中国の衛星測位システムと GPS が相互運用へ

目次

1. 北斗と GPS 相互運用へ

北京市で 11 月 29 日に開かれた中米衛星測位システム会議で、中国が運用する衛星測位システム「北斗」と米国が運用する GPS(全地球測位システム)について、国際電気通信連合(ITU)の枠組みの下で RF 信号に互換性を持たせ、民間用信号の相互運用を行うとする共同声明が出された。

同会議には、中国側から中国衛星ナビゲーションシステム委員会の王力主席、北斗衛星測位システムの設計責任者である楊長風総設計師らが、米国側からはジョナサン・マーゴリス国務次官補代理らがそれぞれ出席した。両者は2014 年 5 月に民間用衛星測位領域での相互協力に合意しており、信号の互換性や相互運用の実現に向けた話し合いも度々行われていた。

2. 北斗とは

「北斗」は中国が独自開発した衛星測位システムで、2012 年 12 月に運用が始まった。2000 年に最初の試験衛星を打ち上げて以来、すでに 25 回に渡って 29 基の衛星打ち上げに成功している。2020 年までに静止軌道衛星 5 基と傾斜対地同期軌道衛星 3 基を含む非静止軌道衛星 30 基による全地球測位システムの完成を目指しており、3 種類の軌道衛星で構築された衛星測位システムは、「北斗」のほかにない。

直近では今年 11 月 5 日に「北斗 3 号」と名付けられた衛星 2 基を打ち上げている。これにより測位精度は 2.5~5 メートルの水準にまで向上し、一般ユーザー向けのカーナビやナビゲーションアプリでは誤差が 10メートル程度にとどまるとされる。将来は農業、海洋漁業、航空、交通運輸、救急救援、防災減災等の分野でも利用が広がる見通しだ。なお北斗は 2015 年の時点で主要部品の国産化率が 98%だったが、今回の北斗 3 号では完全な国産化を実現している。

3. GPS との相互運用でどうなる

「北斗」と GPS の相互運用が本格的に始まれば、世界の多くの利用者がより正確な位置情報サービスを利用できるようになると期待されており、IoT や 5G 領域の発展を大きく加速させるとの声も出ている。またこの報道を受けて、測位チップモジュールや高精度アンテナの需要が伸びるとの期待が高まり、華測導航や北斗星通といった衛星測位関連銘柄は 5 日から 6 日にかけて軒並み上昇している。

よかったらシェアしてね!
  • URLをコピーしました!
  • URLをコピーしました!

この記事を書いた人

中国ビジネスをワンストップでご支援しています。クララは20年以上にわたり日本と中国の間のビジネスを牽引している会社で、日中両国の実務経験と中国弁護士資格を有するコンサルタントの視点・知見・ネットワーク・実行力を生かして、お客様の課題解決と企業成長を強力に支援しています。

Webサイトはこちら
>>日本企業の「中国事業支援」で実績20年以上 | クララ

目次