中国アリババのニューリテールスーパー「盒馬鮮生」とは

目次

1. アリババのニューリテール戦略の要

「ニューリテール(新零售)」とは、2016 年 10 月にアリババの馬雲会長(当時)が提唱した小売業における新しいコンセプトである。テクノロジーとデータを活用し、オフラインとオンラインを融合させることで、より優れた顧客体験を届けることを目的とする。

そんなアリババの「ニューリテール戦略」における核心的なスーパーが「盒馬鮮生(盒马鲜生)」である。「盒馬」は動物のカバを意味する中国語「河馬」と発音が同じで、新鮮であることを意味する中国語の「鮮生」と、これに似た発音で「~さん」の意味を持つ「先生」とをかけたネーミングになっている。マスコットも水色のカバのキャラクターで、あえて日本語に訳すなら愛称は「カバさん」といったところだろうか。

盒馬鮮生はスーパー、コンビニ、レストラン、生鮮市場を統合した店舗である。「オフラインとオンラインの融合」がテーマである通り、一般的なスーパーマーケットのように店舗を構えてはいるが、盒馬鮮生アプリからの注文も受けており、店舗から半径 3㎞以内の会員ならば 30 分以内に配送される。

2. 新鮮さと安さで勝負

盒馬鮮生では、取扱商品の 50%以上が野菜や果物、鮮魚などの生鮮食品となっている。同社の鮮生部門の張国宏総経理によると、仕入れは海外の生産地での直接買い付け、国内での直接買い付け、自社ブランド商品の 3 パターンだという。

海外からの生鮮食品は、欧米各国やアジア諸国などから毎日航空便で入荷する。地場の野菜は、前日に収穫されたものが翌日には売り場に並んでおり、収穫から店頭に並ぶまでわずか 8 時間しかかからない野菜もあるという。

また、盒馬鮮生は生鮮食品が安いことでも知られる。例えばカニは、京東(JD)で 1 杯130 元だが、盒馬鮮生では 1 杯 100 元だ。もちろん鮮度は盒馬鮮生の方が良い。野菜も一般的なスーパーよりも鮮度が良いのに 10~15 元ほど安く設定されている。

3. 消費者のニーズを汲んだサービス

多くの野菜が個包装で販売されているように、盒馬鮮生では基本的に 1 回分の料理に使う分量を目安に小分け販売されている。忙しく働く人にとって毎日自炊するのは難しい。だから、その日の料理に使う分だけを買って、新鮮なうちに食べきれるようにという配慮がされている。盒馬鮮生は家庭の冷蔵庫代わりになろうとしているのだ。

料理ができない、あるいは忙しい人のために、店内調理&イートインのコーナーもある。盒馬鮮生のレストラン機能にあたるサービスで、例えば魚介類ならば調理方法によって 1 斤(500g)あたり 15~35 元(約 225~570 円)で調理してもらうことができる。エビを 1 斤 35 元で買った後、15 元でニンニク炒めにしてもらい、店内で食べて帰る、といった要領だ。

4. 注文も支払いもオンラインとオフライン便利な方から

配送の注文を受けた商品は、スタッフが直接売り場からピックアップする。商品は店舗の天井に設置された専用ラインでバックヤードに運ばれ、店の外に待機している配送スタッフが受け取り次第、配送に出発する。顧客に届くまで最長でも 30 分だ。

支払いは盒馬鮮生アプリに紐づけた支付宝(Alipay)を使うか、現金で支払うことができる。先にオンラインで注文して店頭で商品の受け取り時に支払ったり、オンラインで注文・支払いをしたあと商品は店頭で受け取ったり、店頭で購入するが支払いはオンラインで行ったりと、その時の都合で便利な方法を選べばよい。まさにオフラインとオンラインを融合させたスーパーだ。

同社の侯毅 CEO は 2017 年 7 月の時点で、オープンして半年以上経つ店舗は全て黒字化したと答えている。1 号店である上海金橋店の売上額は 1 日あたり 100 万元を超え、会員の 1 カ月あたりの平均利用回数は 4.5 回に達する。オンラインとオフラインの購入比率はおよそ 7:3 だそうだ。なお 2022 年までに全国 2,000 店舗に増やす計画で、2019 年からは大都市だけでなく地方都市へも出店を進めている。

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この記事を書いた人

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