中国のネットワーク出版サービス管理規定の施行について

目次

1. ネットワーク出版サービス管理規定とは

いわゆるデジタルコンテンツのインターネット配信・販売に関する規定で、「出版管理規定(出版管理条例)」、「インターネット情報サービス管理弁法(互联网信息服务管理办法)」と共に、中国国内で当該サービスを行う際に遵守することが求められる規定の一つだ。特に近年になって 2002 年施行の旧規定(互联网出版管理暂行规定)ではカバーできない新しいサービスが続々と登場していることから、このたび施行される新規定では、該当するサービス範囲を見直すとともに、必要な手続きや罰則などが明確にされた。

なお、外資企業や合弁企業によるコンテンツ配信については、外商投資産業目録など他の規定によって以前より禁止されている。新規定に改めて明確に「外資企業および合弁会社は当該業務ができない」との文言が追加されただけで、実務面においては今までとなんら変わりはない。あたかも新規定の施行によって急に禁止されるような報道がなされているが、実際にはずっと以前から許可されていない状況だ。

2. 新規定における変更点

まず規定の名称が、旧規定では「インターネット出版物(互联网出版)」であったのに対し、新規定では「ネットワーク出版サービス(网络出版服务)」と変更され、対象となる範囲を拡大していることに留意したい。新規定では以下のように大きく分けて 5 つの変更点がある。

①ネットワーク出版物の対象範囲の拡大(第二条)旧規定では、「書籍、新聞、雑誌、音響映像製品、電子出版物、メディアで公開発表した作品」と「文学、芸術、自然科学、科学技術関連作品」としていたが、新規定では「書籍・新聞・雑誌・音響映像製品のデジタル版、文学、芸術、科学領域に関わる知識性・思想性の文字、画像、地図、ゲーム、アニメ、音響映像読み物作品、これら作品のオンライン文献データベース、当局が認定するその他のデジタル作品」と範囲を広げている。

②主管当局の変更(第四条)旧規定の主管当局(新聞出版総署・情報産業部)と実質的な変更はないが、国務院改革によって名称が変更されたため、新規定では国家新聞出版広電総局と工業情報化部になっている。ネットワーク出版サービス許可証の発行や年度審査、違法行為などに対する措置は、各地の出版行政主管部門と新聞出版広電総局が行うとしている。

③ネットワーク出版サービス許可証の必須化(第七条・第八条)旧規定には明記されていないものの実務的には必要だったネットワーク出版サービス許可証(网络出版服务许可证)について、取得を必須とした。さらに許可証の取得条件の一つとして、配信に必要なサーバー等技術設備を中国国内に置くよう定めている。

④外資企業・合弁企業の参入禁止(第十条)旧規定では明記されていなかったが、新規定では中外合資企業、中外合作経営、外資経営企業、海外組織および個人がネットワーク出版サービス業を営むことを明確に禁止した。またこれらの企業あるいは個人と業務提携を行う場合には、事前に国家新聞出版広電総局による審査が必要だとした。

⑤奨励制度の追加と違反行為への法的措置の明確化(第四十七条・第五十条)今回新たにネットワーク出版サービス業の発展と繁栄に貢献した企業と個人を表彰すると定めた。具体的な選考基準は明らかにされていないが、第四十五条に国家が支援勧奨する出版物について列挙している内容が参考になるだろう。具体的には(1).憲法の基本原則の重大な作用を解説し理解を広めるもの、(2).社会主義の革新的価値観を発揚し、愛国主義、集団主義、社会主義および民族団結教育を推し進め、社会倫理、職業道徳、家庭の美徳、個人の人徳の発揚に重大な作用をもたらすもの、(3).民族の優れた文化を発揚し、国際文化交流において重大な作用をもたらすもの、(4).知的財産権を所有し優秀な文化を内包するもの、(5).文化のイノベーションを推し進め、国内外の新しい科学文化の成果を速やかに反映することに重大な貢献をするもの、(6).公共文化サービスの促進に重大な作用をもたらすもの、(7).未成年向けの健全な内容あるいは未成年の健康な成長にメリットをもたらすもの、(8).その他の重要な思想や価値観、科学的あるいは文化芸術的な価値のあるもの、の 8 点が挙げられている。

また旧規定では明確でなかった違法行為に対する処分として、警告通知、改正要請、社名などの公開、違法コンテンツの削除という 4 段階の措置と罰金などの罰則を定めている。処罰されるのは、許可なくネットワーク出版サービス業を営んだり、禁止された内容のコンテンツを配信したり、他社の許可証を借り受けた場合などで、違法行為による売上額が 1 万元未満の場合は 5 万元以下の罰金、1 万元以上の場合は売上額の 5 倍以上 10 倍以下の罰金が科される。さらに犯罪行為や著作権法違反等が見つかれば、民事責任や刑事責任も追及するとしている。

3. コンテンツ業界への影響

弊社において中国の現地企業などにヒアリングを行ったところ、旧規定で言及されていない部分やあいまいであった部分が今回明確になっただけであり、大きな影響はないだろうとの見方が多かった。

特にゲーム配信については、第二十七条で「ネットワークゲーム(明確な規定はないが、いわゆるオンラインゲームやスマホゲームを指すと思われる)は、配信前に所在地の出版行政主管部門に審査申請を出し、批准を受けた後に国家新聞出版広電総局に届け出ること」と定められたが、中国のゲーム会社は現段階ですでに配信前に審査を受けるなどしており、実務的に大きな変更はない模様だ。

また第三十二条において、「ネットワーク出版サービス企業が、ネットワーク上で海外の出版物を提供する場合、著作権者から許諾を得ること。このうち海外の著作権者から許諾を得たネットワークゲームを配信する場合、第二十七条に従って手続きを行うこと」と定められており、海外のゲーム作品を配信する場合も事前の審査が必要である旨が明確に規定された。そのため Apple のAppStore など海外のプラットフォームを利用した中国向けの配信に対し、今後何らかの動きがある可能性がある。

なお本レポートにおける全ての日本語訳は、理解を助けるための参考訳です。正確を期すためには原文をご参照ください。
旧規定:http://www.gov.cn/gongbao/content/2003/content_62636.htm
新規定:http://www.miit.gov.cn/n1146295/n1146557/n1146619/c4639081/content.htm

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この記事を書いた人

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