中国インターネットドメイン管理弁法(パブコメ版)について

目次

1. およそ 12 年ぶりの改定

工業情報化部は 2016 年 3 月 25 日、「インターネ ットドメイン管理弁法(修正意見募集稿)(互联网域名管理办法(修订征求意见稿))」を発表した。4 月 25 日まで、パブリックコメントを受け付けている。 同弁法の現行規定は 2004 年 12 月 20 日に改定施行された「中国インターネットドメイン管理弁法 (中国互联网络域名管理办法(信息产业部令第 30 号) )」で、改定されれば実に12 年ぶりとなる。

先日施行された「ネットワーク出版サービス管理規定」も 14 年ぶりの改定だった。 今回公表されたパブコメ版では、新たにDNS サービスを対象に追加したほか、ルートサーバーやドメインサーバーの運用機構(データセンター事業者が該当すると思われる)の設立条件や手続き、日常の運用管理体制についても規定し、現行では情報産業部(現、工業情報化部)の批准が必要であるところ、工業情報化部あるいは省・自治区・直 轄市にある通信管理局の当該許可が必要としている。

またドメインにまつわる争議を規定した第四章が削除され、代わりに監督検査の条項が追加された。特に新たに追加され た第三十七条が国内外で論争を引き起こしており、どのような議論がなされるのか注目 される。

2. 第三十七条

パブコメ版では第三十七条において、インターネット接続サービス(ISP)事業者に対し 海外で取得したドメインに接続サービスを提供しないよう求めている。

つまり、中国国内で WEB サイトを開設する際には、利用するドメイン名のレジストラ(ドメイン登録事業者)が中国国内になければならない。外資企業はもとより中国国内の事業者であっても、海外で取得したドメイン名では WEB 開設すらできないということを意味する(なお他の規定によって、中国でサービスを展開する際には、業務に関わるサーバー等を国内に設置する必要がある)。

上海報業集団のニュースメディア「澎湃新聞」などの報道によると、淘宝(Taobao)、 百度(Baidu)、網易(NetEase)、天猫(Tmall)、捜狐(SOHU)など多くの有名企業のドメインは、いずれも海外で取得されたもので、影響を受ける中国企業は意外に多いとみている。

一方で、IT アナリストの中には「第一の目的は海外でドメインを取得したいわゆる不良サ イトを一掃するため、第二に中国語ドメインを普及させるため、第三に海外企業が中国で事業拡大する場合の最善策を中国企業との合弁合作にするため」と分析する者や「中国のドメイン管理のセキュリティレベルは低すぎる。常にハッカーの攻撃を受けていることが証明している」と新規定の内容を批判し、海外でドメインを管理するメリットを説く声もある。

また新規定が施行された場合、阿里巴巴集団(アリババ)が力を持ちすぎるとの懸念も出ている。中小レジストラの多くは阿里巴巴集団の万網を通じて登録していることから、今後ドメインが中国国内に移管されることになれば、ほとんどのドメインが阿里巴巴の管理下に置かれることになるというのだ。

3. 実務上は現在も移管必須

弊社では日本および海外の事業者からの依頼を元に、中国での WEB サイト開設に関わる手続きを支援しているが、かねてより中国のレジストラへのドメインの移管あるい は新規取得が必要となるケースが散見されている。

サイト公開には ICP 登録(備案)が必要となるが、特に「.com」や「.net」のドメイン名については、レジストラが中国国内であることが実務的に求められており、海外レジストラのドメイン名を ICP 登録する手続きは極めて煩雑となっている。「.jp(日本)」「.kr(韓国)」といった ccTLD と呼ばれるドメインなどでは、中国国内のサーバーで新たに利用することができない状況だ。

過去に実際に問題となったケースにはこのようなものがある。一つ目は、近い将来に中国国内で WEB サイトを開設することを目的に、先行して日本(あるいは欧米)のレジ ストラでドメインを取得していたケースだ。このケースでは、日本法人名で「.com」ド メインを取得していたため、中国のレジストラへの移管と、中国法人への所有者変更を同時に行う必要があった。手続きは滞りなく進んだものの、当初のスケジュールより 1 カ月以上遅れての WEB 公開となってしまった。

二つ目はさらに複雑で、すでに中国国外で利用していたドメインを用いて中国国内で CDN サービスを利用しようとしたケースだ。一般的には、アクセス元の IP アドレスから国・地域を判別し、中国からのアクセスであれば中国の CDN サービスを通じて配信することが可能となる。しかしこのドメインは日本法人の名義であることから中国で ICP 登録を行うことができず、さらにクライアント側の判断で中国法人の名義に変ることや、中国のレジストラを利用することができなかった。このケースでは最終的に 中国のレジストラで新たに別のドメインを取得することで、無事に CDN サービスを利用することができた。

二例目のように、すでに運用しているドメインを用いて中国のサーバーや CDN サービスを利用したいという相談は多い。しかし WEB サイトの設計や、どの URL をマーケ ティングに用いるかなどの検討が先に進んでいることも多く、ドメインの決定に際しては上記のケースにあたらないかなど十分な検討を行う必要があるだろう。

今回公表されたパブリックコメント募集稿の内容は、とりわけ外資企業にとって突然の規制強化と映るかもしれないが、弊社のこれまでの経験では、直近の実務と今回の規定にさほど大きなかい離はないように感じられる。今まで実務で補っていたルールが明文化されたにすぎない面が多分にあることから、新たに大きな影響があるものとは考えにくいが、修正に至る動向を引き続き注視していく必要がある。

パブコメ版:互联网域名管理办法(修订征求意见稿) 現行規定:中国互联网络域名管理办法(信息产业部令第 30 号) http://www.miit.gov.cn/n11293472/n11293832

よかったらシェアしてね!
  • URLをコピーしました!
  • URLをコピーしました!

この記事を書いた人

中国ビジネスをワンストップでご支援しています。クララは20年以上にわたり日本と中国の間のビジネスを牽引している会社で、日中両国の実務経験と中国弁護士資格を有するコンサルタントの視点・知見・ネットワーク・実行力を生かして、お客様の課題解決と企業成長を強力に支援しています。

Webサイトはこちら
>>日本企業の「中国事業支援」で実績20年以上 | クララ

目次