黎明期の台湾モバイルゲーム市場
台湾は人口約2300万人に対して携帯電話の普及率が120%を超えており、契約数は2784万件あまり。3G契約は全体の67.3%に当る1873万件で、スマートフォンユーザーは1200万人を超える。さらにFacebookの利用者が人口の90%以上、LINEの利用者が50%以上という特殊な環境であるが、SNS上で提供されるソーシャルゲームはまだ日本や韓国ほどのブームにはなっておらず、モバイルゲーム市場はまだ黎明期にある。
台湾経済部工業局が発行する「数位内容産業年鑑(デジタルコンテンツ産業年鑑)」によれば、台湾のデジタルゲーム市場(パッケージソフト型のPCゲーム、各種オンラインゲーム、コンソールゲーム、アーケードゲーム、ポータブル型ゲーム)の規模は、2011年末時点で前年同期比3.36%増の436.2億台湾ドル(約1527億円)だった。個別のデータは明らかでないが、業界の報道等ではオンラインゲームだけで市場規模は約400億台湾ドル(約1400億円)に上り、このうちモバイルゲームは約38億台湾ドル(約133億円)、ユーザー数は500~600万人と伝えられる。
筆者が2013年6月に訪台した際の実感としても、バスやMRT(捷運)の中でスマートフォンを触る人はLINEのようなコミュニケーションアプリでやりとりをするか、イヤホンをしてアニメやドラマを見ている人が多く、ゲームをする人は見かけなかった。
産業情報研究所(MIT)が2011年10月に行った調査によると、スマートフォンでよく利用する有料アプリ(複数回答)は1位が音楽で22.2%、2位が写真・画像で21.1%、3位がゲームで21.0%だった。一方の無料アプリでは、順位は同じでも利用率が倍近くに増え1位の音楽が41.2%、2位の写真・画像が40.6%、3位のゲームが35.8%だった。
またゲーム及び動画コンテンツに対する課金額のデータから見ても、ゲームでは課金無しが60.9%と圧倒的に多く、次に1~499台湾ドル(約1700円)までが30.6%と、合わせて全体の9割を占め、1日の利用時間でも1時間以下が全体の8割を占めた。動画コンテンツは課金額と利用時間のいずれにおいてもゲームをやや上回る解答となっており、どちらかといえば動画コンテンツへの関心が強い傾向が分かる。
プラットフォームは少数精鋭
モバイルゲームやソーシャルゲームのプラットフォームは、日本と同様にFacebook、AppleのAppStore、Google Playが利用されているほか、ゲーム専門サイトの「巴哈姆特(バハムート)」や「遊戯基地(gamebase)」、検索サイト・ポータルサイトの「Yahoo!奇摩」や「yam天空」のゲームコンテンツがよく利用されている。
2012年10月24日には、DeNAが「Yahoo!奇摩」と提携し、ゲームコンテンツ(http://tw.games.yahoo.com/)のモバイル向け特設ページに同社のソーシャルゲームプラットフォーム「Mobage(モバゲー)」の提供を始めている。 繁体字版Mobageは、約1カ月間のβテスト期間中だけで10万人以上が利用し、オープン3カ月で100万人のユーザーを獲得している。
最近では今年の6月1日にJapanSocial株式会社が日本の人気ソーシャルゲームを台湾向けにローカライズ配信するプラットフォーム「Tokyo Game Style」を開設。前述の「巴哈姆特」を通じたプロモーションと公式Facebookページでファンを増やしている。
ゲームのマルチプラットフォーム化が進行中
近年はコンテンツ開発のマルチプラットフォーム化が進んでおり、人気ゲームを中心にiPad、iPhone、Androidのそれぞれに対応したバージョンがリリースされている。
ゲーム専門サイト「巴哈姆特」のAndroid向けゲームの人気ランキングは以下の通りで、トップ10には台湾や日本のゲームが多くランクインしている。元々オンラインPCゲームの人気が高かったこともあり、端末がモバイルに変わってもMMORPGの人気が高いようだ。
iOS向けの人気ランキングでも上位はAndroidと似た顔触れとなっている。日本ではパズルやソーシャルゲームといった比較的カジュアルなゲームの人気が高いが、台湾ではMMORPGやカードバトルといった戦略性の必要なじっくり遊ぶタイプのゲームが人気のようだ。
課金は少額決済かプリペイドが中心
台湾ではモバイルゲームの決済手段として、本人名義のクレジットカードのほか、携帯電話の通話料金と合わせて請求される少額決済、点卡(time card)と呼ばれるゲーム用プリペイドカードがよく利用されている。
携帯電話少額決済は、事前に各サービスのサイトなどで身分証番号とパスワードを登録しておき、決済時に「少額決済」を選択した上で、携帯電話番号、身分証番号、パスワードなどを入力するだけでよい。主要な通信キャリアで利用が可能で、多くの場合で月額費用はかからないが、取引ごとに一定の手数料(2台湾ドル程度)が徴収されることがある。また各キャリアごとに利用期間によって1カ月あたりの利用上限が1000~6000台湾ドル(約3500~6000円)、1回あたりの決済上限が1000~3000台湾ドル(約3500~9500円)に定められている。
一方の点卡はクレジットカードを持たない若者がよく利用しており、「My Card」のように様々なゲームで利用できるものと、特定のゲーム会社やポータルサイト、特定のゲームのみで利用できるもの等多くの種類がある。またゲームによって、額面分のバーチャルマネーとしてゲーム中で利用できるものや額面に応じたプレイ時間を購入するものもある。
点卡はいずれもインターネット上のゲーム専門サイトなどで割引販売されているほか、コンビニなどでも手に入れることができる。多くのゲームに対応している「My Card」の場合は、50台湾ドルから5000台湾ドル(約175~17500円)まで10種類揃っている。コンビニで購入する場合は、店舗のマルチメディア端末で希望するカードと金額を選択し、画面下から出力されるレシートをレジで支払えば、チャージ番号とパスワードを受け取ることができる。