コロナによる客足回復率がもっとも鈍かった北京市の百貨店を回復させた施策とは

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コロナで落ち込む消費、商業施設への補助金と消費刺激策を実施

匯客雲数拠平台のデータによると、全国の主要都市にある百貨店・ショッピングモールの中で、2020年第1四半期(1月~3月)に最も客足回復率が鈍かったのは北京市だった(武漢市を除く)。

2020年の主要都市における商業施設の客足回復率

そのため北京市商務局は2020年3月31日、一定の条件を満たす百貨店・ショッピングモール等の商業施設に対して、テナント料の減免措置を含む補助金政策を発表した。

具体的には、テナント出店する店舗総数の2分の1以上に15日以上のテナント料減免もしくは減額を行っていることを条件に、商業施設の建築面積に応じて最大50万元(日本円で約830万円)の補助金が支払われた。

2020年4月22日には、北京市西城区商務局が、西城区内の百貨店・ショッピングモール等で使用できる電子クーポンを1.5億元分(日本円で約25億円)発行すると発表した。さらに2020年6月3日には、北京市商務局が市内の対象店舗で使用できる「北京消費券」を122億元分(日本円で約2039億円)発行すると発表した。これらの消費活性化政策により、2020年第4四半期(10-12月)には北京市の客足回復率も他の主要都市と同等の80%を超えるまでに回復した。

北京消費券はアプリ内で受け取ることができ、支払いもキャッシュレス限定。割引額は消費額によって異なり、消費最低金額も決まっている。(筆者撮影)

店側はコロナ禍でライブコマースを強化、定着する流れに

 北京市の主要な百貨店・ショッピングモールでは、中国で新型コロナウイルスが流行する以前から、SNSの「微博(Weibo)」やチャットアプリ「微信(WeChat)」の公式アカウントを活用した情報発信が行われており、WeChat内の「ミニブログ」を使用してオンラインショッピングをすることもできた。

新型コロナウイルスが流行して以降は、新たにライブコマースを試す動きが見られ、主にECサイト「淘宝(Taobao)」のライブ配信サービス「淘宝直播」、Weiboとの相性が良い「一直播」、中国版TikTokの「抖音」、テンセントが運営する「腾讯直播」などが利用された。

北京市商務部によると、2020年上半期における市内の主要な商業圏から発信されたライブコマースは500回を超えたという。

実際のライブコマースの配信の様子(筆者撮影)

百貨店・ショッピングモールの多くで現在でも日常的に行われているライブコマースだが、毎日だらだらと一日中配信しているわけではない。たいていの場合、視聴者が多くなる昼や夕方の時間帯を狙って1回に2時間程度配信を行うスタイルが定着している。出演者もインフルエンサーではなく売り場の店員だ。ブランドごとに単独で配信を行うことが一般的で、店舗内で配信するブランドもあれば、別室で配信するブランドもある。さらに、店によってはWeChatのミニプログをうまく活用し、既存のECサイトへ誘導するのはもちろん、駐車料金の支払い、ポイントの付与、イベント情報の発信、口コミの投稿閲覧までワンストップで行うことができる。

客足の戻った店内には様々なSNSアカウントやライブ配信チャンネルのフォローを促す広告が目立つ。(筆者撮影)

北京で最も売上が好調な百貨店「北京SKP」

コロナ禍で消費が落ち込んだ中国だが、その中でも好調だったのが朝陽区にある百貨店の北京SKPだ。インターネット上では「お金に余裕があるならSKPへ」と言われるだけあって、様々な海外ブランドの店舗が入居している。2020年にはティファニーのカフェ「The Tiffany Blue Box Cafe」やフランスの香水ブランド「KILIAN」などが北京1号店を出店して話題となった。

コロナ禍で入店制限が行われている北京SKPの店内(筆者撮影)

他の多くの百貨店がライブコマースに力を入れたのに対し、北京SKPは実際に店舗へ足を運んでもらうことに注力した。SNSで発信する情報も、一般的な百貨店は新商品や目玉商品の情報が主だが、北京SKPの場合は店頭でのイベント情報、「支払い1回につき3000元以上購入で300元のクーポン券プレゼント」といった店舗でのキャンペーン情報、無料サンプルプレゼントといった情報の発信が多い。

北京SKPのSNS投稿へのレスポンス(いいねやコメント)は少ないが、来店時に店舗内の写真撮影コーナーで撮った写真やイベントの様子を伝える写真はSNSに数多く投稿されている。

北京SKPの店内にある写真撮影コーナーの様子(筆者撮影)

北京SKPのSNS公式アカウント。店内で行われるキャンペーンやイベント情報の発信が多めだ。

大手ECサイトの「天猫(Tmall)」とプライベートエクイティファンド「ベインキャピタル」によれば、過去5年間の中国の消費者による贅沢品購入の約7割が海外であったのに対し、2020年はコロナ禍で海外旅行に行くことができなかったため国内での購入が7割を超えたという。この流れも後押ししたのか、北京SKPの2020年の売上は2019年を上回る177億元に達している。

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この記事を書いた人

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