韓国モバイルゲーム市場のトレンドを追う

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韓国ゲーム市場の概要

韓国はオンラインゲームの先進国として知られているが、スマートフォンの登場により、その主流はデスクトップPCでプレイするMMORPGから携帯端末でプレイするソーシャルゲームへとシフトしつつある。

2012年末の韓国の4G契約数は1600万件で、携帯端末の加入数全体に占める割合は30%以上。2013年末までに4G契約が全体の60%を超えるとの予測もあり、モバイルゲーム市場も年々規模を拡大している。2011年の韓国のゲーム市場全体の規模は、前年同期比18.5%増の8兆8047億ウォン(約8000億円)で、このうちモバイルゲームの売上は同33.8%増の4236億ウォン(約380億円)だった。2014年にはゲーム市場全体が15兆ウォンにまで成長し、モバイルゲームも1兆ウォンを超えると見込まれている。

一方で、売上から見たゲーム市場の市場シェアは、圧倒的にオンラインPCゲームが強く、モバイルゲームは4.8%、コンソールゲームが3.0%、アーケードゲームが0.8%と続く(2011年末時点)。

またゲーム産業全体の動向をみると、企業数が減少しているにもかかわらず従業員数は微増していることから、1社当たりの社員数が増加していることが考えられる。売上と輸出額は増加の一途をたどっており、国産ゲームが力をつけたことで海外からの輸入ゲームが減少していることも見てとれる。なお2006年に売上が一旦大きく減少した背景には、スロットマシンに似たアーケードゲーム「バタイヤギ(海物語)」がそのギャンブル性の高さから深刻な社会問題を引き起こしたためである。

ユーザー動向

2012年に韓国コンテンツ振興院が1700人を対象に行った調査によると、9~14歳でオンラインPCゲームの利用が突出して多くなっているものの、15歳以上になると利用者は徐々に減る傾向にある。逆にモバイルゲームは、携帯電話を持たないと思われる14歳以下ではわずか7.5%だが、15歳以上では利用者が急増し概ね3割前後の人が利用している。

また男女別にみると、PCを使うオンラインPCゲーム及びPCパッケージゲームは男性の利用が多かった。モバイルゲームは女性をターゲットにしたタイトルが数多く出ているためか、女性の利用が男性の2倍超となっている。

ゲームを選ぶ際に重視するポイントでは、男女とも「ジャンル」と「内容・ストーリー」がおよそ3割ずつを占めた。また男性ではゲームの開発会社に対する関心が高く、女性はキャラクターに注目していることがわかる。また開発会社などがゲームに関するイベントを行うことが、そのタイトルを遊ぶきっかけにもなっている。

1日のうちで最もよくゲームをする時間帯では、PCとモバイルのいずれも午後から夜にかけて利用する人が増える傾向にある。しかしスマートフォンを中心とするモバイル端末は7時から8時台の出勤時間、12時前後の昼休憩時間、18時台の帰宅時間、22時から23時台の就寝前の時間帯に利用が集中していることがわかる。

1週間のゲーム利用回数では、モバイルゲームの方が圧倒的に多くなっている。スマートフォンを所有していない可能性が高い9歳~14歳ではわずかにオンラインPCゲームの利用が多いものの、通勤通学のある15歳~39歳は週5回以上モバイルゲームを利用している。平日は通勤通学時間を使ってモバイルゲームで手軽に、週末にはオンラインPCゲームでじっくりと遊ぶ“典型的な若者”の姿が浮かび上がる。

また1カ月の平均課金額は、オンラインPCゲームとモバイルゲーム共に5000ウォン(約450円)以下が最も多く、オンラインPCゲームでは全体の84.9%、モバイルゲームでは97.1%が3万ウォン(約2700円)以下だった。オンラインPCゲームの場合、本人のクレジットカードによる決済が全体の30%ほどを占めており、さらにアイテムの現金取引が盛んであることも高額な課金につながっているものと思われる。

広がるソーシャルゲームプラットフォーム

モバイルゲームやソーシャルゲームのプラットフォームは、日本と同様にFacebook、AppleのAppStore、Google Playがよく利用されるほか、ポータルシェアNo.1でSNS「me2day」を運営するNaver、2012年2月にDeNAが提携を発表したDaum、韓国最大のモバイルキャリアSKテレコムグループが運営するNateのCyworldアプリなどが人気だ。

このほか通信キャリアの公式アプリストアとして、グリーがアプリ提供などで提携するSKテレコムのT store、NTTドコモが提携するKTのolleh Market、LG UplusのOZ Storeがある。なかでもT storeは、韓国人に合ったアプリを意識して揃え、様々な決済手段を用意したことで、韓国ではGoogle Playを圧倒する人気と売上を誇る。SKテレコム以外のキャリアからも利用できることから2012年6月時点のSKテレコムの加入者約1300万人に対し、T storeのアカウント数は1500万人以上で、1日の平均ダウンロード回数は100万回を超える。また開発側にとってもT storeは登録費用がかからず審査も速い上、最初にT storeにリリースすればプロモーションなどで優遇もあると好評だ。

また最近ではスマートフォン向けのメッセンジャーアプリがソーシャルゲーム分野に参入する動きが活発になっている。特に韓国で圧倒的シェアを持つ「カカオトーク」(韓国Kakao Corporation)は、2012年7月にゲームプラットフォーム「カカオゲーム」を開設し、ゲームアプリの提供を開始した。カカオゲームは、オープンから3カ月で会員数が2300万人、ゲームのダウンロード数が累計8200万回を超え、Google Playの人気ランキング上位を独占する人気となっている。

またこれに対抗する形で、韓国の通信キャリア3社(SKテレコム、KT、LG UPlus)が2012年12月26日に共同でメッセンジャーアプリ「JOYN」をリリースしており、APIの開放で競争はさらに激化しそうだ。

