ベンチャー企業の資金調達を支える北京証券取引所

北京証券取引所(北京証券交易所)は、2021年9月2日に設立された中国で最も新しい証券取引所だ。習近平主席が中小企業のイノベーション支援を目的に創設を主導したもので、1991年の深セン証券取引所以来、30年ぶりの新規開設となる。

北京証券取引所は、中小企業向けの店頭市場「新三板」をベースにしており、オープン当初は新三板の上位クラスから71社の銘柄が移された。上場申請には「イノベーション層」の企業であることが条件の一つとなっており、既存の上海証券取引所や深セン証券取引所に比べて上場にかかる要件が緩和されているのが特徴だ。

目次

公司制の証券取引所

中国の証券取引所には、会員制取引所と公司制取引所の2種類がある。上海証券取引所と深セン証券取引所はいずれも会員制取引所だが、北京証券取引所は公司制取引所で、北京証券取引所有限責任公司が運営している。

北京証券取引所有限責任公司は、2021年9月30日に設立された独資法人で、資本金は10億元、株主は全国中小企業股フェン転譲有限責任公司である。これらの情報は一般の企業と同様に、国家企業信用情報公示システムで公開されており、誰でも閲覧することができる。

北京証券取引所の概況

北京にはハイテク企業やIT企業が集まる中関村があり、また周辺地域には自動車関連メーカーが多く存在している。当初の想定通り、北京証券取引所はこれらの業種で生まれたベンチャー企業の資金需要を支える役割を担っている。

最新の2022年6月1日時点のデータでは、上場企業数は93社、時価総額は1876億3300万元となっている。業種別では、一般機械・特殊機器・電気機械等の製造業が17社、ソフトウェア・情報技術サービス業が12社、医薬品製造業が8社、自動車製造業が7社、食品製造業が7社などとなっている。

なお北京証券取引所によると、2022年3月の時点で、上場企業に所属する技術研究開発人員は1社平均140人あまり、総数では1万2000人を超えるという。

主な上場条件

「北京証券取引所株券上場規則(試行)」では、株式の公開発行や上場の申請にあたり、次の各項の条件を満たすことを求めている。(2.1.2)

  • 発行人は、全国股フェン転譲システムに12カ月連続で公示を行ったイノベーション層の公示会社である
  • 証監会が規定する発行条件を満たしている
  • 直近の期末の純資産が5000万元を下回らない
  • 不特定の投資者に向けて公開発行する株式が100万株を下回らず、発行対象が100人を下回らない
  • 公開発行後の株式資本総額が3000万元を下回らない
  • 公開発行後の株主数が200人を下回らず、公衆株主の持ち分比率が株式資本総額の25%を下回らず、株式資本総額が4億元を超える場合は公衆株主の持ち分比率が株式資本総額の10%を下回らない
  • 市価および財務指標が本規則で規定する基準を満たしている
  • 本証券取引所が規定するその他の上場条件を満たしている

逆に株式の公開発行や上場の申請にあたって、存在してはならない事由も具体的に定義している。(2.1.4)

  • 直近36カ月以内に、発行人及びその株式支配株主が、横領、賄賂、財産侵奪、財産流用の罪、もしくは社会経済の秩序を破壊する刑事罰を犯し、債権発行の詐欺、情報開示の違法、又はその他の国家・公共・生態・生産・公衆の健康の安全などの分野にかかる重大違法行為がある
  • 直近12カ月以内に発行人及びその株式支配株主、実際の支配者、董事、監事、高級管理人員が行政処罰を受けた、又は法令に違反して公開けん責を受けた
  • 発行人及びその株式支配株主、実際の支配者、董事、監事、高級管理人員が、犯罪や法令違反の嫌疑をかけられ立件、捜査された
  • 発行人及びその株式支配株主、実際の支配者が信用失墜執行人リストに収載されている
  • 直近36ヶ月以内に、各会計年度の終了の日から4カ月以内に年度報告を公告しない、又は各会計年度の上半期終了の日から2カ月以内に中間報告を公告しない
  • 持続的な経営能力に重大なマイナスの影響を有する状況等がある

北京証券取引所(中国語) http://www.bse.cn

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この記事を書いた人

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