1. EC 大手の蘇寧易購が万達百貨を買収
蘇寧易購の張近東董事長は 2019 年 2 月 12日に開かれた新春祝賀会の席上で、万達百貨有限公司の所有する百貨店 37 店舗を買収したと発表した。具体的な買収金額は明らかになっていない。
今後は、蘇寧易購が得意とするビッグデータや人工知能(AI)等の技術を導入して、百貨店領域のデジタル化改革を進めるという。
蘇寧易購は数年前から新業態の模索を続けており、「スマートリテール領域におけるエコシステムの構築」に度々言及してきた。EC プラットフォーム「蘇寧易購(Suning.com)」の運営に加えて、この 1~2 年の間に蘇寧版無印良品と言われるライフスタイルショップ「蘇寧極物」、生鮮食品を扱うスーパーの「蘇鮮生(SuFresh)」、コンビニの「蘇寧小店」といった実店舗を全国各地に次々とオープンし、小規模小売事業者向けのサービスソリューション「蘇寧零售雲」の提供も始めている。
2019 年はオンライン(EC)とオフライン(実店舗)を統合して新しい顧客体験を提供しようという、いわゆる「ニューリテール」戦略が本格化するといい、今年の事業計画では「大店戦略、小店戦略、専門店戦略」の 3 つを柱にすると宣言している。今回の買収は大店戦略の一環にあたり、グループの時尚百貨と万達百貨を統合して新たに蘇寧時尚百貨集団を立ち上げる計画だ。
2. 万達百貨とは
万達百貨有限公司は、大型ショッピングモール「万達広場」などで知られる万達集団(WANDAGROUP)に属している。
中国最大の百貨店チェーンの一つで、2007 年に開業。最盛期には全国に 100 店舗以上を展開していたが、2014 年頃から多くの店舗が赤字に陥るようになり、2015 年だけで 50 店舗余りを閉鎖した。2014 年の売上は前年比 65.3%増の 256 億元だったが、2016 年には 178.2 億元まで落ち込み、売却のうわさも出ていたようだ。
現在は直轄市や省都といった大都市を中心に 37 店舗を運営し、会員数は 400 万人を越えるという。直近 2 年ほどは業績も回復し、純利益は前年比 60%増と好調だ。
なお万達と蘇寧は 2015 年から協力関係を結んでおり、グループ内の万達商業が運営する巨大複合商業施設「万達広場」の複数の店舗に蘇寧が出店している。また 2018 年1 月には、騰訊(Tencent)など数社と合同で万達商業の株式約 14%を 340 億元で取得した。このうち蘇寧は 95 億元を出資し、持株比率は 3.91%となっている。