法人名のルールを定めた企業名称登記管理規定とは

本稿では、企業の新規設立等で新しく法人名を決める際に確認が必要な企業名称登記管理規定について重要なポイントを整理した。法人登記にまつわる法令は複数ある事から、本規定やこれに関連する細則を含めて慎重に対応する必要がある。

1. 登記できる企業名

企業が登記できる企業名称は1つのみ。(4条)

企業名称には漢字を用いる。(5条)

企業名称は、「行政区画名+商号+産業または経営上の特徴+組織形態」の形をとる。省、自治区、直轄市を跨いで経営する企業の名称は、行政区画名を含まなくてもよい。産業を跨いで総合的な経営を行う企業は、産業または経営上の特徴を含まなくてもよい。(6条)

企業名称中の行政区画名には、企業の所在地の県レベル以上の地方行政区画名を用いる。開発区、墾区等の区域名を使用する場合、行政区画名に続けて用い、単独では使用できない。(7条)

企業名称中の商号は2文字以上の漢字を用いる。(8条)

企業名称中の業種または経営上の特徴は、企業の主力事業と国民経済業種分類基準に基づいて決める。国民経済業種分類基準に規定されていない場合は、業種の商習慣や専門文献などを参照して表してもよい。(9条)

企業は当該組織構成又は責任形式に基づいて、法に従い企業名称に組織形態を明示する。(10条)

企業名称について、次の情状があってはならない。(11条)

  • 国の尊厳または利益を損なう。
  • 社会の公共利益を損なうまたは社会の公共秩序を妨げる。
  • 政党、党・政府・軍機関、集団組織の名称及び略称、特定名称、部隊番号を使用する。
  • 外国(地域)、国際組織の名称及びその通用略称、特定名称を使用する。
  • わいせつ、ポルノ、賭博、迷信、テロ、暴力の内容を含む。
  • 民族、人種、宗教、性差別の内容を含む。
  • 公序良俗に反するまたはその他の悪影響を与える恐れがある。
  • 大衆を欺き、誤解を招く恐れがある。
  • 法律、行政法規及び国が禁止したその他の状況。

企業名称のはじめに、中国、中華、中央、全国、国家等の語句を用いる場合は、関連する規定に照らして厳格に審査し、国務院に報告して承認を得る。企業名称の中に中国、中華、全国、国家等の語句を用いる場合、当該語句は当該産業に限定される。外国投資家の商号を使用する外商独資または持ち株の外商投資企業は、企業名称の中に「(中国)」の語句を含めてもよい。(12条)

企業の分社・支社の名称のはじめには当該所属企業の名称を用い、かつ「分公司」、「分廠」、「分店」等の語句を用いる。海外企業の分社・支社は、さらに名称中に当該企業の国籍および責任形式を明示する。(13条)

企業集団名称は、当該持ち株会社名の行政区域、商号、産業または経営上の特徴と一致しなければならない。持ち株会社は当該名称の組織形態の前に「集団」あるいは「(集団)」の語句を使用してもよい。(14条)

資本関係があるか、又は授権を受けている企業は、当該企業名称に相手側企業名あるいはその他の法人、非法人組織の名称を含めてもよい。(15条)

2.  登記手続き

企業名称は、申請者による自主申告とする。申請者は、企業名称申告システムを通じて、または企業登記機関のサービス窓口で関連情報や資料を提出し、使用予定の企業名称を照会、比較した上で、本規定の条件を満たす企業名称を選択することができる。企業名称が類似していることにより他の企業の合法的権益を損なう場合、法的責任を負うことを承諾しなければならない。(16条)

企業登記機関は、企業名称申告システムを通じて提出された企業名称を2カ月間保留する。企業の設立または予定する事業に当局の批准が必要である場合、当該企業名称を1年間保留する。申請者は保留期間が満期になるまでに企業登記を完了しなければならない。(18条)

企業名称を譲渡あるいは他人に使用を許可する場合、関連企業は法に基づき国家企業信用情報公示システムを通じて社会に公開しなければならない。(19条)

3. 企業名の類似によるトラブル対応

他社の企業名称が自社の企業名称の合法的権益を侵害していると判断した場合、裁判所に起訴する、又は侵害の疑いがある企業の登記を行った企業登記機関に処理を求めることができる。(21条)

裁判所もしくは企業登記機関が、法に基づいて企業名称を使用停止とする判断を下した場合、企業は裁判所から発効済みの法律文書を受け取った日、または企業登記機関の処理決定を受けた日から30日内に企業名称の変更登記を行わなければならない。(23条)

見解とポイント

本規定は国務院が2021年1月19日に正式発表したもので、3月1日より施行されている。

1991年に公布された旧規定では、企業名称の登記は当局による事前認可制となっていた。しかし経済成長に伴って企業の新規設立が膨大な数になると、認可にかかる要件確認等のプロセスが煩雑になり、認可が出るまでに時間がかかるようになっていた。また企業数が増えるに従い、企業名が他社と類似しているか否かの判断を当局側で行うことが難しくなり、類似した企業名を発端とした紛争処理に法的根拠がないことも問題視されていた。

今回の改正では企業名称の登記プロセスを全面的に見直し、これまでの事前認可制から企業が自主的に照会して登記を申告する自主申告制へと改めている。使用可能な語句、使用を禁止する語句についても明確に示され、インターネットを通じた登記手続きも可能となった。

これまでは企業名の事前認可に10営業日ほどかかっていたが、企業名称申告システムを通じて自ら手続きを行えば、その場ですぐに類似企業名の有無を確認できることから、登記にかかる時間的、費用的コストが大きく削減される。一方で、企業名称の保留期間は従来の1年から2カ月へと大幅に短縮されており、さらに他社の企業名と類似していた場合に発生する法律責任は、全て申請者が負うことが明確に定められたことには留意したい。

中国語原文 企业名称登记管理规定 http://www.gov.cn/zhengce/content/2021-01/19/content_5581091.htm


本レポートはクララオンラインが発行する「中国法令アラート 2021年 2 月号」の内容を一部抜粋、編集したものです。「中国法令アラート」では、最新の法令・制度変更に関する詳細および予想される日系企業への影響、実務で得た動向変化に関する情報等を毎月 PDF でお届けしています。

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この記事を書いた人

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