はじめに
2026年の8月時点で、中国にはデータ三法のような「法律」レベルの包括的なAI規制はまだありません。ただし、個別分野を対象とした「部門規章」レベルの規制はすでに複数施行されており、自社が当てはまる場合は、まずは施行済みの法令への対応が必要となってきます。
本稿では、中国でAIサービス(組み込み含む)展開を行っている企業や検討している企業向けに、現行のAI関連規制を整理します。
※本記事は2026年8月時点で確認できた一次情報に基づく整理です。人工智能法の制定状況を含め、今後変わりうるものであり、個別サービスへの規制適用は原則として専門家への個別確認をおすすめします。
現在のAI関連規制のそれぞれの位階(レベル)は?
現在施行されている中国のAI関連の規制を、それぞれの法令の位階(レベル)と照らして一言でいうと、「大きな一本の法律はまだなく、個別分野のルール(部門規章)の積み重ねで運用されている」状態だと言えます。
| 位階(レベル) | 制定機関 | AI関連規制の現状 |
| 法律 | 全国人民代表大会 | なし (人工智能法は起草段階) |
| 行政法規 | 国務院 | なし (「総合的立法を加速」と言及されている段階) |
| 部門規章 | 各省庁 | ・生成AI管理弁法 ・アルゴリズムレコメンド管理規定 など (次章以降で紹介) |
| 政策文書 | 各省庁 | ・智能体规范应用与创新发展实施意见 など |
| 地方規制 | 地方政府 | ・上海市・深圳市等の地方AI条例 など (本記事では割愛) |
現行の主要な部門規章(5つ+参考1つ)
① 互联网信息服务算法推荐管理规定(アルゴリズムレコメンド管理規定)
発布:CAC・MIIT・公安部・SAMRの4部門連名|施行:2022年3月1日
制定根拠:网络安全法・数据安全法・个人信息保护法・互联网信息服务管理办法
自社サービスにレコメンド機能を組み込んでおり、かつ「世論属性・社会動員能力を有するサービス」(SNS・掲示板・ライブ配信のように、情報を広く発信したり人を集めたりする機能を持つサービス)に該当する場合、アルゴリズム備案(アルゴリズムの届出)が求められそうです。
重要な点として、本規定は「AI(機械学習等)を使っているかどうか」を問いません。 第二条によれば、対象となるのは「算法推薦技術」全般であり、AIという限定はありません。単純なルールベース・数学的ロジックによるレコメンド機能であっても対象になる可能性があります(実際、法律専門家の解説でも「人工智能算法に限らず、数学・論理学のみに基づく非AIアルゴリズムも含む」と説明されています)。なお、届出対象は以下の5類型です。
- 生成合成類(コンテンツの自動生成・編集)
- 個性化推送類(いわゆる推薦アルゴリズム)
- 排序精選類(表示順位の調整)
- 検索過濾類(検索・フィルタリング)
- 調度決策類(自動的な需給マッチング等)
なお、届出時に提出するのは、サービス名・形式・応用領域・アルゴリズムの類型・自己評価報告など概要情報が中心で、ソースコードそのものではありません(第二十四条)。自社が当てはまるかについては、個別の確認を推奨します。
② 互联网信息服务深度合成管理规定(ディープフェイク管理規定)
発布:CAC・MIIT・公安部の3部門連名|施行:2023年1月10日
制定根拠:网络安全法・数据安全法・个人信息保护法・互联网信息服务管理办法
顔生成・音声合成・仮想シーン生成等の機能を提供する場合、本規定の対象となる可能性があります。混同・誤認を招く生成コンテンツには「標識付与」が求められそうです。また、なりすまし詐欺等に悪用されうる機能提供は、そもそも規制上問題になりうるため、企画段階での問い合わせをおすすめします。
③ 生成式人工智能服务管理暂行办法(生成AIサービス管理暂定弁法)
発布:CAC・国家発展改革委員会・教育部・科学技術部・MIIT・公安部・国家広播電視総局の7部門連名
施行:2023年8月15日|制定根拠:网络安全法・数据安全法・个人信息保护法・科学技术进步法
中国国内の公衆向けにチャットボットや画像・音声・動画生成機能を提供する場合、本弁法の対象となる可能性がありますが、社内利用限定等は対象外となる可能性が高そうです。また、本弁法の対象となった場合、未成年者の過度な依存防止、生成コンテンツへの標識、安全評価 等が求められそうです。
なお、本弁法に基づく生成AIモデル備案は、2026年4月末時点ですでに累計868件提出されています。また、この弁法は「AIモデルを自社開発する場合」に当てはまるものです。
なお、「AIモデルを自社開発する場合」と「既存AIモデルを組み込む場合」の必要の事項の違いは下記となります。
「AIモデルを自社開発する場合」に必要なこと:
生成AIモデル備案|モデルそのものを開発・提供する事業者が対象。国家網信弁(中央)に対して行う。
「既存AIモデルを組み込む場合」に必要なこと:
生成AI組み込み登記|API接続等で既存モデルを呼び出すだけの事業者が対象。地方網信弁に対して行う。
つまり、自社でモデルを開発していなくても、既存モデルを組み込んだサービスを提供する場合は生成AI組み込み登記が必要になりえます。自社が該当するかについては個別確認をおすすめします。
④ 人工智能生成合成内容标识办法(AI生成合成コンテンツ標識弁法)
発布:CAC・MIIT・公安部・国家広播電視総局の4部門連名|施行:2025年9月1日
制定根拠:网络安全法、互联网信息服务算法推荐管理规定、互联网信息服务深度合成管理规定、生成式人工智能服务管理暂行办法
AI生成コンテンツを扱うサービスでは、利用者にわかる「明示的標識」と、ファイルのメタデータに埋め込む「非明示的標識」の両方が求められそうです。対応する強制国家標準(GB 45438-2025)も同日施行されています。
⑤ 人工智能拟人化互动服务管理暂行办法(AI擬人化インタラクションサービス管理暫行弁法)
