中国のインターネット教育アプリ事情

目次

1. インターネット教育市場の規模

中国のインターネット教育市場が好調だ。2018 年第 1 四半期(1-3 月)の取引規模は前年同期比 48.9%増の 682 億元に上る。

特に 2017 年以降は投資家の注目を集めるようになり、今年第 1 四半期だけでも 1 月に「噠噠英語」がシリーズ C ラウンドで 1 億ドル、2 月に「作業盒子」がやはり C ラウンドで 1 億ドル、2 月末には「洋葱数学」が 1.2 億元超、3 月には「一起作業」が 2.5億ドルをそれぞれ調達することに成功している。

インターネット教育市場が急成長する背景には、国家戦略の後押しもある。教育部は2018 年 2 月に発表した「教育部 2018 工作要点」で、“教育情報化 2.0 行動計画”と題して情報技術による教育改革、教育リソースのシェアリング、インターネット教育アプリの普及促進等を推し進める方針を明らかにしている。

すでに人工知能と教育を組み合わせた応用研究も進んでおり、各種デジタル教材やカリキュラムの開発が行われているほか、学習進度や成績の分析も始まっている。

今後は伸び幅こそ縮小するものの、2020 年には取引規模が 4,293 億元に達するとの予測もある。市場の成長をけん引する大規模な投資は引き続き行われる見通しで、教育アプリや周辺サービスはいっそう細分化されて、様々なニーズに対応できるようになりそうだ。一方で、競争が激しくなり淘汰される企業が続出する懸念も高まっている。

2. 現在のユーザー数

現在インターネット教育市場の中心を担うのはスマートフォン用アプリで、なかでも幼児教育と小中学生向けの学習アプリが市場の 6 割を占める。外国語教育や職業教育のアプリは時期によってユーザー数が大きく変動することはないが、小中学生向けの学習アプリは期末試験のタイミングでアクティブユーザーが急増するという特徴がある。

またアプリ別では「作業幇」の人気が最も高く、ユーザー数は 6252.5 万人に上った。上位 2 つのアプリは、どちらも宿題の回答を検索する機能が備わっており特に人気が高い。また 5 位の「百詞斬」は英単語の暗記支援アプリとなっている。

ユーザーの居住都市によって、利用するアプリにばらつきが大きいこともわかる。上海や北京といった 1 級都市の子供たちは「一起作業」の生徒版を利用する割合が目立って高い。逆に 4 級都市やそれ以下に該当する地方の小規模都市や農村部に住む子供たちの間では「一起作業」を利用する割合は最も少なく、「互動作業」の利用が多い。

全体では、2~4 級都市に住む子供が教育アプリのメインユーザーとなっていることが分かる。これは、大都市の方が 1 人の教師に対する生徒の数が少なく、子供をとりまく教育環境が整っている上、両親が高学歴で子供の勉強を見てあげることができたり、経済的に裕福で塾や家庭教師を利用していたりする割合が高いため、これらのアプリを利用する必要性が低いことが考えられる。

3. 人気アプリ

● 作業幇 https://www.zybang.com

最もユーザー数が多い作業幇は、百度(Baidu)のインキュベーション施設から誕生したサービスで、2014 年 1 月にスタートした。2017年 8 月にはインターネット教育領域で過去最大規模となる 1.5 億ドルを C ラウンドで調達している。2015 年 9 月には中央電視台(CCTV)および教育部とパートナー契約を結んでいる。2016 年 7 月からはインターネットを通じて授業をライブ配信する「作業幇一課」が始まった。

メインユーザーは小、中、高校生で、あらゆる科目に対応している。主なサービスには、数学等の問題を写真に撮って送ると回答が送られてくる「拍照捜題」、ライブ配信授業の「作業幇一課」、練習問題を繰り返し解くことができる「同歩練習」、講師に 1 対1 で質問しながら学習できる「一対一輔導」、英作文の回答を検索することができる「作文捜索」、中国語と英語の相互翻訳機能「中英互訳」等がある。「拍照捜題」ではデータベースに 1.3 億件を越える問題が蓄積されており、写真を送ると即座に回答が届く。

