動き出した中国の4G市場

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間もなくライセンス発給か

中国ではまだ正式に4Gの商用サービスが始まっていない。現在は各地で商用化に向けた実証実験が進められている段階で、ごくわずかのテストユーザーがいるだけだ。

中国が採用を検討する4G規格は2種類で、中国移動(チャイナモバイル)は「TD-LTE」(3Gでは「TD-SCDMA」を採用)、中国電信(チャイナテレコム)と中国聯通(チャイナユニコム)は「FDD- LTE」(3Gではそれぞれ「CDMA2000」、「WCDMA」を採用)を採用する意向が伝えられている。「TD-LTE」は中国政府が推進する4G規格で、中国移動、華為(HUAWEI)、中興通訊(ZTE)、大唐電信といった国内の通信事業者を中心に開発が進められている。技術的には「Softbank4G」が採用するAXGPとほぼ同様だ。一方の「FDD-LTE」はアメリカの通信会社をはじめ、日本ではNTTドコモとauが採用している。

中国政府は4G通信ライセンスの発給について明言していないが、キャリア各社は端末や通信設備のサプライヤー選定を進めており、業界では早ければ5月中にも発給されるとの見方がある。なお中国電信は、「FDD-LTE」のライセンス取得が難しい場合は、中国移動と共同で「TD-LTE」の普及に注力するとの考えを発表している。

中国移動が4G端末の調達に着手

中国移動は2013年5月3日までに、他社に先駆けて4G端末の入札を実施している。伝えられたところによれば、今回選定されたのは華為、中興通訊、サムスンから各2機種と、無線科技のスマートフォン「酷派(クールパッド)」1機種で、正式な受注価格と台数は6月にも発表される。同社の計画では、2013年だけでスマートフォンやモバイルデータ通信端末など100万台以上を調達するという。

またキャリア3社は、4Gを含むネットワークのアップグレードに2013年だけで合計3450億元(約5兆7000億円)を支出する計画で、中国移動は4G基地局20万カ所の整備に417億元(約6800億円)を投じると発表している。すでに4G基地局などの通信インフラ設備についてもサプライヤーの選定が進められており、国内メーカーで欧州でも多くの契約を獲得した実績を持つ華為や中興通訊が有利とされる。世界の通信設備市場では、スウェーデンのエリクソンが約35%のシェアを握るほか、華為が約17%、NSN(ノキアシーメンスネットワークス)が約15%、アルカテル・ルーセントが約12%のシェアを持つが、中国市場においては華為と中興通訊が牛耳る形で、残りのわずかなパイを海外メーカーが奪い合う構図になることが予想される。中国光大銀行を傘下に抱える光大集団のシンクタンク、光台資料研究有限公司のアナリストは、中国移動の4G機器調達計画のうち70%ほどを中国メーカーが獲得すると見込む。

進む4G実証実験

率先して4Gの取り組みを進める中国移動は、現在までに上海、杭州、南京、広州、深セン、アモイの6都市で試験用ネットワークを構築しており、続いて北京、天津、青島、寧波、成都、福州、瀋陽、無錫など10都市についても市内の30~50%程度をカバーするネットワークを構築する計画を進めている。深センと香港の間では4Gのローミングテストが完了したほか、杭州、温州、寧波の3都市間でも4Gのローミングができるようになっている。特に杭州では、地下鉄1号線の全線で4Gが利用できるほか、市内にある2400カ所余りの基地局が人口にして500万人以上、面積では500平方キロメートル以上の範囲をカバーしている。現在までに各都市で行われた試験結果はまずまず良好で、テストユーザーからは動画のダウンロードの速さに驚きの声が上がっている。

普及に期待高まる

中国電信や中国聯通は比較的ゆっくりと4Gの導入準備を進めているが、ライセンスは3社同時に発行される見通しだ。現在のところ、どのキャリアがどのようなライセンスを取得するかは伝えられていないが、4GがスタートすればiPhoneを扱う中国電信と中国聯通が有利になるため、中国移動が焦りから4Gエリアをいち早く拡大しているとの見方も出ている。

しかし中国のスマートフォンの約8割はAndroidで、1000元以下の機種も豊富に出回っているのが実情だ。さらにスマートフォンユーザーがよく利用する機能はインスタントメッセンジャー、音楽、カメラ、ゲームが中心で、動画や映画といった通信量の多いコンテンツの利用は少ない上、定額料金プランがないため音楽やゲームは自宅などでWiFiを使ってダウンロードすることが定着している。4Gの通信料金設定によっては、短期間で爆発的に4G利用者が増えることはないとの見方が強い。

他方、4Gの普及を心待ちにしている業界もある。コンテンツの分野では、動画サイトの土豆網などが視聴回数の増加を見込んでいるほか、地図やナビゲーションなどのサービスもユーザーの拡大を狙う。スマートフォン向けゲームは3G の通信事情を考慮して最低限の通信で済むよう工夫されているが、4Gになれば通信の多い海外製ゲームの中国展開が今よりも容易になる可能性が指摘されるが、いずれにせよ4Gの普及には料金設定が大きなキーポイントとなりそうだ。

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