1. 大会規模は昨年の 2 倍に
2017 年 10 月 11~14 日にかけて、阿里巴巴集団(アリババグループ)が主催する開発者向けカンファレンス「2017 雲栖大会」が浙江省杭州市の雲栖小鎮で開かれた。
大会期間中は、クラウドコンピューティング、ビッグデータ、人工知能、新小売業態、スマートデバイス、VR、AR、量子コンピューティング、IoT、データベース、生体認証、航空宇宙、金融など 20 の最先端技術分野について、2 つのメインセッション、20 のテーマ別サミット、110 以上のサブセッションが開かれ、800 人のスピーカーが登壇した。さらに 3万平方米に及ぶ技術展示、音楽祭、ランイベントなど様々な催しが用意された。今年は 67 の国と地域から 6 万人が参加したほか、137 の国と地域の 1,500 万人がインターネットのライブ配信を視聴した。
筆者は午前 7 時半に会場に到着したが、入口には受付を待つ長い列ができていた。受付では申込み時と同じ身分証明書を提示し、その場で自分の顔情報を登録する。これでカンファレンスの期間中は、顔認証で会場に出入りすることができる。早くて便利という科学技術がもたらす恵みを実感することができた。
今年の雲栖大会は展示会場 4 ホールと臨時テント会場という、前回の 2 倍の規模で開催された。会場周辺の交通情報管理には、高徳地図のシステムが用いられ、警察が効率的に指示を出せる仕組みが整っていた。また会場内には数百台のカメラとサーマルモニタリングシステムが配備され、会場内の混雑状況をリアルタイムに把握して、来場者の誘導を行っていた。
2. 研究開発機関「達磨院」の設立を発表
メイン会場で行われた阿里巴巴の創業者、馬雲総裁の講演には全国から多くの人が殺到した。人数制限で会場に入りきれなかった参加者は、広場に設置されたスクリーンの前に集まり講演を待つことになった。
講演の中で馬総裁は「達磨院(DAMO Academy)」の設立を発表した。基礎科学と先端技術研究に今後3 年間で 1,000 億元を投資するとした上で、「アリババは未来を創る企業でなければならず、世界の未来のために自分の能力、技術、才能を使って、国と社会、さらに世界の革新的なエンジンになる必要がある」と達磨院の目的を強調した。
この「DAMO」とは「The Academy for Discovery, Adventure,Momentum and Outlook」の略だが、武侠小説で有名な中国の作家・金庸の作品の中で、達磨院が武術修行の最高域であることにもちなんでいる。まずは量子コンピューティング、機械学習、基本アルゴリズム、ビジュアルコンピューティング、自然言語処理、人間とコンピュータのインタラクション、チップ技術、センサー技術などを研究領域とすることが明かされた。
3. 展示ホール
展示ホールでは、400 社を越えるテクノロジー企業が人工知能、スマートビジョン、演算チップ、無人運転、スマート家事管理、都市管理などの分野における最先端の研究成果を展示していた。
「都市頭脳」と呼ばれるスマート都市管理システムの展示では、交差点に設置されたカメラで交通状況情報を収集し、データ分析した後、信号のタイミングを最適化するソリューションが紹介されていた。杭州市内の試験エリアにこのシステムを投入して 1 年が経つが、交差点の通過時間が 15.3%減少し、立体交差道路の通過時間は平均 4.6 分短縮され、システムのおかけで救急車が到着するまでにかかる時間は 50%短縮されたという。
そして、スマート農業、スマート外出、スマート物流、スマート小売など、様々な“スマート+”の展示エリアも参加者の目を引いていた。
スマート農業の展示では、人工知能と農業を組み合わせた農業機械の障害予測ツールが紹介されていた。今までは壊れてから修理していたが、今後は壊れるタイミングを予測できる。しかも、タイヤが畑の土を押しつぶすタイミングで土壌と環境データを自動的に取得し、分析したデータを農作物の生産に活用できるという。
また人工知能と旅行を組み合わせたスマート外出の分野では、最新の顔認証技術を展示していた。公共交通機関を利用する際、財布やスマートフォンがいらず、顔認証で料金を支払うことができるといい、参加者は自ら体験してシステムの精度と速さに納得していた。
人工知能と物流在庫管理と宅配を組み合わせたスマート物流のエリアでは、菜鳥網絡科技有限公司が最新の商品運搬ロボットを展示していた。ロボットによる自動化で、倉庫内作業の効率と精度が大幅に改善するという。
中国の QR コード決済は世界に衝撃を与えているが、顔認証による決済技術もどんどん進化している。スマート小売のエリアに設置されたミニショップでは、顔認証による支払いを体験することができた。自分の Alipay に顔情報を登録すれば、スマホを使わずに“SMILE TO PAY”と名付けられた顔認証技術で支払いを済ませることができる。
今現在、中国で一番人気のキーワードである「シェア」。GPS 測位モジュールはシェアエコノミーのコアといっても過言ではないだろう。千尋位置網絡有限公司はシェアバイク専用のスマートロックを展示していたが、シェア傘、シェアモバイル電源など、ふだん街ではあまり見かけないサービスが会場内外のあちこちにあり、さすが最先端のテクノロジーイベントだけあって、利便性も新鮮感も最先端だと感じた。
4. テクノロジーの未来を実感
各分会場のサブセッションでは、クラウドコンピューティングやビッグデータ、人工知能をはじめとする幅広い分野の講演が行われ、関心のある分野を選んで学び、参加者らと交流することができた。
-今回のカンファレンスを通じて、最先端テクノロジーの発展の行方を実感することができた。顔認証で支払いができる生活はもう既に目の前に現れている。馬総裁が社会や世界に貢献するためだと語った達磨院は、阿里雲と共にどのように将来の我々の生活を変えるのか、これからが楽しみだ。