韓国のモバイルゲーム市場の最新トレンド

1. 成長と変化を遂げてきた韓国モバイルゲーム市場

1.1 2015 年も韓国モバイルゲームマーケットの成長は続く

2011 年から成長をつづけてきた韓国モバイルゲーム市場は、2014 年に 2.4 兆ウォン(約 2,500 億円)もの売上を達成し、2015 年にはピークを迎えることが予想されている。韓国アドネットワーク大手、IGAWorks のデータによると、韓国 Google play ゲームカテゴリ(アプリ内課金)の売上は、2014 年 1-5 月が 5,912 億ウォン(約 620 億円)だったのに対し、2015 年 1-5 月は 8,578 億ウォン(約 900 億円)を記録し、前年同期に比べ45%も成長していることが分かった。学校の夏休みなど季節的な要因はあるが、毎月約 1,700 億ウォン(約 178 億円)の売上がゲームカテゴリから生まれている。

1.2 カカオのゲームプラットフォーム(「카카오 게임하기」)は一転衰退へ

モバイルプラットフォームの強者として君臨してきた「カカオ」のゲームプラットフォーム(「카카오 게임하기」)は、2012 年 7 月にオープンして以来、ピーク時には利用者数が 3196 万人を超える勢いを見せたものの、2014 年 6 月には約 1333 万人、2015年 1 月には 1073 万人と減少が著しい。これは、SNS「カカオトーク」のユーザーが、カカオゲームプラットフォームを利用せず、直接 Google play や App Store からゲームをダウンロードするようになったためだ。また、ゲームを配信する側からしても、カカオに対しグロスレベニューの21%もの手数料を支払うメリットを感じなくなっている。

例えば 1 年間のマーケティング費用だけで 200 億ウォン~300 億ウォン(21 億円~31 億円)を投じているという Supercell の「Crash of Clans」や、リリース 5 日目に Googleplay 売上ランキング 1 位を獲得した Netmarble Games の「RAVEN for Naver」は、いずれもカカオゲームプラットフォームにはリリースせず、独自のマーケティングパワーを駆使して自社タイトルの人気獲得に成功している。しかし、中小デベロッパーのカカオゲームプラットフォームへの依存度はまだ高く、固定手数料の料率引き下げを求める業界に対してカカオ側がどのように対応するか、その動向が注目される。

「Clash of Clans」の屋外広告 有名俳優を起用した「RAVEN with Naver」のTV CF

1.3 主要ゲーム会社の 2014 年実績

2014 年の韓国ゲーム市場を振り返ってみると、いつになく大変な局面を迎えた時期であった。オンラインゲーム市場は下支えがなく成長の勢いが鈍化。一方のモバイルゲーム市場では、依然として韓国産タイトルが優勢なものの、海外製ゲームタイトルも加わってし烈な競争が繰り広げられた。

売上順位においては、Nexon が前年に続き 1 位を守り、NC soft や Netmarble Gamesが猛追撃する構図となった。売上の上位を占めるのは大手オンラインゲーム会社だが、視線を少し下げると、モバイルゲーム会社の躍進が目立つ。Com2uS と Gamevil は、2014 年になって初めて 1000 億ウォン(約 105 億円)を超える売上を記録し、SundayTozは、モバイルゲームスタートアップ企業としては初めてトップ 10 にランクインした。

また営業利益額でみると、伸び率トップは創業 18 年目の Com2uS で、「サマナーズウォー:Sky Arena」や「釣りオン!」など海外で人気を博したタイトルが貢献し前年比1214%増となった。2 位は同 15 年目の WEBZEN で、同社の PC 向け MMORPG「MuOnline」の IP を用いて中国市場向けに開発したウェブブラウザゲーム「大天使之剣」とモバイルゲーム「全民奇迹」の売上に支えられ、営業利益は前年比 426%増加した。

両社を成長に導いたのは、韓国国内ではなく海外での収益で、特に Com2uS は海外で発生した売上が全体の 70%以上を占めている。モバイルゲーム会社の収益も好調に伸びており、SundayToz と DEVSISTERS はそれぞれ前年比で 253%と 38%の伸びを見せ、3 位と 5 位にランクインした。

2. 韓国モバイルゲームの最新トレンド

2.1 依然として国産ゲームが優勢な韓国マーケットの特殊性

2015 年 8 月 10 日時点の韓国 Google play の売上ランキングをみると、1 位の「레이븐(Raven) with Naver」、2 位の「세븐나이츠(Seven Knights) for Kakao」、4 位の「모두의 마블(ゲットリッチ) for Kakao」はいずれも Netmarble Games が手掛けたタイトルだ。このほか「차구차구(チャグチャグ) for Kakao」、「(드래곤 가드 S)Dragon GuardS for Kakao」など、他にも Netmarble Games が手掛けたタイトルは数多くある。

ここで注目すべきは、これらのゲームのジャンルがすべて異なる点だ。日本で「ゲットリッチ」で知られる「모두의 마블」はカジュアルボードゲームであり、「차구차구(チャグチャグ)for Kakao」はサッカーゲーム、「마구마구(魔球魔球)for Kakao」は野球ゲーム、「다함께 차차차 2(みんなで車車車 2)」はレーシングゲームだ。