発布:CAC・国家発展改革委員会・MIIT・公安部・SAMRの5部門連名|施行:2026年7月15日
制定根拠:网络安全法・数据安全法・个人信息保护法・未成年人网络保护条例
AIコンパニオンやバーチャルアイドルなど、自然人を模した継続的な感情的インタラクションサービスが対象となり、スマートカスタマーサービス等、感情的インタラクションを伴わないものは対象外となる弁法です。
まず、未成年者向けの「バーチャル恋人」等の親密な関係を模したサービス提供は禁止されており、14歳未満への提供には保護者等の同意が必要となります。また、対象となる企業にはアルゴリズム備案が求められるほか、新規サービスの開始・登録ユーザー100万人以上等の規模要件に該当する場合は、擬人化サービス安全評価も求められそうです。自社が該当するかについては個別確認をおすすめします。
(参考)智能体规范应用与创新发展实施意见
発布:CAC・国家発展改革委員会・MIITの3部門連名|公表:2026年5月
位置づけ:部門規章ではなく、より拘束力の弱い「規範性文件・政策文書」
AIエージェント(智能体)の応用を促す政策文書で、部門規章より拘束力の弱い位置づけです。
現状のAI関連規制はデータ三法の「実装ルール」という位置づけ
上記①〜⑤はいずれも、制定根拠として网络安全法・数据安全法・个人信息保护法のいずれか、または複数を明記しています。つまりAI関連規制は、データ三法の「実装ルール」という位置づけです。また、データ三法対応がまだの企業は、AI固有の義務への対応以前に、データ三法が求める基本的な体制整備が前提になります。データ三法の基本については、当社の下記記事をご参照ください。

「人工智能法(AI法)」の立法動向
2026年に入り、包括的な人工智能法の制定に向けた動きが見られます。
- 全人代常務委員会2026年度立法工作計画:予備審議項目として記述
- 国務院2026年度立法工作計画:「総合的立法を加速する」旨の記述
- 国家発展改革委員会の記者会見(2026年7月31日):立法プロセスの加速に言及
いずれも、制定時期や内容を示すものではありません。現時点で確認できるのは「立法を加速する方針である」という事実のみです。
この記事のポイント
- 中国にはデータ三法と同格の「法律」レベルの包括的AI規制はまだないが、生成AI・アルゴリズム等の部門規章はすでに施行済み
- これらの部門規章はいずれもデータ三法を根拠としており、AI規制はデータ三法の実装ルールという位置づけ
- 人工智能法の立法プロセス加速は確認できるが、制定時期・内容は未確定
◆該当する場合に必要になりそうな対応の早見表
下記は、自社サービスが各規制の対象になりうるかを確認いただくための早見表です。詳細・自社が当てはまるかについては、個別の確認を推奨します。
| 部門規章 | どんなサービスが対象になりそうか | 必要になりそうな対応 |
| ①アルゴリズムレコメンド管理規定 | レコメンド機能・検索順位付け・自動生成・自動判断等のいずれかの機能を持ち、「世論属性・社会動員能力を有するサービス」(SNS・掲示板・ライブ配信のように、情報を広く発信したり人を集めたりする機能を持つサービス) | ・アルゴリズム備案 |
| ②ディープフェイク管理規定 | 顔生成・音声合成・仮想シーン生成等の機能を提供するサービス | ・混同・誤認を招くコンテンツへの標識付与 |
| ③生成AIサービス管理暫定弁法 | 中国国内の公衆向けにチャットボット・画像・音声・動画生成機能を提供するサービス | ・モデルを自社開発する場合は生成AIモデル備案 ・既存モデルを組み込むだけの場合は生成AI組み込み登記 ・あわせて未成年者保護措置・コンテンツ標識・生成AIサービス安全評価 等も要確認 |
| ④AI生成合成コンテンツ標識弁法 | AI生成コンテンツを扱うサービス全般 | ・「明示的標識」+「非明示的標識」の付与 |
| ⑤AI擬人化インタラクションサービス管理暫行弁法 | AIコンパニオン・バーチャルアイドル等、継続的な感情的インタラクションを提供するサービス | ・アルゴリズム備案 ・規模要件等に該当する場合は擬人化サービス安全評価 ・未成年者向けは追加の保護措置 等も要確認 |
情報源・参考資料
全国人大常委会2026年度立法工作计划
http://www.moj.gov.cn/pub/sfbgw/gwxw/xwyw/202605/t20260511_534683.html
国务院办公厅关于印发《国务院2026年度立法工作计划》的通知
https://www.gov.cn/zhengce/zhengceku/202605/content_7068346.htm
《互联网信息服务算法推荐管理规定》
https://www.cac.gov.cn/2022-01/04/c_1642894606258238.htm
《互联网信息服务深度合成管理规定》
https://www.cac.gov.cn/2022-12/11/c_1672221949318230.htm
《生成式人工智能服务管理暂行办法》
https://www.cac.gov.cn/2023-07/13/c_1690898327029107.htm
《人工智能生成合成内容标识办法》
https://www.cac.gov.cn/2025-03/14/c_1743654685899683.htm
《人工智能拟人化互动服务管理暂行办法》
https://www.cac.gov.cn/2026-04/10/c_1777558395078289.htm
《智能体规范应用与创新发展实施意见》
https://www.cac.gov.cn/2026-05/08/c_1779979789523320.htm
中国の法規制対応に課題をお持ちの方へ
本記事では、現時点における中国のAI規制について整理しました。
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