北京の会場で見た、高齢者・障害者向け製品の最前線とビジネスの熱気
2026年9月、北京国家会議センターで開催された「2026中国国際福祉博覧会及び中国国際リハビリ博覧会」(Care & Rehabilitation Expo China 2026;2026中国国际福祉博览会暨中国国际康复博览会)に、当社コンサルタントが日系メーカーの出展支援として参加しました。
主催者が「中国最大の福祉・リハビリ博覧会」とうたうこの展示会。 会場に一歩入って感じたのは、「福祉=支援を受ける静かな場」というイメージとはかけ離れた、ビジネスの熱気でした。
ロボット義手を使った演奏や車いすのパフォーマンス、義肢・義足を実際に装着して製品の魅力を語るスタッフ、そして会場を埋め尽くすビジネス関係者。本記事では、出展支援を通じて見えた会場の様子、注目を集めていた中国発のプロダクト、そして中国の福祉市場が伸びている背景を、現地で見聞きしたことをもとにレポートします。
※本記事内の中国元の日本円換算レートは2026年9月の月間平均レート1元=23.3円で計算しています。
博覧会の概要
「2026中国国際福祉博覧会及び中国国際リハビリ博覧会」は、「テクノロジーで福祉を支え、誰もが福祉を享受する」をテーマに、2026年9月3日から5日の3日間にわたって北京国家会議センターで開催されました。

◆博覧会情報(博覧会公式サイトより)
- 展示面積:約30,000平方メートル
- 出展社数:500社以上
- 来場者数:5万人超
博覧会公式サイトの情報から得られる規模感からも、中国国内における福祉・リハビリ産業への関心の高さがうかがえます。また、「テクノロジーと福祉が交差する場」として位置づけられている印象も強かったです。

出展支援の現場で見えたこと
今回は、当社が事業支援をさせていただいている日系メーカー様のプロダクトの出展をサポートしました。現地代理店とも連携を取りながら、出展手配やブースの設計・設営も行い、当社コンサルタントが現地での来場者対応なども行い、一般来場者やビジネスユーザーへの案内を行いました。
◆来場者の多くはビジネス関係者
まず印象に残ったのが、来場者の顔ぶれです。中華圏の他の福祉関連展示会と比較しても、一般消費者よりもビジネスユーザーの比率が高い印象を受けました。
バイヤーや代理店候補、事業関係者らしき来場者が目立ち、単なる見学ではなく 「取引につながる場」 として機能しているように感じました。実際に、ブースで実機に触れてもらったその場で商談化するケースもあり、展示会というより”商談会”に近い熱量があったというのが率直な感想です。
会場で注目した中国発のプロダクト
会場で印象的だったのは、ロボット義手を使った演奏や車いすのパフォーマンスなど、製品の可能性を”魅せる”演出が多かったことです。福祉機器の展示会というと機能や仕様の説明が中心になりがちですが、会場全体がとてもホットな空気に包まれていました。ここでは、特に目を引いた中国企業の展示を紹介します。
◆「強脳科技(BrainCo)」のロボット義手
脳と機械をつなぐブレイン・コンピューター・インターフェース(BCI)技術で知られる「強脳科技(BrainCo/浙江强脑科技有限公司) 」(以下、BrainCo)は、ロボット義手(バイオニック・ハンド)を着けた方によるキーボード演奏を披露していました。
腕の筋肉が発する微弱な電気信号を読み取って指を動かす仕組みで、鍵盤を一つずつ細やかに押さえていく様子から、その精度の高さが伝わってきました。 こうした「体感させる」演出と会場の熱気が、来場者の関心を商談へとつなげているように思いました。
なお、同社のバイオニック・ハンドの様子は、公式動画でもご覧いただけます。
※一部のスマートフォンなどでは、動画が再生されない場合があります。その場合はこちら(YouTube)からご覧ください。
なお、BrainCoは、ハーバード大学イノベーションラボで2015年に誕生した、中国・杭州を拠点とする非侵襲型ブレイン・コンピューター・インターフェース(BCI)企業です。義手・義足や、睡眠・集中力ケア機器などを量産しています。中国メディアで「杭州六小龍」と呼ばれる注目企業の一社として知られ、2026年1月に約20億元(約466億円)の資金調達を完了し、同月には香港証券取引所への上場を非公開で申請したと報じられました。
◆「威之群(WISKING)」の車いす・電動車いす
車いすメーカーの 「威之群(WISKING/上海威之群机电制品有限公司)」(以下、WISKING)も出展していました。
WISKINGは2003年に設立された、上海を拠点とする電動車いす・電動スクーターのメーカーです。医療機器の品質マネジメント規格であるISO13485などの認証を取得し、中国国内の医療機器登録も持っています。同社によると、製品は欧米やオーストラリア、アジアなど30以上の国と地域で販売されています。
会場では、同社の車いすに乗ったダンスパフォーマンスも披露され、軽快な動きで安定感や取り回しの良さを印象づけていました。
同社の製品は、公式動画でもご確認いただけます。
※一部のスマートフォンなどでは、動画が再生されない場合があります。その場合はこちら(YouTube)からご覧ください。
アダプティブウェアの展示も
なお、「威之群(WISKING)」のブースでは、高齢者や障碍者などが「楽に着脱できるように工夫された服」として注目されつつある、アダプティブウェア(Adaptive Wear)の展示もありました。
車いす利用車いす利用者向けの服を、試作・改良しながら開発している「OOinrain」は、雨の日でも膝が濡れにくい座位向けのパンツなどを紹介するファッションショーを「威之群(WISKING)」のブースで開催しており、来場者に魅力的な車いす・電動車いすのみならず、機能的でおしゃれなアパレルの可能性も訴求していました。
参考サイト:OOinrain – 小紅書(※小紅書アカウントがある方は動画も閲覧できます。)
https://www.xiaohongshu.com/user/profile/676d1fe200000000180160c4
◆実用化が進む介助犬ロボット
また、会場内では介助犬の役割を担うロボットの展示も多数あり、実用化に向けた開発が着実に進んでいることが感じられました。

