「M.Y.Comic 動漫遊戯節」現地レポ―ト
1. 中国版コミケ?「M.Y.Comic 動漫遊戯節」とは
2020 年 11 月 28~29 日の 2 日間、北京市でアニメ・漫画・ゲームに関する大型イベント「第 22 回 M.Y.Comic 動漫遊戯節(MYC)」が開催された。
MYC は 2009 年にスタートしたイベントで、北京で 10 年を超える開催実績がある。毎年 2~3 回開催しており、来場者は毎回 3 万人に上る。開催地は北京市の東側に位置する朝陽区の酷車小鎮で、近くには大型テーマパークの北京歓楽谷(HappyValley)やビジネス街の国貿、北京工業大学などがあり、アクセスがとてもしやすい場所だ。
今回の MYC は、当初は春節(旧正月)の連休最終日の 2020 年 2 月 8 日に開催される予定であったが、新型コロナウイルスの感染拡大によって端午節の連休にあたる 6 月 27~28 日に延期となり、それがさらにずれ込んで 11 月にようやく開催となった。
入場チケットは前売り券と当日券があり、今回は前売り券が 45 元(約 730 円)、当日券が 55 元(約 900 円)だった。主に大手 EC サイトの「淘宝(Taobao)」、動画配信サイトの「bilibili(ビリビリ)」、アニメ・同人イベントまとめサイトの「喵特(ニャント)」、アニメ・漫画・ゲームのコミュニティーサイト「漫優堂」などのアプリで購入することができる。
例年の MYC では、中国でも人気のある日本の声優がゲストとして招かれることが多い。しかし今回はコロナ禍ということもあって海外からのゲストはなく、中国人の人気声優や「踊ってみた動画」で有名になった網紅(ワンホンと読み、ネット上で人気のある人を指す)等がゲストとして招かれていた。
例年であれば来場者は 12~30 歳が中心で、アニメファンやコスプレ愛好者の割合が多いのだが、今回はざっと見たところ 10 代くらいの若者と 20 代半ば以降の社会人と思われる人が中心という印象だった。コロナ禍で外出制限が設けられている大学もあることから、大学生の参加が大幅に減ったものと思われる。来場者数もいつもは 3 万人を超えるというが、今回は初日が約 6,000 人、2 日目は約 2,000 人で、合計 8,000 人ほどにまで落ち込んだ。
2. MYC のコロナ対策
イベント開催にあたり MYC が力を入れていたのがコロナ対策である。一般来場者と出展者・設営者のそれぞれで何重もの対策が取られていた。
一般来場者への対策では、まず入場チケットは前述したようにオンライン販売となっており、購入時には身分証による実名認証が行われる。当日の入場の際には、最初に会場の外で北京市の健康診断アプリ「北京健康宝」の提示が求められる。感染や感染者との接触の可能性がない緑色の表示でなければ入場できない。もちろんマスクの着用もチェックされる。
さらに会場の入り口では X 線による荷物検査が行われ、同時に赤外線による体温確認と再度マスクの着用確認がある。荷物検査を終えて少し進むと、今度は入場チケットの確認、身分証の確認、手の消毒、マスクの着用確認が行われる。チケットと身分証が両方提示できない人やなんらかの不備が認められた人は入場禁止となっている。
ブースの出展者・設営業者に対しては、会場に入る際に「北京健康宝」の提示、身分証の確認、体温確認が行われた。もちろん手の消毒とマスクの着用は必須だ。さらに主催者側のスタッフによれば、関係者にはイベントの 3 日前からイベント終了日まで毎日、体調報告が義務付けられていたという。
来場者とスタッフのいずれも「北京健康宝」で感染や隔離指示等を示す赤色や黄色の表示が出ている人、発熱や咳がある人についてはイベントへの参加が禁止された。また体温確認で 37.3℃以上と検出された人は、入場禁止とした上で、体温確認エリア付近で待機する防護服を着た係員が別途用意されている隔離スペースへと誘導し、病院に連絡するといった対策が講じられた。関係者の話では、これらのコロナ対策のために専任スタッフを 12 人配置し、マスクを着用していない来場者用にマスク 2,000 個、入り口などに設置するための消毒液 10 個、救急箱 2 箱、防護服 2 着などを準備したという。さらに会場内では、密にならないよう適時アナウンス喚起が行われていた。
3. コスプレ系アパレルショップが人気を集めた出展ブース
主催者に話を伺ったところ、MYC には例年多くのアパレル関連やゲーム関連の企業が出展しているという。今回、アパレル系のブースとしては、近年北京で開かれるアニメ・ゲーム関連イベントによく出展している日本の女子高生系制服ショップの「前田結衣的日常」、北京の有名な漢服ブランド「如夢霓裳」が出展していたほか、制服系衣装を扱うブースが全部で 5 社、ロリータファッションを扱うブースも 3 社あった。
北京では 10 代から 20 代の若者の間で、日本の女子高生の制服風の衣装や漢服、ロリータファッションを着て外出することがすでに日常のファッションの一部になっている。なかでも漢服は、中国の伝統要素を取り入れた「国潮」と呼ばれるトレンドの一つで、SNS で網紅が漢服を着る動画を投稿したり、漢服に合うメイクを紹介する動画が流行ったりしている。特に MYCのようなイベントに制服風の衣装や漢服を着てくる人は多い。今回の MYC でもアパレル関係のブースは人気で、無料で試着できることから男女問わず試着を希望する人が集まっていた。
このほかゲーム関連では、天梯互娯が運営する「奥奇伝説」、完美世界が運営する「旧日伝説」、「三国殺」などのブースが出展されていた。日系では KADOKAWA の中国法人である「天聞角川」、「バンダイ一番くじ」といったブースが出ていた。
オンライン読書サービスを運営する「華文天下」、変身写真の専門スタジオである「盤子女人坊(Pretty Venus Town Photo)」、ノベルティを配布していた大手日本語学校の「桜にほんご」のブースもにぎわっていた。またミルクティー販売店の「喫茶三千」もブースを出していたが、その場で作るのではなく、カップ入りのミルクティーを販売していた。
個人や小規模な店舗によるブースも 50 あまり出ており、いわゆる同人系のブースが6、フィギュアやイラスト、キャラクターの絵柄がついたオリジナルグッズを扱うブースが 18、アニメ・ゲーム周辺グッズを販売するブースが 26 あった。
版権の扱いは定かでないが、販売されているのは日本のアニメやゲームのキャラクターを使った商品が多く、同人系ブースでも日本のアニメのキャラクターをベースにしたものが多く見られた。筆者が見る限りでは比較的日本のキャラクターの商品の売れ筋が良いように思えた。
コスプレ参加者のために、誰でも自由に撮影できるエリアも設けられていた。教室を模したコーナーや和風な畳敷きのコーナーがあり、本格的な撮影用の機材を使って撮影をする様子も見受けられた。
4. 共通の趣味を持つ友人をつくるための MYC
何人かの来場者に話を伺ったところ、MYC 来場の主な目的として「共通の趣味を持つ仲間との交流」といった回答が多かった。
日本のコミケでも同じような理由から参加する人は確かに多いが、北京は日本や上海などと比べてアニメやゲームに関する大型イベントが少なく、アニメやゲームをテーマにしたコラボカフェなども少ない。そのため、北京のアニメやゲームファンにとっては MYC のようなイベントが共通の趣味を持つ仲間と交流できる貴重な場の一つになっていることが伺えた。