ソーシャルゲーム全盛期に突入

韓国はオンラインPCゲームやPCパッケージゲームの開発が盛んであったが、カカオゲームの登場をきっかけに業界はスマートフォン向けのソーシャルゲーム開発へとシフトしている。大手ゲーム開発会社が参入したことで、ゲームの種類も手軽なカジュアルゲームを中心にRPGの要素が加わった育成ゲームやカードバトルなど多様化しており、これまで全くゲームをやることがなかった女性や40代以上の層の取り込みに成功している。部分的な有料化モデルも定着したことから、日本を含む海外からの進出や逆に韓国からのゲーム輸出も加速しつつある。

カカオゲームをきっかけに爆発的な人気となったパズルゲームに「ANiPANG for Kakao」がある。2012年8月のリリース初月だけでカカオトーク利用者の31.4%がダウンロードし、翌月にはそれが60%にまで上昇する人気ぶりだ。1日の売上は2億5000万ウォン(約2200万円)に上り、現在も1000万人以上が毎日1回以上プレイしていると言われる。短時間で手軽に楽しめる上、カカオトークを通じて友人とスコアを競い合えるという仕組みが、競争心の強い韓国人の気質と見事にマッチした例だろう。

また2012年9月25日にリリースされたパズルゲーム「Candy PANG」も、サービス開始から5日目には1日の売上が2億ウオン(約1750万円)に達し、6日間でカカオトーク利用者の18.4%がダウンロードする人気となった。15日間で累計ダウンロード数は1000万回を突破し、その後も類似のパズルゲームが続々と出たことから、カカオ側は現在も類似ゲームの審査を厳しくしているという。

ほかにもドラゴンに乗って敵を撃ち落としながらコインを集める「Dragon Flight」は、1日の売上が20億ウォン(約1億7500万円)とも言われるが、開発元のネクストフロアが代表一人で運営しているという点でも業界の注目を集めている。

カフェを運営するシュミレーションゲーム「I Love Coffee」は、全国にフランチャイズ展開するカフェCoffeBeneと
のコラボキャンペーンを企画。店舗とゲーム双方の知名度アップと売上増加を狙い、CoffeBeneの店頭で限定アイテムを配布するイベントを行っている。また自分の描いた絵を友達に当ててもらう「私が書いたキリンの絵」は、タッチペンを使うGalaxy Noteのユーザーに人気で、端末の特徴を利用した新しい展開も生まれている。

ソーシャルゲームの新しい課金方式

韓国におけるオンラインPCゲームやスマートフォン向けゲームの決済手段は、本人名義のクレジットカードのほか、商品券の利用や携帯電話料金と合わせて支払う方法が主流となっている。

この商品券とは、日本の「GREEコインプリペイドカード」のように事前にカードを手に入れた上で、シリアルナンバーを画面に入力して決済するもので、「韓国文化商品券」、「韓国遊戯文化商品券」、「Happy Money」など複数ある。インターネット上で購入できるほか、CU(旧ファミリーマート)やセブンイレブンといった大手コンビニでも購入できる。ゲーム専用の商品券以外に書籍などの商品購入ができるタイプもあり、贈り物や様々なキャンペーンのプレゼントとしてよく利用されていることから、若者が比較的手に入れやすい状況となっている。

韓国でもアイテム課金型のソーシャルゲームが一般的だったが、カカオゲームの登場をきっかけに「コインシステム」と呼ばれる新しい課金方式が急速に広まった。これはゲームのプレイ時間をマークの増減でコントロールする仕組みで、「AniPANG」では5分ごとにハートマークが、「Dragon Flight」では6分ごとに羽のマークが増えていくが、プレイごとにマークが減り、全て無くなればプレイ終了となる。引き続きゲームをするには有料で購入するか、カカオトークの友人と贈り合う、あるいはマークが増えるまでじっと待つことになる。多くの人は、マークがチャージされるまで他のゲームで遊びながら待っており、複数のゲームを同時並行でプレイするスタイルが定着しつつある。                       

今後の動向

韓国ではゲームにのめり込む若者が社会問題化したことから、「ゲームは規制すべきもの」という否定的なイメージがつきまとっていた。しかしカカオトークやLINEといったモバイルメッセンジャーアプリが新たにゲーム分野へと手を広げたことで短期間に無数のライトゲーマーが誕生し、ゲームに対する市場の印象が一変した感がある。

現在は「AniPANG」の成功をきっかけに類似したカジュアルゲームが市場にあふれ、ゲームのライフサイクルが短期化しているが、ライトゲーマーの急増と市場競争の激化で様々なジャンルのゲームが登場し始めており、海外製ゲームの参入にも期待がかかる。ゲームプラットフォームは、通信キャリアやポータルサイトによる運営に加え、オンラインメッセンジャーによるものが台頭しているが、サムスン電子などの新興勢力も参入を目指しており、今後はプラットフォーム間の競争がさらに激しくなると予想される。

収益化の面ではすでに部分有料化モデルが定着しているが、さらなる収益化に向けてプラットフォームが先導する形で大規模なマーケティングキャンペーンが行われ、規模の経済性が大きく働くようになりそうだ。有名人を使ったプロモーションや小売業・飲食業を巻き込んだSNSマーケティングとの連携にも注目が集まっている。またオンラインメッセンジャーをベースに人気を得たソーシャルゲームは、メッセンジャー本体の海外進出に足並みをそろえる形で海外展開を始めている。カカオゲームはすでに日本でも「AniPANG」や「手軽に!四川省」などの配信を始めており、2013年以降は海外進出の動きがさらに加速することが予想される。

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この記事を書いた人

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