阿里雲(Aliyun)開発者大会 現地レポート

目次

1. 会場前には期待感を高める演出も

今回の大会も前年に引き続き杭州転塘クラウドコンピューティングパークにある雲栖小鎮が会場となった。市内からは若干離れているが、杭州駅や空港から専用バスが用意されている。初日である 16 日の午前中は内部会議が行われており、一般参加者向けのイベントや講演は午後から主会場と各分会場で行われた。来場者は 7000 人を超えたが、受付では申込み時に受け取ったショートメールを見せるだけでスムーズに入ることができた。

受付もスムーズで屋外の展示コーナーもにぎわっていた。通路のあちこちに写真や案内図が。

会場外には参加型のお楽しみがいっぱい。馬雲の“夢”の言葉が書かれたボードの前では、来場の記念にたくさんの人が手形を押して楽しんでいた。大きな紙と毛筆が用意されたコーナーでは、来場者がにわか書道家として会社名や製品名を墨でしたためる姿も見られ、大変な盛り上がりだった。

2. 前回を上回る 7000 人が来場

16 日の午後から始まった講演やセミナーには、前回の 5000 人を上回る 7000 人以上が集まった。主会場で最初に開かれた阿里雲による講演は「サービスはスローガンでなく約束だ」というタイトルで 2 時間に渡って行われ、菲青 CEO(最高経営責任者)をはじめ技術研究員やマネージャーらが各自の視点から製品、技術、保守について、現状の問題点、解決方法、サービスの品質向上に向けた決意を語った。

用意された席だけでは足りず、後ろの芝生エリアにもたくさんの人が座っていた。

なかでも菲 CEO は、中国最大の EC プラットフォームである「淘宝(Taobao)」が支障なく稼働できるのに、なぜユーザーの小さなシステムに障害が発生するのかという問題について取り上げ、「アリババグループ内では各部署の連携が取れているため、イベントなどを行う際にお互いに協力や調整ができるが、阿里雲ユーザーのシステムの利用ピ-ークまでは把握できていなかった」と原因を分析し、例え小さなシステムであってもピークが重なれば障害が発生する可能性があると説明した。菲 CEO はこの問題を真摯に受け止め、ユーザーの意見を取り入れて改善すると約束。より信頼できる基盤作りに努力する気持ちが、来場者にもしっかり伝わったようだった。

展示コーナーは前回より小規模になっていたが、記念品を配るだけでなく、来場者と真剣に話している姿が多くなったと感じた。

分会場でも講演やセミナーが開かれ、どこも満員。参加者が熱心に質問していた。

3. クラウドサービスを“夢”の基盤に

大会 2 日目も講演やセミナーが中心で、アリババグループの王堅 CTO(最高技術責任者)の講演では、クラウドサービスを利用して“夢”を叶えた創業者や中小企業の例を挙げて、「クラウド上では、夢はより平等になっている」と語った。

広州週末網絡公司の余 CEO

会場には 80 年代や 90 年代生まれの若い創業者や開発者が多く集まった。クラウドサービスを利用しているのは 80 年代生まれが圧倒的に多かったが、インターネット時代に成長した 90 年代生まれも負けてはおらず、特にゲームやモバイル通信といった領域で活躍している。

続いて行われた大学生に大人気のアプリ「超級課程表(スーパー時間割表)」を開発した余佳文 CEO の講演では、創業にまつわる話を聞くことができた。余 CEO は 90 年代生まれで、まだ大学を卒業していないが、すでに 30 人以上の社員を抱える企業の代表だ。「超級課程表」は大学の業務システムと連携して時間割を管理することができるスマートフォンアプリで、授業の検索、概要紹介、授業評価などの機能を持つ。中国の大学生の 3 分 の 1 が利用する大ヒットアプリだが、開発のきっかけは余 CEO が面白い先生の授業や可愛い女の子がいる授業の時間割を知りたいと思ったことだという。

また阿里雲を利用する小規模企業の例として、王 CTO は何度も「杭州躍兎網絡科技公司」の名前を挙げた。同社は 2010 年に創業したゲーム開発企業だが、ゲームの代理運営手法の常識を変えることで成功した。同社は自社開発したゲームの修正権限をゲームの代理運営会社に開放しており、代理運営会社はユーザーの反応を見ながら自由にゲームを変更して提供している。これにより収入 1000 万元を超える「千万富豪」がすでに 10 人、「百万富豪」に至っては数十人も生まれているという。

