中国の産業ロボット市場(2023年)

目次

結論と要約

中国の産業ロボット市場は、2022年に一時的な減速が見られたものの、2023年には回復傾向に転じている。特にリチウム電池や新エネルギー関連分野を中心に、国内メーカーの存在感が高まり、海外メーカーのシェアは初めて60%を下回った。

一方で、市場には多数の新規参入企業が流入しており、地方政府の支援策も相まって産業の裾野は急速に拡大している。ただし、高精度が求められる分野では依然として海外メーカーが優位であり、サーボモータや減速機などのコア部品についても輸入依存が続いている。

政策面では、「中国製造2025」や「第14次五カ年計画」をはじめとする国家戦略のもと、産業ロボットは重点分野として位置付けられており、導入促進と技術高度化の両面から市場成長が後押しされている。

産業ロボット市場概況

国家統計局によれば、2022年の中国の産業ロボット累計生産台数は44万3055台で、前年に比べ4.8%減少した。もっとも、2023年に入ると状況は改善し、1〜4月までは前年同期比でマイナス成長が続いたものの、5月にはわずかながらプラス成長に転じている。1〜5月の累計生産台数は18万2161台となり、前年同期比で5.3%の増加となった。

工場で稼働する産業ロボット(多関節ロボット)

市場シェアに目を向けると、2023年1〜3月時点では、国内メーカーが40.8%、海外メーカーが59.2%を占めている。国内メーカーは、リチウム電池や太陽光電池、自動車部品といった分野で新規導入が進んでいるのに対し、海外メーカーは電子産業向け需要の縮小に加え、新エネルギー車や電池分野でも需要が減速しており、シェアは初めて60%を割り込んだ。

また、企業数の増加も顕著である。企業情報サービスによれば、産業ロボット関連メーカーは5年ほど前には約400社にとどまっていたが、2022年6月時点では約11.4万社にまで急増している。地域別では江蘇省(約2.4万社)、広東省(約1.9万社)、山東省(約1.2万社)が上位を占める。さらに、資本金規模では100〜1000万元の企業が過半数を占めており、各地での政策支援も相まって、新規参入が加速しているとみられる。

産業ロボットのニーズ

中国ロボット産業連盟(CRIA)および国際ロボット連盟(IFR)の統計によれば、2021年の中国における産業ロボット販売台数は27.1万台で、このうち海外メーカーが18.4万台、国内メーカーが8.7万台を占めた。

ロボットの種類別にみると、多関節ロボットが18.1万台と最も多く、前年同期比で60.8%増加している。販売全体に占める割合は66.8%に達しており、市場の中心的存在である。このうち国内メーカーの販売台数は5.3万台となっている。

次いで、SCARA(水平多関節)ロボットは6.2万台(同43.7%増)で全体の22.9%、直角座標ロボットは1.7万台(同20.2%増)で6.3%を占める。一方、パラレルリンクロボットは販売台数が減少傾向にあり、構成比は4.1%にとどまっている。

メーカー別のシェアを種類ごとに比較すると、直角座標ロボットでは国産メーカーのシェアが68.6%と最も高いのに対し、パラレルリンクロボットでは11.4%と低く、分野によって競争力に差があることがわかる。

用途別にみると、運搬・パレタライズロボットが11.7万台(同55.3%増)で最大の用途となり、全体の43.2%を占めている。このうち国内メーカーの販売台数は4.6万台である。溶接ロボットは5.8万台(同51%増)で21.4%、組立・解体ロボットは4.3万台(同23.4%増)で15.9%となっている。

倉庫で稼働するパレタイズロボット

用途別のシェアでは、加工分野において国産メーカーのシェアが45.8%と比較的高い一方、組立・解体分野では16.6%にとどまり、依然として海外メーカーが優位にある。

産業別にみると、電気電子設備・器材製造業が8.9万台で全体の32.8%を占めて最も多く、次いで自動車製造業が6.3万台(23.2%)、金属・機械製造業が3.5万台(12.8%)と続く。国産メーカーのシェアは、プラスチック・化学製品製造業で75.1%と高い一方、自動車製造業では25.6%にとどまっている。

政策による目標設定と産業成長の後押し

産業ロボットは中国において国家戦略上の新興産業と位置付けられている。半導体や電子部品、バッテリー、自動車、物流といった分野では、労働力不足や人件費の上昇を背景に、自動化や協働ロボットの導入が加速している。

政策面では、2015年に打ち出された「中国製造2025」において産業ロボットの発展が最優先課題の一つとされたほか、2021年の「第14次五カ年計画」ではロボット技術が重点分野として明記された。さらに同年には「ロボット産業発展計画」が発表され、2025年までに国際先進レベルへの到達、2035年までに世界トップレベルの産業力を確立するという目標が掲げられている。

2023年1月には「“ロボット+”応用行動実施方案」が公表され、100種類以上の革新的応用技術の創出や200以上の応用シーン拡大などが打ち出された。特に製造業については、2025年までにロボット密度を2020年の2倍に引き上げる方針が示されている。

こうした中央政策に加え、地方政府も積極的に支援策を展開している。例えば安徽省では、産業ロボットの購入に対して最大100万元の補助を行っており、広東省でも最大5000万元規模の補助制度が設けられている。

一方で、技術面の課題も残る。組立やクリーンルームなど高精度が求められる分野では依然として海外メーカーが優位であり、サーボモータや減速機、コントローラといったコア部品についても輸入依存が続いている。

現状では、国内メーカーはロボット本体の製造やシステムインテグレーションを中心に事業を展開しているが、今後コア部品の内製化が進めば、市場シェアが大きく変化する可能性もある。

産業ロボットにまつわる規制

産業ロボットは、主に機械製造関連の法令や標準規格によって規制されている。代表的なものとしては、2016年の「工業ロボット産業規範条件」および2017年の「関連管理弁法」などが挙げられる。

さらに2017年以降はサイバーセキュリティ法の施行により規制が強化されており、製品が重要インフラ設備に該当するか、国家標準規格に適合しているか、安全認証が必要かといった点について個別に確認する必要がある。

例えば、工場設備の制御に用いられるPLCは、一定の性能を満たす場合、重要設備に該当する可能性がある。この場合、必要な認証を取得していなければ、中国国内での販売停止や政府調達からの除外といった措置を受ける可能性がある。

また、産業ロボットを導入する企業側についても、稼働データが重要データに該当するかどうかが問題となる場合がある。これはメーカーの国籍に関係なく適用されるため、導入時には法規制への適合性を慎重に確認する必要がある。

中国市場における産業動向や政策環境に関心をお持ちの方へ

本記事では、中国の産業ロボット市場について、ご紹介しました。中国では製造業の高度化や自動化の進展に伴い、産業ロボットの導入動向や技術トレンドの把握が、事業戦略の検討において重要性を増しています。

当社では、産業動向や政策環境、現地企業の競争状況を踏まえた中国市場調査を通じて、企業様の意思決定をご支援しています。情報収集の段階からでも、お気軽にご相談ください。

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