中国の福祉市場が伸びる2つの理由:高齢化と障害者雇用政策
この展示会が今後さらに存在感を増していくだろうと私たちが考える背景には、中国が置かれている構造的な変化があります。
◆急速に進む高齢化と介護事情
中国では2021年、65歳以上人口の割合が14%を超え、「高齢社会」に突入しました。その増加スピードは主要各国を上回るペースで進んでおり、福祉・介護関連の需要は今後さらに加速していくと見られます。
一方で、中国の介護事情には、少ない若年層で多くの高齢者を支えるという、介護者側の負担が大きくなりやすい構造があります。できる限り自宅で親の面倒をみるという文化的な背景もあり、今後はさらに福祉機器へのニーズが高まっていくと予想されます。

◆国を挙げて進む障害者雇用支援
障害者雇用の分野でも、国家レベルでの後押しが進んでいます。2025年6月、国務院弁公庁は 「障害者就業促進三か年行動計画(2025〜2027年)」(原文名:促进残疾人就业三年行动方案(2025ー2027年))を公表しました。
同計画では、国の機関や学校・病院などの公的機関(事業単位)が率先して障害者を雇用するよう求めており、条件に該当する機関には2027年末までに障害者を少なくとも1名雇用することを求めています。企業に対しても、障害者雇用義務の履行状況を定期的に公表するよう求めるほか、障害者を雇用する企業への税制優遇・金融支援も盛り込まれています。
2024年末時点で就業している障害者はすでに914.4万人に上り、同年の新規就業者数も51.2万人に達するなど、取り組みの成果は数字にも表れつつあります。
高齢化のスピード、そして国家政策として後押しされる障害者雇用支援。この二つの潮流が交差する場所に、今回の福祉博覧会があります。福祉産業にまつわる商品・サービスを持つ日系企業にとって、今まさに中国市場に目を向けるべきタイミングだと感じました。
情報源・参考情報
国务院办公厅关于印发《促进残疾人就业三年行动方案(2025—2027年)》的通知(国办发〔2025〕23号)中国政府網
https://www.gov.cn/zhengce/content/202506/content_7030053.htm
中国国際福祉博覧会及び中国国際リハビリ博覧会 公式サイト「展会简介」
https://www.crexpo.cn/about/introduction
浙江强脑科技有限公司福祉展网上展厅
https://www.crexpo.cn/exhibition/787
强脑科技冲刺港股IPO 知名创投及上市公司力挺|脑机接口新浪财经新浪网
https://finance.sina.com.cn/stock/relnews/cn/2026-01-13/doc-inhhcntt7625389.shtml
强脑科技秘密闯关港交所:脑机接口第一股的资本博弈新浪财经_新浪网
https://finance.sina.com.cn/stock/aigcy/2026-01-14/doc-inhhhahx4135723.shtml
WISKING公式サイト
http://www.wisking.com.cn/
36Kr「威之群 项目信息」
https://pitchhub.36kr.com/project/2072181348696328
百度百科「上海威之群机电制品有限公司」
https://baike.baidu.com/item/上海威之群机电制品有限公司/10306565
ジェトロ(日本貿易振興機構)「急速に拡大する中国高齢者産業、日系企業に求められる事業戦略とは」
https://www.jetro.go.jp/biz/areareports/special/2024/1101/1d5a15405c658080.html
労働政策研究・研修機構(JILPT)「障害者雇用促進計画(2025~2027年)と就職の現状(中国:2025年7月)」
https://www.jil.go.jp/foreign/jihou/2025/07/china_01.html
私たちにできること
当社では、中国の福祉機器市場に関心をお持ちの企業を、次の2つの方向からご支援しています。
◆中国市場への参入をお考えの日系企業さまへ
中国の福祉市場には大きな関心がある一方で、「何から手をつければいいかわからない」という企業さまも多いのではないでしょうか。当社では、次のようなご支援を行っています。
- 市場調査と戦略立案
- 代理店・顧客開拓
- 各種プロモーション支援
まずは情報収集から、というお問い合わせも大歓迎です。
◆中国の福祉機器・プロダクトに関心をお持ちの企業さまへ
中国メーカーの調査・選定、メーカーへの問い合わせ・商談の設定、展示会視察のアテンドなども当社で随時行っております。中国の福祉機器・プロダクトに関心をお持ちの方は、お気軽にお問い合わせください。
▶ 中国市場調査・戦略立案の詳細はこちら
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