の 24 時間見守り、自転車置き場の火災報知器、ごみ箱の回収アラーム等で 5G を利用している。

● 北京市の朝外 SOHO で、中国移動の 5G ネットワークが開通。1 棟まるごと 5G でカバーされた大型オフィスビルは世界初。

● 現在建設中の大興国際空港には 5G ネットワークでカバーされており、設計時の想定では 10 万人が同時に利用可能。

● 人民日報と中国聯通が 5G を使ったメディア開発で提携。ニュースの 4K 配信、VR配信などを計画。

● ゲームの領域では、5G がクラウドゲームや AR/VR ゲームの技術的なボトルネックを解消すると期待。2018 年の VR/AR のヘッドマウントディスプレイの出荷数は590 万台だったが、2023 年には 6800 万台をこえる予想。

4. ファーウェイの 5G 展開

米国による禁輸措置の影響で数年間の売上減少を覚悟しているとされるが、任 CEOによると 5G 通信システムの生産に影響は一切ないという。1 年後には世界 140 の国と地域のうち、135~136 カ国がファーウェイの 5G 設備を利用する予定があると発言している。米国、オーストラリアはファーウェイ製設備を利用しないことが明らかになっているが、すでに欧州の 28 件を含め世界で 50 件もの商用契約を結び、15 万台以上の設備を出荷済みだと明かしている。

6 月には中国移動の大型受注を獲得。調達数全体のおよそ半分のシェアを獲得しており、国内事業は順調に推移している。

7 月には、同社初の 5G 対応スマートフォン「Mate20Z」を発表した。発売は 8 月になる見通しである。

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