中国の外資系ホテルがチベットを国扱いし謝罪トラブルに

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1. 微博ユーザーの投稿で炎上、サイトは一時閉鎖に

米系ホテルチェーンのマリオット・インターナショナルが、チベット・香港・台湾・マカオを独立した国家として扱ったとして、激しい批判にさらされている。

現地の報道によれば、マリオットは 1 月 9 日の早朝までに中国の会員向けに電子メールを送付したという。メールを受け取った会員の一人が、文中の賞品付きアンケート「i讲 i 奖」に回答していたところ、「現在どこの“国”に住んでいますか?」という質問の選択肢に、他の国名と並んで「台湾」や「チベット」があることを発見。さっそく微博(Weibo)にこの事態を書き込んだところ、それを見た政府系メディアの環球時報が報道したことで騒ぎは一気に広まった。

これを受けマリオット側は、9 日昼に公式微博を通じて謝罪するとともに速やかに内容を修正すると表明。さらに翌 10 日朝にも改めて声明という形で謝罪し、再発防止に努めるとした上で、同社は一貫して中国の主権と領土の完整を尊重する立場であることを強調した。また同日深夜には、同社グループの WEB サイトとアプリを精査し、国家と地域の表示を修正したと報告。しかし当局による調査が行われる事態にまで発展し、11 日昼にも重ねて謝罪のコメントを出した。同社の中国向けサイトとアプリは 11 日18 時から 1 週間の自主閉鎖措置をとっている。

一方の上海市黄浦区人民政府は、10 日夜に公式微博を通じてマリオットの上海地区責任者とグループの大中華地域責任者を呼び、速やかな対処と謝罪を求めたことを説明。今回の行為はサイバーセキュリティ法および広告法の規定に違反する疑いがあるとして、必要な捜査を進めるとした。さらに国家旅遊局も 11 日までに、国内で旅行業に携わる企業に対し、直ちに WEB サイトやアプリの全面的な精査を行うよう求め、同様の事態を二度と起こさないよう警告している。

2. 外資系企業への規制が強まる恐れも

今回の騒ぎの発端は、中国政府が主権の及ぶ領土だと主張する台湾や特別行政区である香港・マカオ、そして独立問題等で特に敏感なチベット自治区をあたかも一つの「国」であるかのように扱ったことにある。

現地メディアは、このような行為はサイバーセキュリティ法 12 条で禁じられている「国家の分裂を扇動する行為」、48 条の「電子メール等を通じて法律法規で禁止された情報を送信する行為」にあたり、最高 50 万元の罰金のほか、業務の一時停止や WEB サイトの閉鎖、営業許可証のはく奪の可能性もあると伝えている。

これをきっかけに、他の外資系企業の WEB サイトやアプリに対する規制や監視の目が厳しくなる恐れは十分にある。中国向けに事業を行っている企業は、自社サイト等に不用意な誤解を与える表現がないか速やかに確認した方がよいだろう。

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