ネット接続サービス市場の規範化に関する通知について

目次

1. 通知の中身とは

工業情報化部がこのほど発表した「インターネット接続サービス市場の浄化及び規範化に関する通知」は、インターネットデータセンター(IDC)、インターネット接続サービ ス(ISP)、コンテンツ配布ネットワーク(CDN)の各市場で散見される未許可運営、許可範囲を越えた運営、転貸(又貸し)を一掃するため、通知の発表即日から 2018 年 3 月 31 日 まで集中取り締まり作業を行うという“お知らせ”だ。

具体的には、各地の通信監理局が管轄区域内の IDC・ISP・CDN 事業者を調査し、必要な電信業務経営許可証を取得しているか、許可地範囲を越えた営業をしていないか、 技術協力などの名目で経営許可証を貸与していないかを確認する。また通信インフラ事 業者や ISP 事業者に対し、自社のサービス用機器や IP アドレス、回線帯域などの使用状況を確認するよう求め、必要な経営許可証を所有していない利用契約者へのサービス 提供中止、IDC・ISP・CDN 事業者が独自に構築したインフラや無許可事業者・個人のインフラを利用したサービス提供の禁止、IP アドレスや回線帯域の転貸禁止、電信主管部門の批准がない専用回線(IP-VPNを含む)の構築あるいは貸与等による越境経営行為の禁止、国際専用線を貸与する際には社内業務用途に限定し、国際専用回線で国内外の データセンター(DC)やサービスプラットフォームに接続する電信事業の運営禁止を明示している。そのほか、IDC・ISP・CDN の各経営許可証の保有事業者に、関係する法令等で定められた要求事項や手続きの徹底を求める内容となっている。

2. 日系企業の事業運営に影響なし

日本では本通知について「規制強化」「VPN の全面禁止」「VPN 許可制に」「駐在日本 人に影響」等とセンセーショナルな報道がされ、大きな誤解を招く結果となっている。 通知の中で使われた「VPN」という言葉を、当局の検閲規制をかいくぐって Twitter や Facebook 等を閲覧するために使われるいわゆる“壁越え”ツールの VPN(Internet VPN) としてとらえたためと思われるが、本通知に VPN を全面禁止したり、新たに許可制としたりするような記述はない。ましてや“壁越え”用 VPN を利用する個人までも取り締まるとも受け取れる表現は一切ない。

そもそも中国に Internet VPN に関する経営許可証は存在せず、中国国内の“壁越え” 用 VPN は全て違法に開設されているものだ。従来から暗号化レベルの低いプロトコル を用いた Internet VPN や、一部の無料 Internet VPN は遮断されている事実があり、秋の共産党大会を前に一時的に利用できなくなる可能性は高い。

一方で、企業が業務のために契約した国際専用回線(閉域網)を使った IP-VPN については、同部情報通信監理局の責任者が「適切な事業者を利用すれば、なんら影響は生じない」と公式に説明しており、 中国で事業展開する日系企業にただちに影響を及ぼすことはないものと考えられる。

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