1. 増値電信業務経営許可証とは
増値電信業務経営許可証とは、公共ネットワークインフラを利用して通信および情報サービスを提供する事業を行う際に必要となる許可証で、経営許可の範囲によって「SPライセンス(モバイルコンテンツサービス)」、「ISPライセンス(ISP サービス)」などと呼ばれる。
2つ以上の省・自治区・直轄市にまたがってサービスを提供する事業者に必要な「跨地区增值电信业务经营许可证E地域をまたいだ増値電信業務経営許可証F」と一つの省・自治区・直轄市内だけでサービスを提供する場合に取得する「增值电信业务经营许可证(増値電信業務経営許可証)」に分かれており、前者は工業情報化部が審査・批准し、後者は省・自治区・直轄市の通信管理局が審査・批准した後、工業情報化部に届出備案する。いずれも中国内資企業しか取得できず、近年は新規の全国ライセンスが発行された例はない。
なお「国务院对确需保留的行政审批项目设定行政许可的决定(国务院令第 412 号)」および「电信业务经营许可管理办法(工业和信息化部令 2009 年第 5 号)」を根拠としている。
2. 今回の決定による変更点
これまで基礎電信業務あるいは省・自治区・直轄市を跨いだ増値電信業務の経営許可証を取得した企業は、サービス提供を許可された全ての地域に支社あるいは子会社を設立し、当該支社の営業許可証などを揃えた上で省・自治区・直轄市の通信管理局に届出を行う必要があった。しかし今回の決定により、許可証取得後に各地の通信管理局への届出が不要となったため、人民日報などは「各地に子会社などを開設する金銭的、時間的コストを削減できる」と評価している。
また今までは増値電信業務経営許可証の取得申請の段階で、事前に当該企業の資質やサービス提供能力を厳しく審査してきた。しかし今後は“事中事後”の監督管理を強化すると本決定の中でも明らかにしており、電信業務市場の総合管理情報システムを通じて各種届出や年度検査のデータ管理を一層強化すると共に、信用記録の管理プラットフォームを開設して広く一般に公開する方針だという(2014.2.21人民日報)。
3. 想定される影響
市場への参入ハードルが下がり、特にモバイル向けコンテンツサービスの提供が活発化することが予想される(2014.2.16京華時報)。一方、近年は微信のようなメッセンジャーアプリや動画配信サービスなどの OTT(通信事業者や ISP以外の企業によるインターネットサービス)マーケットが拡大しており、旧来のいわゆる付加価値サービスから撤退する事業者が相次いでいる。手続きの簡素化はすでに手遅れで、本決定による影響は大きくない(2014.2.17 新浪科技) という見方もある。また同分野は中国内資企業にしか開放されておらず、海外企業への直接的な影響はないものと見られる。