要約と結論
2025年の中国では、1人当たり可処分所得が43,377元と前年比+5.0%の安定成長を維持しています。消費行動においては、コロナ禍の巣ごもり需要を経て、住宅などの必需品から「交通・通信」や「教育・文化・娯楽」といった体験型・サービス型消費へとシフトが鮮明です。都市部と農村部の格差は依然として大きく、今後の戦略には単なる地域対比にとどまらない、世代や価値観まで含めた多角的な市場分析が不可欠です。
本稿では、2025年の所得と消費の概況を整理します。

所得の状況
国家統計局によると、2025年の全国の1人当たり可処分所得は43,377元でした。また成長率は、前年比+5.0%の成長をみせています。可処分所得の金額ベースでは、都市部と農村部で大きな差があるため、ターゲットとする地域の購買力に応じた戦略が求められます。
| 可処分所得額(元) | 名目成長率(%) | 実質成長率(%) | |
| 全国 | 43,377 | +5.0 | +5.0 |
| 都市部 | 56,502 | +4.3 | +4.2 |
| 農村部 | 24,456 | +5.8 | +6.0 |
なお、過去10年間の1人当たり可処分所得額と成長率の推移を見ると、近年は名目成長率と実質成長率の乖離が少ない傾向にあります。近年の中国経済の成長は、過去の急速なものとは対象的に、ある程度落ち着いた成長を見せているといえます。



消費の状況
また、2025年第4四半期における全国の一人当たり消費支出の内訳は下記の通りです。食料や衣類といった生活必需品への支出以上に、生活を豊かにするモノやサービスへの支出が大きく伸びています。金額ベースでは依然として都市部と農村部の乖離は大きく、合計金額では、都市部は農村部の約1.7倍の消費があることがわかります。
| 品目 | 全国支出額 (元 / 前年同期比%) | 都市部支出額 (元 / 前年同期比%) | 農村部支出額 (元 / 前年同期比%) | |
| 食料・タバコ・酒 | 8631 (+2.6) | 10155 (+2.0) | 6434 (+3.3) | |
| 衣類・履物 | 1554 (+2.2) | 1941 (+1.5) | 997 (+3.2) | |
| 住宅 | 6397 (+2.1) | 8095 (+1.1) | 3950 (+3.9) | |
| 日用品 | 1167 (+7.7) | 2033 (+6.8) | 1140 (+9.2) | |
| 交通・通信 | 4306 (+8.3) | 5251 (+7.7) | 2944 (+8.9) | |
| 教育・文化・娯楽 | 3489 (+9.4) | 4298 (+9.4) | 2322 (+8.3) | |
| 医療 | 2573 (+1.0) | 2932 (+0.2) | 2053 (+2.0) | |
| その他 | 859 (+11.2) | 1164 (+11.1) | 419 (+9.0) | |
| 合計 | 29476 (+4.4) | 35869 (+3.7) | 20259 (+5.3) |
消費の変化
次に、可処分所得の成長率が振るわなかった2022年と2025年の消費支出の構成比を比較して、中国の消費者のお金の使い道にどんな変化があったかを見ていきます。
2025年は2022年と比べ、消費支出額は全品目で増加していますが、その年の合計金額に占める各品目のシェアには異なる変化がありました。
まず全国平均では、「食料・タバコ・酒」「衣類・履物」「住宅」「日用品」のシェアがマイナスとなりました。特に「住宅」は、2022年当時のコロナ禍による巣篭もり需要により、家を快適にするための支出が目立ちましたが、アフターコロナの現在は住宅への消費を抑える傾向が見て取れます。
一方でシェアが伸びたのは、「交通・通信」と「教育・文化・娯楽」の2つです。コロナ禍の移動制限が無くなったことで、インドアからアウトドアに伴う消費が大きく伸びたと考えられます。

次に、都市部と農村部で切り分けて分析します。
両者とも全国平均と傾向に大きな違いはないですが、その変化の勢いは、都市部の方が農村部と比較して大きいことが読み取れます。特に都市部の「住宅」は2.6ptと大きく減少し、「交通・通信」「教育・文化・娯楽」のシェアが伸びています。


マクロ統計の先にある「14億人のリアル」
2025年の統計データが示す通り、中国の消費市場は「モノからコト(体験・サービス)」へとシフトしているといえます 。しかし、14億人の市場を一括りにすることはできません 。都市と農村の格差だけでなく、デジタルネイティブである若者世代と、活況を呈する「銀髪経済(シニア市場)」とでは、お金を投じる先が全く異なるからです。激変する中国市場で日系企業が勝ち筋を見出すためには、こうした統計のトレンドを踏まえた上で、自社のターゲット層の「生の声」や「具体的な消費行動」をさらに深掘りしていくローカル戦略が不可欠です。
出典・データ算出方法について
・本文中の数値は、中国国家統計局の『家計所得支出および生活状況調査』にもとづく
・この調査は、層化抽出、多段階抽出、人口規模に比例した確率抽出、系統抽出を組み合わせ、全国から無作為に抽出された16万世帯から12か月間の家計簿を収集し集計されている
・なお、四捨五入により合計と小計が一致しない場合がある
・表・グラフは上記に基づき筆者が作成
・引用元
https://data.stats.gov.cn/dg/website/page.html#/pc/national/en/home
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