「作文捜索」も 800 万件以上の英文がストックされているという。ほとんどの機能は無料で利用できるが、「一対一輔導」は有料となる。「同学圏」というユーザーコミュニティでは、漫画や小説、写真、アイドル等の様々なテーマのチャンネルが用意されている。

ユーザー数は 2017 年 11 月時点で累計 3 億人、月間アクティブユーザー数は 6,000万人を越えるとされる。

● 小猿捜題 http://www.yuansouti.com

こちらは小学生と中学生がメインターゲットで、「作業幇」と同様に問題の写真を送ると回答が届いたり、英作文の自動添削ができたりするサービスが無料で利用できる。有料のオンライン家庭教師サービスもあり、毎月 25 元か年額 198 元となっている。

また兄弟アプリが複数あり、「小猿題庫」では、全国の中学、高校の過去の入試問題を繰り返し練習できる。「小猿輔導」ではライブ配信授業を視聴することができ、すでにのべ 100 万人以上が利用しているという。授業は配信修了後にダウンロードして、無制限に繰り返し視聴することが可能だ。変わったところでは、子供の勉強を見てあげる親のためのアプリ「小猿口算」があり、同様に問題の写真を撮って送ると計算等の回答を確認することができる。

● 一起作業 http://www.17zuoye.com

サービス開始は 2011 年 10 月で、当初は小学生の英語と数学に特化していたが、2016 年 11 月に中高生の理系科目を中心とした教育アプリ「快楽学」を買収したことをきっかけに、現在は全科目を扱っている。前出の 2 つのアプリは宿題の答えを探す機能が目を引くが、こちらは自主学習用教材といった側面が強い。

2016 年時点で全国 31 の直轄市・省・自治区にある 8 万を越える学校で採用されており、登録ユーザー数は 2,300 万人以上、うち課金ユーザーが約 30 万人いるという。特に英語教材に定評があり、米カリフォルニア大学と共同で開発した発音練習システムの評価が高い。

生徒用アプリでは、自主学習として英語や数学の反復学習を行ったり、全国の入試問題にチャレンジしたり、教師からアプリを通じて出された宿題を解いたりすることができる。単独での利用はもちろん、保護者用アプリ、教師用アプリとの相互連携が可能で、保護者用アプリでは、子供の学習進度や宿題の状況を確認したり、学校での成績を確認したり、担任教師と直接連絡を取ったりすることも可能だ。教師用アプリでは、普段の授業の補助ツールとして使えるほか、アプリを通じて生徒に宿題を出したり、その回答状況を確認したりすることができる。

4. “デジタル子供時代”に賛否両論

インターネット教育の対象は幼児にまで広がっているが、スマートフォン、タブレット端末、パソコンの 3 つのデジタル機器に囲まれて育つ「デジタル子供時代」に警鐘を鳴らす向きもある。中国共産党の青年組織、共青団(共産主義青年団)の発表によると、0~5 歳の幼児のスマートフォン使用率は 80.4%に上る。幼少期には親のスマートフォンで「喜羊羊」(子供向けアニメ番組)を見て過ごし、少し大きくなると「切西瓜」(落ちてくる果物を画面スワイプで切るモバイルゲーム)に熱中するようになり、学校へ入ると宿題はパソコンやスマートフォンで回答を調べて済ませ、次第に遅くまでオンラインゲームで友人と遊ぶようになる、などと揶揄される。

「全国小中学生学習プレッシャー調査」の結果によれば、2000 年代生まれの子供のスマートフォンの利用時間は 1 日平均 2 時間15 分で、65%が勉強にも利用している。宿題の回答検索には 1 日平均 15 分を費やすといい、数学の宿題には中学生の 71.4%、高校生の 45.0%が回答検索を利用する。当然ながら親世代の 77%は回答検索に反対で、親がいる時にのみ使用させている家庭が 31%、完全に使用を禁止している家庭も 4%あった。

一方で、教育リソースや教師リソースが不足する河南、江西、広西、貴州、甘粛といった地域に住む子供たちにとっては、ライブ配信授業や家庭教師も利用できる教育アプリが新たな学習チャンスを生んでおり、その効果に大きな期待が寄せられている。

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この記事を書いた人

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