中国モバイルインターネット事情

目次

1. モバイルインターネット市場の概況

2014 年第 1 四半期(1-3 月)の中国の携帯電話契約数は 12.48 億件で、このうち 3G 契約は 4.3 億件だった。4G サービスはまだ始まったばかりなこともあり、具体的な契約数は明らかでないが、相当数残っている 2G 契約は 16 カ月連続で減少していることから、格安スマートフォンの登場で 3G あるいは 4G への切り替えが加速している様子が伺える。

中国では 2012 年ごろからスマートフォンの販売比率がフィーチャーフォンを上回るようになり、2013 年第 4 四半期(10-12 月)には携帯電話販売数の 9 割超をスマートフォンが占めた。モバイルインターネットの利用者も同時期から大きく伸び始め、2014 年末には約 8 億人、2016 年末には約 9.2 億人が利用すると予想される。

モバイルインターネット市場の規模は、2013 年末時点で前年に比べ約 50%のプラスとなる 2631.4 億元と予想。特にモバイルショッピングが市場の成長をけん引しており、2016 年には 8621 億元にまで膨らむと期待される。

2. モバイルインターネットの利用者像をつかむ

2013 年の調査によると、モバイルインターネット利用者の 60%が 30 歳以下の若者で、男性が 63%、女性が 37%だった。職業別では、工場労働者やサービス業に従事する人が全体の 25%、会社員が 23%、自由業・自営業者が 17%、政府関係者が 10%と大半が仕事を持っており、学生はわずか 20%に過ぎない。

月収で見ても学生の多くが該当する 1000 元以下が全体の 23%を占め、ちょうど大卒者の平均月収にあたる 2000-2999 元が 20%、3000-3999 元が 19%と続く(2013 年の麦可思の調査による。全国 18 都市が調査対象で 1 位は上海で平均 3859 元、最下位の河南省鄭州は約 2306 元)。

居住地別では、北京や上海といった直轄市に住む利用者は全体の 13%で、省都や比較的規模の大きな都市(地級市)に住む人が合わせて 52%、農村部に住む人は 14%にとどまる。モバイルインターネットはすでに地方都市にまで浸透していることがわかる。

通信キャリア別にみると、モバイルインターネットの利用者の 61%が中国移動(チャイナモバイル)を使っており、2009 年から iPhone を販売している中国聯通(チャイナユニコム)が 24%、同じく 2012 年から販売を始めている中国電信(チャイナテレコム)が15%と続く(中国移動は 2014 年 1 月に iPhone の販売を始めたばかり)。

スマートフォンの購入価格は 2000 元以下が 48%を占めている。端末は値下がりが続いているが、それでも 1 カ月分の月収にあたる高価なものであることがわかる。

またよく利用するモバイルインターネット向けサービスでは、「微信(WeChat)」や「モバイル QQ」といったインスタントメッセージ(IM)を全体の 81.8%が利用している。続いて音楽関連サービスの利用も 56.1%と高く、ドラマやアニメ、各種動画を見ている人も全体の 3 割を超える 33.8%となっている。一方、ネットショッピングをする人は13.3%とまだ少ないが、大手ネットショッピングサイトは続々とモバイル向けサイトを開設し、IM やネットバンキングサービスと提携して集客に力を入れている。モバイルによる決済環境も整いつつあることから、これから一気に利用者が増えそうだ。

これらのデータから、都市部で会社員になったばかりの若者や地方都市で工場労働者として働く若者が、スマートフォンで手軽にインターネットを楽しむ様子が伺える。その手にあるのは比較的安価な中国ブランドのスマートフォンで、いつも「QQ」や「微信(WeChat)」で友人と連絡を取り合い、時にはモバイルゲームで時間をつぶしたり、IM 内の広告を見てネットショッピングサイトをチェックしたりする生活が浮かび上がる。

3. モバイル動画視聴サービス市場

中国の動画視聴サービス市場は、大手サイトを中心に正規版権作品の取り扱いが増えており、定額制あるいは 1 作品ごとに購入するスタイルが一般的になってきた。しかし、個人が勝手にアニメなどをアップロードしている海賊版サイトも未だ無数に存在しており、無料で視聴できるこれら違法サイトの利用もまだ多い。

大手動画サイトについて広告規模をみると、2013 年の広告総収入は 122 億元で、前年同期比 38.7%の増加となった。視聴者に人気があるのは映画やドラマで、特にドラマはファッションなど関連商品の広告出稿がしやすいため、広告収入の大半はドラマによるものだという。逆に若者に人気のあるアニメは、ドラマに比べて関連商品のバリエーションが狭く広告が出稿しにくいことから、版権費用の回収すらままならないと聞く。

2013 年のモバイルインターネット利用者に人気の動画視聴サイトは、男女いずれの年齢層でも優酷(youku)が運営する優酷視頻が一番となっている。優酷は 2013 年春にライバルの土豆を買収して、一気に利用者を拡大した。同社によると、現時点では利用者の 90%が Wi-Fi 環境を利用しているが、スマートフォンの大画面化、4G のスタート、通信料金の値下がりを追い風に、モバイル動画視聴サービスの利用者は増えると予想する。また 2014 年 4 月には EC 大手の阿里巴巴(アリババ)が同社に 12 億 2000 万ドルを出資しており、動画視聴サービスとEC の連携による新たな展開に注目が集まっている。

