開催まで半年に迫る北京冬季オリンピック

ついに東京オリンピックの開幕を迎えるが、同時に北京冬季オリンピック(北京2022)の開催まで200日を切った。北京は2008年に夏季オリンピックが開催されており、同じ都市が夏と冬の両方のオリンピックを開催するのは史上初となる。

北京冬季オリンピックの開催期間は2022年2月4日から2月20日の16日間で、会場は北京、延慶、張家口の3カ所となっている。なかでも北京エリアでは、2008年の北京夏季オリンピックで使用された国家体育場(愛称は鳥の巣)、国家水泳センター、国家体育館などが再度使用される計画となっている。

北京冬季オリンピックは開催種目も史上最多で、7大競技で合わせて109種目が予定されている。中国はこれまで国内に競技施設が無いことなどを理由に、冬季五輪では30種目ほどにしか参加していなかった。しかし北京での開催が決定したことから、国家体育総局は全ての競技に参加するべく強化チームを結成。現時点では96種目への参加が決まっており、残り13種目についても参加できるよう努力中だとしている。

目次

スノースポーツ普及を進める中国

北京冬季オリンピックの開催が決定したこともあり、中国政府は豊かになった国民のレジャーの一つとしてスノースポーツを普及させるべく、様々な産業支援を行っている。

スノースポーツ人口を3億人まで引き上げることを目標としているが、いまだレジャーとして定番化するところまでは至っていない。それでもスノースポーツ産業の規模は2015年の約2,700億元から56.9%伸びて、2019年末には4,235億元にまで拡大している。スキー場の数も増えており、2012年には348カ所だったが、2019年には770カ所に増えた。スキー場への来場者は延べ2,090万人に達している。

また、少ない積雪量に対応するため人工造雪機の開発が進んでいる。2019年までに造雪関連機器のメーカーが集まる産業パークが全国に20カ所近くあり、河北省だけで9カ所ある。智研咨詢のまとめによれば、2019年末時点で全国のスキー場には8,559台の人工造雪機があり、2019年だけで1,149台が新たに導入されている。

北京冬季オリンピックが開催されれば、スノースポーツを楽しむ人々がさらに増えることは容易に予想される。「スノースポーツ元年」となるのは2022-2023シーズンになるだろうか。

冬季五輪に向けて急がれる防寒着の開発

スキージャンプ競技のように屋外で開催される競技は多いが、競技会場となる張家口の冬の気温はマイナス10度からマイナス20度になることが予想されている。そこで、精華大学建築学院の曹彬副教授が率いるチームは、保温性の高い特殊な素材を使った防寒着の開発に取り組んでいる。

エアロゲルを用いた高性能ナノテク断熱材、熱伝導性の高いグラフェンを原料とする発熱材、金属酸化物半導体を用いた発熱材などを使っているといい、着用実験では体感温度が10度から15℃上がったという。 メディアはこの防寒着について、観客はもとより、終日屋外にいることが想定される会場スタッフやメディア関係者、警備員の皆にメリットがあると報じている。正式ユニフォームに採用されるかは定かではないが、冬季オリンピックに関係する民間企業が独自に採用する可能性は高そうだ。

曹彬副教授のチームによる実験映像 https://baijiahao.baidu.com/s?id=1693090979882527744&wfr=spider&for=pcより画像引用

8K・5Gによるリアルな試合観戦が浸透か

北京冬季オリンピックでは、8Kの超高精細放送が行われるほか、5Gを活用したインタラクティブな視聴体験が楽しめるという。例えばスキー競技では、360度カメラ、ドローン、各選手が装着するカメラ等から配信される映像から好きなものを選んで自由な角度から見たり、いつでも巻き戻して繰り返し見たりすることができる。5GのVRグラスを使った、よりリアルな観戦もできるよう準備が進められていると報じられている。

中国聯通(チャイナユニコム)は、観客、放送局、競技審判、選手のそれぞれへ良質な5G体験を提供するとコメントしている。実際に張家口の競技場では、マイナス30度の環境下での5Gネットワーク試験を行い、十分な通信速度が出ることを確認しているという。

AIの活用も一般的なものに

北京冬季オリンピックでは、AI技術を使った自動音声翻訳、音声識別、天気予報、トレーニング支援、保安・警備などのテスト運用が進められている。

例えば、AI審判補助システムの導入により誤審や採点の不備が減ることが期待されている。またこれまでの練習では、コーチがビデオ撮影をした上で選手にアドバイスをする方法が一般的だったが、AIによる画像分析を導入することで世界のトップ選手の動きとの差を表示したり、重心の位置や軌跡を表示したり、あるいは自身の動きについて加点や減点となるポイントを分析したりといった、AIのデータに基づくトレーニングが大きな比重を占めるようになるとされる。

中国ではAIを使った監視が広く実用化されているが、広大な屋外競技場内のパトロールにもAIを搭載したロボットが活躍する予定となっており、中科智雲からは火星探査車のようなデザインの警備ロボットが公開されている。

IT時報https://baijiahao.baidu.com/s?id=1704814883800258666&wfr=spider&より画像引用

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