台湾の通信市場を知る
(1)インターネット
2013年5月末時点で、台湾の固定ブロードバンド(BB)サービスの加入件数は672万5086件で、普及率は約24%に上る。このうちADSLが171万391件、FTTxが276万9112件、ケーブルモデムが110万6731件、PWLANが110万9505件などとなっている。一方、モバイルブロードバンドの契約数は1787万6265件で、このうち3G方式が全体の99%余りとなる1725万307件、WBA(WiMAX)方式が13万4418件となっている。WiMAXは2007年7月にライセンスが交付され、現在は6社(大同電信、全球一動、遠伝電信、大衆電信、威邁思、威達雲瑞電信)がサービスを提供している。
2013年3月末時点のドメイン名の総計は66万8544件で、前年の62万4516件から4万4028件増加した。またIPv4アドレスは3540万192件で、前年よりプラス6144件、IPv6アドレスは2338件で同プラス2件だった。
行政院は2010年4月に「クラウド産業発展方案」を発表し、5年間で240億台湾ドル(約840億円)の財政支出を行う方針を示した。その後2012年9月に「クラウドサービスと産業発展方案」を発表し、10分野(警察、食品、健康、環境、農業、交通、図書資料、防災、教育、文化)のクラウドサービスを促進させるため、さらに70億台湾ドル(約240億円)を拠出する意向を明らかにしている。
(2)モバイル
2013年7月現在、2Gと3G、およびPHSが利用されている。このうち2Gサービスは、2017年6月に周波数が回収される予定で、それにともない強制的にサービスが終了する見通しとなっている。また4Gサービスは2014年にもスタートすると聞かれるが、具体的な時期は定かではない。
2013年5月末時点で、2G契約件数は536万3927件、3G契約数は2336万2990件、PHS契約件数は75万466件となっている。2Gサービスを提供するのは、中華電信(Chunghwa Telecom)、台湾大哥大(Taiwan Telecom)、遠伝電信(Far Eas Tone)の三大通信キャリアで、シェアはそれぞれ60%、20%、20%ほどだ。
一方の3Gサービスは三大キャリアに加えて、亜太電信(Asia Pacific Telecom)、威宝電信(Vibo Telecom)もサービスを提供している。なおPHSは、大衆電信(First International Telecom)が1社でサービスを提供している。2013年5月末時点の各社の契約数等は以下の通り(国家通訊伝播委員会発表)。
(3)固定電話
元々は国営の中華電信が1社で市場を独占していたが1996年から自由化がスタートした。現在は中華電信のほか、台湾大哥大系列の台湾固網、遠伝電信系列の新世紀資通、亜太電信の4社体制となっているが、中華電信のシェアが90%を超えている。2013年5月時点の契約件数は1234万1368件で、年々減少する傾向にある。なお全国の公衆電話の設置数は7万6953台となっている。
台湾の通信費用・・・中華電信の例
(1)インターネット
下り速度が2Mから100Mまで7つのプランが用意されており、月額の合計利用料金は日本円にして約2400~4500円と日本よりわずかに安い。なお初期費用として、接続費1500台湾ドル(約5000円)、設定費200台湾ドル(約700円)などが必要となる。
下り速度が64Kから640Kまで4つのプランが用意されており、月額の合計利用料金は日本円にして約850~2600円となっている。また契約年数に応じて回線使用料金の割引があり、2年目から5%、3年目から10%、5年目から13%、7年目以降は15%が毎月割引される。さらに半年分または1年分の料金を前払いした場合、回線使用料がそれぞれ4%と8%割引される。なおADSLの場合も、初期費用として接続費1500台湾ドル(約5000円)、設定費200台湾ドル(約700円)などが必要となる。
(2)モバイル
2Gはこの基本プランのほかにも長距離電話を多く利用する人にお得なプラン、無料通話やSMSの無料送信回数の多いプランなど様々なプランがある。通話料金は、深夜時間帯で特に安く設定されているが、昼間の料金は3Gとほぼ変わらない。
3Gは通話料金が2Gに比べいくぶん安く設定されており、月額料金と同額の無料通信のあるプランのほか、音声通話の多い人向けに無料通話分がついているプランもある。