動画視聴サービスの利用者は、男性が 61%、女性が 39%となっており、30 歳以下の若者が全体の 61%を占める(24 歳以下 31%、25-30 歳 30%、31-35 歳 18%、36 歳以上21%)。また大学院以上の学歴を持つ利用者はわずか 1%だが、高校・職業訓練学校卒業程度が 35%、中学卒業程度が 23%と過半数を占めている。

職業別の比率はモバイルインターネット利用者の分布とほぼ同じで、学生は 20%しかおらず、工場労働者やサービス業従事者、会社員がそれぞれ 25%と 22%を占める。月収から見ても 3000 元以下の層が過半数を占めており、学生を除けば利用者の多くは比較的低賃金で働く若者が中心となっていると言えそうだ。

4. モバイルゲーム市場

スマートフォン向けゲームを中心としたモバイルゲームの市場規模は 2013 年に入って大きく伸び始めており、2016 年には現在の 3.5 倍にまで拡大することが見込まれる。

文化部のまとめでは、2013 年末時点で通信のいらないネイティブアプリ型ゲームの利用者数は 1.7 億人で前年に比べ 95.1%増加。一方、通信が必要なモバイルオンラインゲームの利用者数は 1.2 億人で、前年に比べ 349.4%増加している。スマートフォンが普及してゲームユーザーの総数が増えているのはもちろん、ゲーム制作、パブリッシャー、決済サービス、アプリストア、広告という一連の産業チェーンが確立したことも市場拡大を加速させている。

モバイルゲーム利用者は北京や上海のほか広東省、江蘇省、浙江省、山東省といった沿岸部に全体の 70%余りが集中している。男女比は 63.3%と 36.7%で、40 歳以下が全体の 90%以上を占め、特に 20-29 歳が 48.2%を占めている(2013 年 6 月、CNNIC 調べ)。

利用回数は「ほぼ毎日」が全体の 40.7%、「週に 1 回以上」が 40.9%となっている。しかし 1 回あたりの平均利用時間を見ると、日本のように通勤通学時にちょっと遊ぶというよりは、自宅や職場のような Wi-Fi が使える場所でじっくり遊ぶ人が多いようだ。

また Android 向けゲームを扱うプラットフォームでは、「QQ」や「微信(WeChat)」を運営する騰訊が膨大な会員数を武器に約 20%ものシェアを持つ。2 位以降に僅差で続く中国移動と中国電信の「愛遊戯」も通信キャリアとして多くの契約者を抱えている。

最近ではアニメやドラマ、文学作品などがゲーム市場に注目している。日系では 2013年 1 月には騰訊が集英社と提携して、「NARUTO -ナルト-」、「ONE PIECE」、「ドラゴンボール」など 11 作品の電子版発行権を獲得しており、今後も同様の動きが増えることが予想される。

5. モバイルショッピング市場

大手ECサイトが次の利益源として注力するモバイルショッピングは、微信などのコミュニケーションツールや動画視聴サイトなどから直接ショッピングサイトに誘導する手法が確立したことに加え、モバイル向けの決済手段が整ったことで、爆発的に市場が拡大すると期待されている。

淘宝網のモバイル版

2013 年第 3 四半期(7-9 月)のモバイルショッピングの市場規模は 341.2 億元で、前年同期比では 104%もの大幅な成長となった。大手 EC サイトは、季節ごとのイベントにあわせてモバイルサイト限定のキャンペーンやタイムセールを展開しており、まずはモバイルショッピングを体験してもらうことに重点を置いているようだ。

またよく利用するモバイル版のネットショッピングサイトは、PC 向けでも圧倒的な人気を誇る淘宝網(Taobao)が、男女ともにいずれの年代でも 1 位となった。全体的に男女差や年代による目立った差は見られず、PC 向け EC サイトとして実力のある大手サイトがずらりと並んだ。一方、売上からみたシェアは、淘宝網の「淘宝無線」が全体の79.1%を占めており一人勝ちの状況となっている。

利用者は男性が 59%、女性が 41%となっており、モバイルインターネットの利用者全体に比べて女性の利用が多く、30 歳以下の若者が全体の 60%を占めている(24 歳以下 29%、25-30 歳 31%、31-35 歳 18%、36 歳以上 22%)。職業別の比率をみると、学生や工場労働者・サービス業従事者がやや少ない一方、会社員や自由業・自営業者がそれぞれ 25%と 20%と多くなっている。

居住地別では北京や上海のような直轄市よりも、省都に住む人の割合が高くなっており、地方で働く若者が地元では手に入りにくい商品を購入したり、地元の店よりもより安く購入するためにモバイルショッピングを利用していることが伺える。

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この記事を書いた人

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