このような事例はクラウド時代において珍しくなくなっており、多くの中小企業がクラウドサービスを使って大手企業と競争できるようになってきている。阿里雲のクラウド基盤システムはもちろん、位置情報(LBS)の API を提供する高徳地図や顔認識 API を提供する「Face++」といった阿里雲上で稼働するシステムがオープンソースとして開放されているためだ。

写真や映像の顔を検知して分析する「Face++」。顔の特徴やその時の感情も認識することができる。

良いアイデアさえあれば、資本金や基盤の保守などを気にせずに、より簡単にアイデアを実現することができる。創業はもう無駄な夢などではなく、個人や資金力のない企業でも「大きな夢を実現できる」というイメージが広がっている。クラウドサービスは「創業の黄金時代」の扉を開いたと言えると思った 2 日間だった。

4. よりスマートな生活を目指して

中国ではクラウドサービスがビジネスを変えるだけでなく、政府の業務をも変えている。「スマート都市」や「電子政務プラットフォーム」の構築が始まり、中央政府や地方政府自身がクラウドサービスの利用者となり、クラウドサービスの普及を進めている。主会場では、貴州省政府が「美麗中国 雲上貴州」というタイトルで阿里雲の「飛天システム」を使った政務プラットフォーム「雲上貴州」を紹介する講演を行った。

中国初の省レベルでの政府データ共有プラットフォームで、貴州省の交通、環境保護、食品安全、工業、旅行、電子政務、EC など「7+n」の領域のデータを集約しているという。データ交換や共有が可能になったほか、ビッグデータの分析も導入し、より便利に生活や旅行サービスの提供ができるようになったそうだ。

演壇に立った同省情報産業部の担当者は「雲上貴州ビッグデータビジネスモード大会」の開催を告知し、開発者やビッグデータ解析の達人に対して「30 年前に広州や浙江でビジネスチャンスを逃したなら、今度こそチャンスを失うな!」と発言し、会場は大きく盛り上がった。アリババグループの本部がある浙江省政府も阿里雲上で政務サイトを運営しており、教育、医療、納税、各種手続きなどのサービスを市民に提供している。

雲上貴州の講演の様子。「雲上貴州ビッグデータビジネスモード大会」への挑戦を呼び掛けた。

5. 影響力

阿里雲開発者大会は今回で 3 回目の開催となり、現時点で最大規模のクラウドサービス関連イベントとなっている。開発者同士がこれまでの経験や情報を交換するためのパーティといった側面もあり、多くのメディアや投資者も来場した。投資会社と直接接触できる分会場も設置され、新しいアイデアやプロジェクトを探す投資者と創業者を結びつける架け橋の場にもなっている。

阿里雲開発者大会の影響力は国内だけでなく、世界へも拡大しており、今回は PHILIPS、電器メーカーの仏 Schneider Electric、アプリ検索の Quixey、フィンランド最大のスタートアップ・カンファレンス Slush、「Angry Birds」の開発会社 Rovio など、海外からも多く企業関係者が来場した。

6. 阿里雲を利用した多彩なサービス

主会場のステージ両側に設置された大きなディスプレイでは、阿里雲で稼働するニュース発信アプリ「我在現場(私は現場にいる)」で共有されたメッセージが表示されていた。阿里雲はこのアプリの基盤システムで、今までのサーバー構成では実現できない低価格で高速な転送スピードでサービスを支えている。現場にいる記者や一般の人々が投稿した写真や文字をタイムリーに表示することができるため、今までのニュース放送の流れを大きく変えたと言われる。

我在現場のニュースが流れる

このほか、阿里雲をより使いやすくするためのサードパーティによるツールも人気だった。例えば駐雲が提供する「構築雲」のサービスサイトでは、マウスのドラッグ操作で簡単にサーバー構成図を作ることができる。テンプレートから用途と想定 PV 数を選ぶだけで、参考になる構成図案ができあがり、構成図のダウンロードや参考価格の表示はもちろん、阿里雲の開通画面にもリンクしておりとても便利だ。会場では阿里雲と駐雲のエンジニアがサービスの品質について真剣に話し合う姿も見かけられた。

構築雲のエンジニアによれば、阿里雲だけでなく他のクラウドサービスへの提供も考えているという。

阿里雲は単なるクラウドサービス事業者ではなく、政府と連携し、また企業と協力して創業者を支えながら、IT 業界から一般ユーザーの生活に至るまで幅広く、より快適な環境を作ることに努力していることが実感できた。これからも多くの人が阿里雲で夢を叶え、我々の生活習慣が変わるような新しい製品の誕生に期待したい。

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この記事を書いた人

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