またこのほか、2G・3Gともにプリペイドタイプの契約もある。月額料金はかからず、音声通話はいずれも1秒あたり0.09台湾ドル、SMSは1件1.4803台湾ドルとなっている。通話料金のチャージは直営店の窓口はもちろん、コンビニで購入できるプリペイドカードで簡単に行うことができる。
中華電信の2G及び3Gのサービスエリアは下図の通りとなっている。
台北市や台中市といった大都市では3Gで下り21Mbps(理論値)、その他の都市部では下り3.6~7.2Mbps(理論値)のネットワークでカバーされている。東側に縦に伸びる空白のエリアは標高3000米を超える山々が連なる山脈で、山裾に沿って2Gサービスがカバーしていることがわかる。
出張や旅行者にやさしい台湾のモバイル環境
台北市内にはいたるところに通信キャリアのショップや代理店がある。新規契約の際は中華民国国民身分証(外国人の長期滞在者であれば居留証)に加えてパスポートや運転免許証などもう1つ身分証を用意する必要がある。
私たちが旅行や出張で訪台する場合は、桃園国際空港や松山空港にある各通信キャリアのカウンターで手続きすれば、パスポートのみでプリペイドタイプのSIMカードを手に入れることができる。3G契約の場合、まずデータ通信(無制限)の利用期間を選ぶことになり、中華電信の場合は1日間:100台湾ドル、3日間250台湾ドル、7日間:450台湾ドルのプランがある。例えば3日間の利用で最初に300台湾ドルをチャージすると、この中からデータ通信分の250台湾ドルが引かれ、通話に50台湾ドル使えるわけだ。台湾大哥大にはほかに5日間、10日間、25日間といったプランもあり、通話料込みの価格が設定されている(取材当時)。
また、滞在中にちょっとインターネットで検索できれば便利だな、という程度であれば、台湾政府が運営する無料WiFiサービスを利用する手もある。台北市内の主要な建物や捷運(MRT)駅には、「台北Free」や「iTaiwan」という無料のWiFi接続ポイントが用意されており、空港の観光案内所(旅遊服務中心)でパスポートを見せればすぐにアカウントを作ることができる(パスポート番号がID、誕生日がパスワードになっている)。
さらに台湾ではホテルやレストランはもちろん、小さな食堂にもアカウント不要の無料WiFiが用意されていることが多く、ロックのかかっていないいわゆる“野良WiFi”もたくさん飛んでいるため、市内でインターネットが利用できずに困ることはまずない。
4Gサービスは2014年にスタートか
スマートフォンを持つ人が増え、4Gサービスのスタートが待たれる台湾だが、商用サービスが始まるのは2014年になりそうだ。国家通訊伝播委員会(NCC) による4Gの事業免許の競争入札の募集は7月1日に締め切られたばかりで、今後は8月15日までに応募資格の審査結果を公表し、9月3日より競争入札を実施、11月に落札者が発表となる予定だ。
今回応札したのは、中華電信、台湾大哥大、遠伝電信、亜太電信の通信キャリア4社に加え、鴻海集団の国碁電子(Ambit Microsystems)、新光合成繊維傘下の新建、台湾之星移動電信の計7社で、各社は100億台湾ドル(約350億円)以上で入札すると予想される。発行されるライセンス数は明らかでないが、NCCの関係者は「世界をみても1国内で4G事業者が3社を超えるケースはない」と発言し、業界に提携を呼び掛けている。また法的には落札後に会社を売却することもできるため、通信業界の再編が起こるとの見方もでている。
台湾は2007年にWiMAXのライセンスを発行し、3Gの後継規格として相当の投資を行ってきた。しかし世界ではLTEが4G規格の主流となっており、対応端末や関連設備の調達を考えると台湾にとってLTE導入はやむを得ない判断だったようだ。業界では「初期選択を誤ったために、日本に4年以上、韓国に3年以上の遅れをとった」との声も上がっており、行政院の科技政策委員からは、同じ失敗を繰り返さないよう次の第5世代通信規格(5G)に向けた技術開発に早急に着手するよう呼びかけがあった。 日本や韓国では4Gサービスの普及に伴って、スマートフォンやタブレット向けの新しいサービスが続々と誕生している。台湾はモバイル普及率が高く、無料の公衆無線LANが広く定着しているというベースがあることから、4Gへの切り替えが進む2~3年後には、映画・ドラマの定額視聴サービスやオンラインゲームといった高速大容量でリアルタイム性が要求されるサービスの新たな市場として注目を集めそうだ。