このように一つのゲーム会社が多様なジャンルのゲームをリリースし、いずれもが上位にランクインしていることの意味は大きい。最近ではゲームの過剰供給でユーザーが簡単にブランドスイッチするようになっているが、同社は国内マーケットの変化に対応したポートフォリオ戦略で影響を最小限に抑えることに成功している。

また、新作タイトルの上位入りが極めて難しい中、同社の「레이븐(Raven)with Naver」は、2014 年 9 月以降 1 位を守り続けてきた Supercell の「Crash of Clans」の牙城を破り、売上ランキングで 1 位を獲得した。なお、リリースから 1 年以上サービスを継続している「세븐나이츠(Seven Knights)for Kakao」、「모두의 마블(ゲットリッチ) for Kakao」、「몬스터 길들이기(タッチモンスター)for Kakao」等のタイトルも人気を維持している。

2.2 マーケティングミックスの変化

ゲームマーケットにリリースされるタイトルの数が増えるにつれ、自社タイトルのプレゼンスを高めるためのマーケティングが重要になっており、その手法やチャネルも多様化している。

2015 年 3 月にソウルで開催された「GAME TECH CONFERENCE 2015」においてIGAWorks が発表した資料によると、2014 年は平均で 2~3 億ウォン(約 2100~3100万円)の費用を使ってメディアミックスによる最適化を図っていたが、2015 年の上半期からは、従来の CPI 広告、ディスプレイ広告に加え、動画広告を活用する事例が増えているという。

大手ゲーム会社は、TV CF を活用し自社や自社タイトルのブランディングの確立に力を入れている状況だ。多くの場合、モバイルゲーム 1 タイトルにつき 5 億ウォン(約5200 万円)以上の資金をあてており、TV CF を展開する一部のゲームタイトルではマーケティング予算が 20~30 億ウォン(約 2.1~3.1 億円)を超えると言われている。

IGAWorks は、オーガニックユーザーの流入による収益効果が最大となるのはダウンロード数で 2~10 位以内であり、他のマーケティングツールやチャネルとの相乗効果を狙って、ライバルタイトルの状況、ゲームのジャンル(特徴)、季節的な要因などを踏まえた効率的なマーケティング戦略を立てることが欠かせないとまとめている。

2.3 中国産ゲームの大量流入とユーザー嗜好

2015 年上半期の韓国マーケットでは中国産モバイルゲームが良い成績をあげている。2015 年 8 月 10日の Google play ランキングによると、売上 TOP60の 3 位から 52 位にかけて中国産ゲームが 8 タイトルランクインしている。

ほとんどは 2015 年にリリースされたタイトルで、60 位から外れたタイトルを含めると 2015 年上半期は中国産ゲームが韓国で旋風を巻き起こしたといえる。一部の中国産ゲームについては、大手パブリッシャー同士で競合したためにライセンスインにかかる費用が跳ね上がったり、「뮤오리진(Mu Origin)」のように韓国のオンラインゲーム IP を用いて中国で開発されたゲームが韓国に逆輸入される現象も起きている。

特に最近 1-2 年の間に、中国資本が韓国の中小デベロッパーへの参加を表明したり、中国企業と韓国のゲーム会社がライセンス契約を結ぶケースが増えており、新たなジャンルのゲームと中国特有のマネタイズモデルで韓国ユーザーの心をつかもうとしている。

「Netmarble Games」が今年3四半期に韓国サービス予定の中国産FPS「全民突击」

2.4 モバイルゲームでもハードコア時代が幕開け

カカオゲームプラットフォームからの脱却に成功した Netmarble Games の「RAVENfor Naver」が 1000 万ダウンロードに満たない状態で Google play 売上ランキング 1 位を獲得したのは、ARPU(ユーザー1 人当たりの売上/Average Revenue Per User)が他のゲームに比べ高いためで、その売上は 1 日あたり平均 5~6 億ウォン(約 5200~6300 万円)に上るという。「Raven for Naver」の成功で、RPG など収益性の高いハードコアゲームは、もはやカカオのようなメッセンジャー機能に依存しなくてもよいとの意見も出ている。

2015 年 8 月 10 日時点の Google play 売上トップ 10 をみると、RPG ゲームが 6 タイトルもランクインしている。韓国モバイルゲームマーケットの売上全体の 80%ほどがRPG ゲームによるものだとの推測もあながち間違ってはいないようだ。

特にモバイルデバイスのスペックが向上していることもあり、従来のミッドコアタイトルのライフサイクルが短くになるにつれ、ハードコア RPG ゲームの開発を急ぐデベロッパーが目立つ。

下記は 2015 年の夏から秋にかけて初お披露目となる予定のハードコア RPG ゲームである。ミッドコアジャンルの RPG でよくみられた「自動プレイ機能」を用いたいわゆる「見るだけのゲーム」ではなく、ユーザーがキャラクターを操作したり、タッチすることよってプレイを進める方式をとっている。

