ライブコマースの基本ルールを定める「ライブコマース管理弁法(試行)」の概要

2021年4月23日、中国国家インターネット情報弁公室等7部門は「ライブコマース管理弁法(試行)」を公布した。2021年5月25日より施行されている。

本弁法では、ライブ配信のプラットフォーム運営事業者、ルーム運営者、ライブ販売員、ライブ販売員向けサービス企業のそれぞれに対するルールを定めている。

本稿では、本弁法の重要なポイントを整理し、最後に日系企業への影響の可能性について述べる。

目次

対象

中国国内において、WEBサイト・アプリ・ミニプログラム等を通じてライブ映像配信・ライブ音声配信・ライブ画像配信と組み合わせた形で行う商業活動に適用する。(2条)

用語の定義

本弁法でいうライブコマースプラットフォームとは、ライブコマースにおいてライブ配信サービスを提供する各種プラットフォームを指す。具体的には、インタ―ネットライブ配信サービスプラットフォーム、インターネットライブ音声配信サービスプラットフォーム、ECプラットフォーム等が含まれる。

本弁法でいうルーム運営者とは、ライブコマースプラットフォームにアカウントを登録するか、あるいは自ら構築したWEBサイト等のその他のネットワークサービスを通じてライブ配信ルームを開設してライブコマースを行う個人、法人、その他組織を指す。

本弁法でいうライブ販売員とは、ライブコマースにおいて直接社会大衆に販売行為をする個人を指す。

本弁法でいうライブ販売員向けサービス企業とは、ライブ販売員に対してライブコマースの企画、運営、仲介、研修などを提供する専門事業者を指す。

ルーム運営者およびライブ販売員に関する規定

ライブコマースに従事する者は、電子商務法が規定するECプラットフォーム経営者またはプラットフォーム内経営者に該当し、法令に基づいて関係する責任と義務を果たさなければならない。(2条)

ルーム運営者とライブ販売員がライブコマースを行う際には、法律法規および関連規定を順守し、次に列挙する行為を行ってはならない。(18条)

  • 「ネットワーク情報コンテンツエコロジカルガバナンス規定(网络信息内容生态治理规定)」6条、7条の規定に違反すること。
  • 虚偽や誤解を招く情報を発信し、ユーザーを欺いたり、誤解を招いたりすること。
  • 模造品、知的財産権を侵害している商品、人身や財産の安全を守るための要件を満たしていない商品を販売すること。
  • 架空または偽装の取引、注目度、閲覧数、「いいね」の数、その他のデータを改ざんすること。
  • 他者が違法行為やリスクの高い行為をしていることを知りながら、または知っているはずでありながら、当該行為を宣伝してトラフィックを集めること。
  • 他者に嫌がらせ、中傷、罵倒、脅迫を行い、他者の合法的な権益を侵害すること。
  • ねずみ講、詐欺、賭博、禁制品や管制物品等の販売を行うこと。
  • その他、法令や関連法規に違反する行為。

ルーム運営者とライブ販売員が発信するライブ配信番組が商業広告を成している場合、広告発信者、広告経営者、広告宣伝担当者の責任と義務を履行しなければならない。(19条)

ライブ販売員は、国家の安全、公共の安全、他人や社会の正常な生産生活秩序に影響を与える場所でライブ配信を行ってはならない。ルーム運営者とライブ販売員は、次に列挙する項目で法律法規及び関連規定を順守しなければならず、違法で好ましくない情報を含んだり、暗示等の方法でユーザーに誤解を与えたりしてはならない。(20条)

  • ルーム運営者のアカウント名称、アバター、プロフィール
  • ルームのタイトル、トップ画面
  • ルームのセット、小道具、商品ディスプレイ
  • ライブ販売員の服装、イメージ
  • その他のユーザーの注目を集めやすいポイント

ルーム運営者とライブ販売員は、プラットフォームのサービス契約に基づき、音声や動画のリンク、コメント、弾幕等のインタラクティブコンテンツのリアルタイム管理を行わなければならず、好ましくない評価等を削除またはブロックすることにより、ユーザーを騙したり、誤解を招いたりしてはならない。(21条)

ルーム運営者は、物品・サービス提供者の身元、住所、連絡先、行政許可、信用状況等の情報を確認し、関連する記録を保存しなければならない。(22条)

ルーム運営者とライブ販売員が、ライブ販売員向けサービス企業と商業的な協力を行う場合、双方の情報セキュリティ管理、商品の品質検査、消費者権益の保護等の義務を明確にした書面による契約を締結しなければならない。(24条)

監督管理および法的責任

関連部門は必要に応じてライブコマースプラットフォームの責任の履行状況について監督検査を行う。(26条)

本弁法に違反し、他人に損害を与えた場合、法律に基づき民事責任を負う。犯罪に該当する場合は刑事責任を負い、犯罪に当たらない場合は、インターネット情報弁公室等の関連主管部門がその職責に応じて法例に照らして処分を行う。(28条)

関連部門は重大な法令違反を犯したライブコマース関連事業者のリストを共有し、法令に基づいて共同で懲戒処分を行う。(29条)

本弁法に対する見解

本弁法は、サイバーセキュリティ法のほか、電子商務法、広告法、不正競争防止法、ネットワーク情報コンテンツエコロジカルガバナンス規定等に基づいて制定されたもので、ライブコマースにまつわるプラットフォーム運営事業者、ルーム運営者、ライブ販売員、ライブ販売員向けサービス企業のそれぞれに対する規定を明らかにしている。

とりわけプラットフォーム運営事業者に対しては、ユーザーの身分確認から、違法行為の監視、ルーム運営者の等級に応じた管理、動画の保存、未成年者の保護に至るまで、厳しい管理・監視体制を整備するよう求めている。

さらに従前、管理が十分にされてこなかった納税については、ルーム運営者とライブ販売員の身分情報や統一社会信用コード等を税務当局に報告するよう求め、法令に基づいた源泉徴収義務も課している。

中国でライブコマースを行う日系企業に影響するのは主に第3章のルーム運営者およびライブ販売員に対する規定である。まず18条の禁止行為については、これまでサイバーセキュリティ法や電子商務法、その関連法令等で繰り返し規定されてきた内容と変わらない。

20条ではライブ配信を禁止する場所と5項目の重点対象を明示している。具体的な禁止場所は挙げられていないが、例えば政府や公共施設の付近、多くの人が集まる可能性がある場所などが考えられる。

またライブ販売員の技術向上やマーケティングを支援する企業(ライブ販売員向けサービス企業)に協力を依頼する場合、24条で定められた義務を記した契約書を書面で交わすことが定められている。すでにこれらの企業と契約している日系企業においては、すみやかに契約内容を確認することが望ましい。

公式リンク(中国語)http://www.cac.gov.cn/2021-04/22/c_1620670982794847.htm


本レポートはクララが発行する「中国法令アラート 2021 年 5月号」の内容を一部抜粋、編集したものです。「中国法令アラート」では、最新の法令・制度変更に関する詳細および予想される日系企業への影響、実務で得た動向変化に関する情報等を毎月 PDF でお届けしています。

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この記事を書いた人

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