中国国内で会社を設立すると、登記機関から「営業許可証(营业执照)」が発行される。この営業許可証は、「市場主体登記管理条例」等の規則に基づいて正式な手続きを行い、合法的に設立された市場主体であることを証明するもので、正本と副本の2枚1組となっている。
国家市場監督管理総局はこのほど、営業許可証の取り扱いを改める「営業許可証の調整に関する通知(关于调整营业执照照面事项的通知)」を発表し、2022年9月1日から実施した。北京市をはじめとする各都市の市場監督管理局も本通知に従い、それぞれの地域での営業許可証の調整に関して公告を行っている。
本稿では、新しい営業許可証の主な変更点を整理する。
通知の主な内容(抜粋翻訳)
営業許可証の記載内容の変更
1:公司、非公司企業法人、合伙企業(パートナーシップ企業)、支店等の市場主体の営業許可証には、「営業期限」、「経営期限」、「合伙期限」の項目を記載しない。
2:合伙企業および個人独資企業の営業許可証には、新たに「出資額」の項目を記載する。
3:記載がなくなった項目の情報は、誰でも国家企業信条情報公示システムを通じて確認することができる。
市場主体身分コードによる電子版営業許可証の導入
1:紙で発行される営業許可証には、電子版営業許可証を表示する「市場主体身分コード(企業コード)」の二次元バーコードが印刷される。この電子版営業許可証は、スマートフォンの電子営業許可証ミニプログラムや微信(WeChat)、支付宝(Alipay)、百度(Baidu)等のモバイルアプリで企業コードの二次元バーコードを読み取ることで確認することができる。
新しい営業許可証への切り替え
1:2022年9月1日以降に設立登記、変更登記等の手続きを行う全ての市場主体に対し、本通知に基づく新しい営業許可証が発行される。
2:現在営業中の市場主体は、現有する営業許可証を引き続き使用することができるが、新しい営業許可証への切り替えを行ってもよい。
新しい営業許可証のサンプル ※日系企業に関連するものを抜粋
公司用の営業許可証(正本、副本)
1:「営業期限」の項目を削除
2:「住所」の表示位置を上に移動
外商投資企業の分支機構用の営業許可証(正本、副本)
1:「営業期限」の項目を削除
2:「営業場所」の項目名を「経営場所」に変更
3:「経営範囲」、「責任者」、「成立日」の表示位置を調整
本件に対する見解
2022年9月1日から、表示項目が変更された新バージョンの営業許可証の発行が始まっている。許可証の更新のたびに変更される営業期限の表示がなくなり、新たに電子版営業許可証にリンクする二次元バーコードが印字されるようになった。
営業許可証は店頭やオフィスのエントランスといった目立つ場所に掲げることが義務付けられているが、これまでにも営業許可証を偽造するケースが度々摘発されてきた。新しい営業許可証は引き続き紙ベースで発行されるが、右上の二次元バーコードをスキャンすると当局の公式サイト上で営業許可証の内容を確認できることから、許可証の偽造防止や無許可営業の抑止力の一つとして期待されている。また企業間取引においても、電子版営業許可証から取引相手の最新の登記情報が容易に確認できるようになることから、取引の信用向上につながるとされている。
当局は、すでに営業許可証がある場合は、引き続き今ある営業許可証が使えることを明記しているため、日系企業にかぎり特に急いで切り替え手続きを行う必要はなく、次回の更新時には自動的に新バージョンの営業許可証が発行されることになる。当面は新旧どちらの営業許可証も有効となるため、取引の際に誤解が生じないよう従業員に周知しておくとよい。
また所在地の場監督管理局から本件に関して公告が出されている可能性があるため、あわせて確認しておくことが望まれる。
市场监管总局办公厅关于调整营业执照照面事项的通知
https://gkml.samr.gov.cn/nsjg/djzcj/202209/t20220901_349745.html
北京市市场监督管理局关于调整营业执照照面事项的公告
http://scjgj.beijing.gov.cn/zwxx/gs/qtgsgg/202208/t20220826_2801334.html