さらにリアルタイム対戦やパーティープレイといった遊び方をミックスし、プレイヤー間での課金による勝負だけではなく、操作や戦略が勝敗を左右するところが、ゲームファンの興味を引き付ける要素となっている。またハードコア RPG ゲームと相性がよいタブレット端末の販売台数は、2015 年以降に 1 億台まで増えると言われており、本格的なハードコアジャンルのモバイルゲームの時代が、ついに幕を開けた。

「Fincon」の「Angel Stone」(3D Action RGP) 「Nexon」の「DURANGO」(オープンワルードMMORPG)

「Super Evil Megacorp」の「VAIN GLORY」(Mobile AOS) 「Dragonfly」「4:33」の共同プロジェクト「Special Force」(Mobile FPS)

3. 韓国モバイルゲームマーケットの展望

3.1 海外デベロッパーの協業(Self-Publishing)による韓国進出

海外のデベロッパー、特に欧米圏のゲーム会社は、アジアマーケットへの進出に苦戦しがちだ。特に韓国マーケットは、ユーザー全般が長い間ゲームに親しんでいるためゲームの完成度に対する基準が高く、コンテンツを消費するスピードも非常に早いことから、進出が難しいと受け止められている。

例えば英 Space Ape Games は日本で人気の「サムライ大合戦」を韓国でリリースし、苦杯を喫した経験をもつ。同社はその後、新作の「Rival Kingdoms」で韓国マーケットに再挑戦する際、有力なパブリッシャーとは手を組まず、「セルフパブリッシング」という新しいビジネスモデルを手掛けるスタートアップ企業と協業することを選択した。

セルフパブリッシングモデルで韓国進出を果たした
イギリス「Space Ape Games」の「Rival Kingdoms」

「セルフパブリッシング」は、ローカライズ・カルチャライズ、マーケティング、サービス運用、QA に至るすべてのサービスを提供するもので、海外ゲームの韓国マーケットへのランディングをサポートするトータルソリューションだ。従来のようにライセンスを受け、全てのサービスを現地のパブリッシャー名義で行うパブリッシングモデルとは異なり、サービスは海外のデベロッパーの名義で行われる。

結果として「Rival Kingdoms」は、韓国の App Store ダウンロードランキングで TOP5にランクインするなど、海外製ゲームとして大きな成果を上げた。海外、とりわけ欧米のデベロッパーが大規模なマーケティングを行わずとも、高いコストパフォーマンスを出すことができるセルフパブリッシングモデルに期待が寄せられている。

3.2 成熟市場だからこそ IP(知的財産)の活用、そして知的財産権の保護

韓国では人気 PC オンラインゲーム「Mu Online」をモチーフにした WEBZEN の「Muorigin」(8 月 10 日現在、韓 Google play 売上 3 位)やコミック漫画をモバイルターン制RPG として再現した YD Online の「God of Highschool」(同 9 位)といった人気 IP を用いたゲームが期待以上の成果を上げている。2015 年 8 月以降には、日本のコーエイテクモゲームスの「大航海時代 5」、韓国をはじめ 12 カ国で人気を博したオンラインゲーム「十二之天」を原作にした「十二之天 S」、全世界で 2,000 万もの会員を保有するオンラインゲーム「Grand Chase」の IP を活用した「Grand Chase M」などがリリースを控えており、人気 IP を使った新作ゲームにスポットライトが当てられている。

コミック漫画の原作をベースにした「YD Online」の「God of Highshcool」「Koei Techmo Games」の「大航海時代5」

海外製ゲームでは、すでにスクウェア・エニックスの「FF XIV」が ActozSoft によって PC オンラインゲームとしてリリースされており、2016 年には「FF XI」が Nexon との共同開発によってモバイル向けの MMORPG としてリリースされる予定だ。その他Blizzard の「Hearthstone」なども韓国マーケットへのローンチに成功している。

「Nexon」との共同開発により来年MMORPGモバイルとして初披露する予定の「FINAL FANTASY XI」「Blizzard」の「Warcraft」の世界観とIPを用いたモバイルTCG「Hearthstone」

人気 IP を使ったゲームの開発や人気 PC ゲームのモバイルへの移植は、成熟しているマーケットにおいてスタートラインから優位に立つための戦略だ。しかし、人気 IP を使ったゲームは海賊版や模倣のリスクが付きまとう。これは 2015 年 3 月に BlizzardEntertainment が Lilith Games のモバイルゲーム「刀塔伝奇」で用いられたキャラクターやシーンが自社の「War craft」及び「World of Warcraft」と酷似しているとして、台北の裁判所に対し著作権及び商標権違反の訴えを起こしたケースでも見て取れよう。

「Blizzard」の「World War Craft」キャラクター”Sylvanas”「Lilith Games」の「刀塔传奇」キャラクター”小黑”

知的財産権は目に見えないものだからこそ、国境を越えまねされやすい。グローバル展開を念頭においている企業であれば、自国ではもちろん、進出先でもその国特有の事情や知的財産権の保護手段を事前に調査し、いざというときには法的手段を直ちに講じられるようにしておくことが重要だ。

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