京東の物流開放で、中国の宅配便市場に予想される変化とは

目次

1. 物流サービスを開放

直販型 EC 最大手の京東集団(JD.com)は 2016 年 11 月 23日、商品の配送に利用していた自前の物流網を「京東物流(JDLogistics)」のブランド名で小売事業者に開放すると発表した。

同社は2004 年にEC 事業をスタートした。当初は民間の宅配業者を利用していたが、配送員の態度や荷物の状態にクレームが集中していたことから、2007 年に北京、上海、広州の 3 カ所に物流拠点を設けて自社配送サービスを始めた。京東の運営責任者を務める王振輝・高級副総裁は、京東物流について「倉庫・輸送・配送・カスタマーサービス・アフターサービスの一体化ソリューション」であると説明。物流インフラとノウハウを社会に開放することで、100 万を越える小売事業者と無数の消費者が恩恵を受けられるとアピールしている。

2. 全国をカバーする京東物流

京東物流には小中型荷物物流網、大型荷物物流網、低温物流網の三大物流網があり、全国にスマート物流センター7 カ所、大型倉庫 254 カ所、営業所・受け取り専用窓口が6,780 カ所ある。大型倉庫を含む物流倉庫の延べ床面積は 550 万平米に及び、中国全土の 93%にあたる 2,646 の区と県をカバーしている(2016 年 9 月時点)。さらに全国 42 都市では、主要都市での当日配送、返品等に便利な個人宅への訪問集荷・代引き・運送保険等に対応する“京東エクスプレス”サービスを提供している。

京東によると、ネットショップ事業者が他の物流会社から京東物流へ乗り換えた場合、在庫のサイクルタイムは平均 8 日、発送までの日数は平均 2 日それぞれ短縮でき、売上高は平均 87%増加し、顧客満足度も平均 113%向上するという。

3. 中国の物流サービス全体の底上げに期待

かねてより京東の配送サービスは質が高いと評判だった。国家郵政局申訴中心によれば 2016 年 10 月の苦情数は、全国平均が荷物 100 万個あたり 5.99 件のところ、京東は0.33 件にとどまる。苦情理由のうち紛失は 0.02 件(全国平均は 1.66 件)、遅延は 0.09 件(同 1.81 件)で、主要物流事業者 25 社の中で最も“優秀”だ。今回の京東物流の開放は他社にとって強大なライバルの出現に他ならない。2017 年以降、市場全体のサービス水準の向上に拍車がかかり、一方で低レベルな事業者の淘汰も進むだろう。

京東集団は、ネットショップ運営者等に京東物流への乗り換えを促すとともに、さらなる物流のスマート化に取り組むとしている。具体的には、クラウドコンピューティングや人工知能、ビッグデータ、ロボットを使い、運営の自動化・データ化・効率化を高め、コストとリスクを下げるという。「京東物流を中国の商業社会の重要なインフラにする」という同社の目標は、近い将来に実現するのではないだろうか。

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