2021年3月15日、国家市場監督管理総局は、「オンライン取引監督管理弁法(网络交易监督管理办法)」を公布した。2021年5月1日から施行されており、これに伴い「オンライン取引管理弁法(网络交易管理办法)」が廃止されている。
本稿では、オンライン取引監督管理弁法の重要なポイントを整理し、最後に日系企業への影響についてまとめている。
適用対象
中国国内において、インターネット等の通信ネットワークを通じた商品の販売・サービスの提供を行う経営活動。これにはSNSやライブコマース等を通じて行われる商品の販売・サービスの提供も含まれる。(2条)
用語の定義
本弁法の「オンライン取引経営者」とは、オンライン取引活動を行う自然人、法人、非法人組織を指す。これにはECプラットフォームの運営事業者、プラットフォームに出店する小売事業者、自社ECサイトを運営する事業者、その他のオンラインサービスを通じてオンライン取引を行う事業者が含まれる。(7条)
オンライン取引経営者に対する規定
電子商務法10条で定められた登記不要の要件を満たす場合を除き、商業登記を行わなければならない。(8条)
※電子商務法10条では、個人で生産した農産物や手工業品の販売、個人の技能を生かした許可証の取得が必要でない便民労務(清掃、洗濯、裁縫、理髪、引っ越し、鍵の作成、水道工事、家電家具の修理などが該当する)、年間取引額が10万元以下の個人について、商業登記を不要としている。
ECサイトのトップページまたは販売ページの目立つ位置に、統一社会信用コード、名称、企業類型、法定代表人、住所、登録資本等の経営者に関する情報または当該情報へのリンクを表示しなければならない。(12条)
個人情報の収集・使用規則を公開し、消費者の同意を得なければならない。個人の生体的特徴、医療健康情報、金融口座、行動履歴等のセンシティブな情報を収集・使用する場合、項目ごとに消費者の同意を得なければならない。個人情報提供者の同意が無い限り、いかなる第三者にも個人情報を提供してはならない。(13条)
次に列挙する行為を行ってはならない。(14条)
- 架空取引、ユーザー評価を捏造する。
- 良い評価を悪い評価よりも上に表示する、別の商品・サービスの評価と区別しにくくする等の誤解を招くような表示を行う。
- 在庫表示、予約数、フラッシュセール等を偽って、虚偽の販売行為を行う。
- クリック数、注目度、「いいね!」の数、投げ銭等のデータを偽る。
- 他人の商品・サービスや他人と関係があるよう誤解を招く行為を行ってはならない。
- 競合他社の信用や商品の評価を下げるために、虚偽の情報や誤解を招くような情報を捏造、流布してはならない。
消費者の同意を得ずに、または消費者からの請求がない場合、セールス情報を送信してはならない。(16条)
利用期間の自動延長や継続料金の自動徴収を行う場合、サービスの開始前と自動延長・自動徴収を行う5日前に消費者に通知しなければならない。(18条)
国家市場監督管理総局および省レベルの市場監督管理部門の要求があれば、特定の時間・特定の品目・特定の地域における商品・サービスの価格、販売数量、販売価格などのデータを提供しなくてはならない。(22条)
オンライン取引活動を取りやめる際には、終了する30日前までにWEBサイトまたはオンライン取引を行うページにサービスが終了する旨の公示を行わなければならない。(23条)
罰則
本弁法の11条、13条、16条、18条の規定に違反した場合、法律、行政法規の規定があればこれに照らして処分する。規定がない場合は、市場監督管理部門が職責に基づき期限付きの改善命令を下すとともに、5,000元以上3万元以下の過料を科してもよい。(41条)
本弁法の12条、23条に違反して、法定情報の公示義務を履行していない場合、電子商務法76条の規定に基づいて処分する。(42条)
本弁法の14条に違反した場合、不正競争防止法の関連規定に基づき処分する。(43条)
本弁法の22条に違反した場合、市場監督管理部門が期限付きの改善命令を下す。期限までに改善されなかった場合、5,000元以上3万元以下の過料を科す。(46条)
本弁法に対する見解
本弁法は電子商務法の下位法令にあたる部門規定で、EC事業者とECプラットフォーム運営事業者に課された義務と責任を具体的に規定するとともに、当局による監督管理制度や罰則を明確に定める内容となっている。
本弁法では、新しい業態であるSNSを使ったECやライブコマースについて、従来からある一般的なECと同様に扱い、同一の義務や責任を負うことを明確に定めている。また電子商務法の規定をより詳細に定義する内容として、個人のオンライン取引経営者で商業登記が必要となる要件、標準契約約款に加えることを禁止する事項、ECプラットフォームに対する出店者情報の報告義務などがある。
中国でライブコマースを行う日系事業者においては、2020年11月に市場監督管理総局が発表した「ライブコマースの監督管理強化に関する指導意見(市场监管总局关于加强网络直播营销活动监管的指导意见)」に加え、電子商務法をはじめとするEC関連の法令の適用対象となることを念頭に対応することが望ましい。
公式リンク(中国語)http://gkml.samr.gov.cn/nsjg/fgs/202103/t20210315_326936.html
本レポートはクララが発行する「中国法令アラート 2021 年 4 月号」の内容を一部抜粋、編集したものです。「中国法令アラート」では、最新の法令・制度変更に関する詳細および予想される日系企業への影響、実務で得た動向変化に関する情報等を毎月 PDF でお届けしています。