要約と結論
ライブコマースは、ECとライブ配信を融合した販売手法として中国で急成長し、市場規模は短期間で爆発的に拡大した。一方で、誇張広告や不正取引などの問題も顕在化しており、業界ルールの整備や政府による監督強化が進んでいる。今後は5Gや新技術の普及によりさらなる進化・拡大が見込まれる市場である。
中国ライブコマース市場の現状
ライブコマースは、ECサイトにライブ配信を組み合わせた新しい販売手法だ。
視聴者は商品紹介のライブ動画を見ながら購入でき、チャットを通じて配信者や他の視聴者とリアルタイムで交流できる点が特徴で、テレビショッピングとは異なる双方向性を持つ。中国では2016年に登場し、2019年に爆発的に普及、さらに2020年の新型コロナウイルスによる外出制限を背景に急成長した。
中国商業連合会によると、2020年第1四半期だけでライブ配信回数は400万回以上に達している。また、2020年の市場規模は9,000億元(約13兆円超)規模に到達する見込みとされている。

主要プラットフォームは以下の通りで、EC大手・動画プラットフォームのほぼすべてが参入する巨大市場へと発展している。
- 淘宝直播(Taobao Live):約2,500億元(市場シェア約58%)
- 快手(Kuaishou):約1,500億元
- 抖音(中国版TikTok):約400億元

ライブコマースの問題点
一方、市場の急拡大とともに、さまざまな問題も顕在化している。
中国消費者協会の「618消費者クレーム調査報告」によると、2020年6月1日~20日のクレーム件数は約648万件のうちライブコマース関連は、11万2,384件にのぼり、1日平均約5,600件ものライブコマース関連のクレームが寄せられた。
ライブコマース関連のクレーム例:
- 誇張表現・虚偽宣伝
- 「最安値」と称して実際は他ECより高いケース
- 開示義務履行が不十分
- ショップの経営者の経営許可証などの開示義務履行が不十分
- 商品の品質問題
- 品質が悪い
- 偽物である
- 売上実績の改ざん
- アフターサービスが悪い
誇張表現・虚偽宣伝のクレームは最も多かった。例えば、有名なインフルエンサーである羅永浩氏が、ライブコマースで「インターネット上で最も安い」とアピールして販売したテーブルランプは279元、ボイスレコーダーは2,448元だったが、EC サイトではこれより安い269元と2,398元で売られていた。
自作自演の売上操作の場合、インフルエンサーがショップから前払いで受け取った報酬を使って、自ら商品を購入して大量に売れたように見せかけ、契約した販売数に達したら、商品は返品するという悪質なものになるので、結果的にショップ側は大きな損失を負うことになる。

ライブコマースに関する管理強化
こうした問題を受け、業界ルールおよび行政監督が強化されている。2020年7月1日には、国広告協会が発表した「ライブコマース営業行為規範」が正式に施行された。

同規範の施行により、下記のような事柄が明確になった。
- 配信者の定義を明確化
- 適切な言動・品質保証の義務
- プラットフォーム外取引の禁止
- 売上データの真実性確保
- 紹介商品と実際の商品一致の義務
また、同規範では 下記のようなEC プラットフォームの管理責任についても明確にしている。
- 出店者・配信者の資格審査
- ライブ配信の監視責任
- 契約関係の管理・監督
ただし、これらは業界ルールのため法的強制力は限定的であり、
現在は以下の法律と組み合わせた運用が重視されている:
- 広告法
- 電子商務法
- 消費者権益保護法
また、国家インターネット情報弁公室など8部門が合同で監督強化を実施中である。
今後のトレンド
◆5Gユーザーの増加により、さらなる成長が見込まれる
2019年に商用化された5Gにより、
- 超低遅延
- 高速通信
が可能となり、
- VR/ARライブ配信
- 8K高画質配信
など、体験型コマースへの進化が期待されている。中国情報通信研究院によると、2025年までに5Gユーザーは約8億人に達する見込みであり、市場拡大の大きな後押しとなる。
◆取扱商品がさらに多様化する
当初は化粧品中心だったが、現在は大きく拡大し、日用品・食品、家電、不動産、自動車まで、取り扱い商品の種類は劇的に増えている。2020年2月には、トップインフルエンサーの薇婭(viya)が ロケットを 4,000 万元で販売し、「売れない商品はない」と言われるレベルまで拡張しており、今後も取扱商品は多様化するであろう。

◆ビジネスモデルが進化する
ライブコマース市場の急拡大や競争の激化、さらに規制強化の進展といった背景により、従来のインフルエンサー依存型の販売モデルから、企業自らが配信を行う「自社運営型」への移行や、単なる販売にとどまらないブランド構築・ファンコミュニティ形成を重視したビジネスモデルへの転換が見込まれる。さらに、エンターテインメント性や双方向コミュニケーションを活かした「体験型コマース」としての進化も進み、ライブコマースは販売チャネルから顧客関係構築の重要なプラットフォームへと発展していくと考えられる。
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