中国VOC規制、導入の背景と新規格の概要とは

目次

1. 12 月から揮発性有機化合物(VOC)規制スタート

中国 VOC 規制の適用開始が 2020 年 12 月に迫っている。この規制は、国家標準化管理委員会が 2020 年 3 月 4 日に発表した製品の有害物質含有量に関する 7 件の国家強制標準規格(GB 規格)を指す。いずれも強制規格で、幅広い業界で対応が必要となる。

2. VOC 対策は政府の緊急課題

近年はずいぶん改善してきたものの、中国は世界で最も大気汚染が深刻な国の一つとされる。中国政府はかねてより環境汚染物質の排出規制に取り組んでおり、十三五(第13 次 5 カ年計画、2016-20 年)では、2019 年末までに VOC 含有量制限に関する国内基準を策定し、2020 年 7 月 1 日から主要な領域で規制を実施するとしていた。

これを受け生態環境部は、2019 年 6 月に「重点産業における揮発性有機物の総合管理方案(重点行业挥发性有机物综合治理方案)」を発表し、排出規制を重点的に行う産業や対象となる VOC を詳細に指定した上で、検査の重点項目を明らかにした。無論、当局による監視を強化し、違反があれば事業停止や差し押さえを行い、担当者の責任追及を行うとしている。

さらに 2020 年 6 月には生態環境部が「VOC 管理実用手引」、「重点産業企業の VOC 現場検査ガイドライン(試行)」、「オゾンおよび VOC の統合管理に関する Q&A」の 3 冊の電子書籍を公開し、産業界向けに VOC 対策の詳細や検査ポイント等を明らかにしている。

3. 各強制標準規格の概要

2020 年 12 月から適用が始まる 6 件の国家強制標準規格の概要は次の通りとなっている。

・ GB 18581-2020:木製品用塗料における有害物質限度量 https://members.wto.org/crnattachments/2019/TBT/CHN/19_5662_00_x.pdf

適用対象は、現場塗装・工場塗装で用いられる木製品向けの溶剤系塗料(油性塗料)、水性塗料、UV 硬化塗料、粉体塗料である。各塗料における有害物質の許容限度、試験方法、検査ルール、包装表示等を規定している。

・GB 18582-2020:建築用壁面塗料における有害物質限度量 http://openstd.samr.gov.cn/bzgk/gb/newGbInfo?hcno=5B1B0772FFEDFF08DD2B525F95B99528

適用対象は、現場塗装・工場塗装で用いられるセメント系基材およびその他の非金属材料(木質材料を除く)を基材とした壁面用の水性塗料、溶剤系塗料等である。各塗料における有害物質の許容限度、試験方法、検査ルール、包装表示等を規定しており、VOC に加えて可溶性重金属物質に関する許容限度基準も設けられている。

・GB 24409-2020:車輌用塗料における有害物質限度量 https://members.wto.org/crnattachments/2019/TBT/CHN/19_5661_00_x.pdf

適用対象は、パテを除く各種自動車用塗料、自動車修理用塗料、軌道交通車両用塗料、自動車および軌道交通車両部品用塗料、その他のバイク、電動自転車、自転車等の車両および部品用の塗料のうち、溶剤系塗料(油性塗料)、水性塗料、UV 硬化塗料、粉体塗料である。各塗料における有害物質の許容限度、試験方法、検査ルール、包装表示等を規定している。

GB 30981-2020:工業用保護塗料における有害物質限度量 https://members.wto.org/crnattachments/2019/TBT/CHN/19_5664_00_x.pdf

適用対象は、パテを除く金属、コンクリート、プラスチックなどの表面を保護する各種工業用の溶剤系塗料(油性塗料)、無溶剤塗料、水性塗料、UV 硬化塗料、粉体塗料である。塗料を下塗、面塗、トップコートなどの用途に分け、各塗料における有害物質の許容限度、試験方法、検査ルール、包装表示等を規定している。一部塗料には、VOC に加えて重金属物質に関する許容限度基準も設けられている。

GB 33372-2020:接着剤の揮発性有機化合物(VOC)限度量 https://members.wto.org/crnattachments/2019/TBT/CHN/19_5663_00_x.pdf

適用対象は、溶液系、水分散系等の接着剤である。各接着剤における有害物質の許容限度、試験方法、検査ルール、包装表示等を規定している。

・GB 38508-2020:洗浄剤の揮発性有機化合物(VOC)含有量限度値 https://members.wto.org/crnattachments/2019/TBT/CHN/19_5658_00_x.pdf

適用対象は、工業生産経営活動で生産、販売、使用される VOC を含んだ洗浄剤である。工業用洗浄剤における有害物質の許容限度、試験方法、検査ルール、包装表示等を規定している。VOC に加えて特定揮発性有害物質としてホルムアルデヒド、BTEX(ベンゼン、トルエン、エチルベンゼン、キシレン)、有機塩素化合物の許容限度基準が設けられている一方、除外される揮発性化合物のリストも示している。

4. 業種で対応が必要に

これらの国家強制標準規格は、いずれも幅広い分野の製品が対象となっており、多くの業種の事業者に影響が及ぶことが想定される。原材料と製品のどちらが規制対象に該当するのか、あるいは産業チェーンを構成するうちの誰が規制対象として対応しなければならないのかといった判断に迷うケースでは、所在地の管轄当局に判断を仰いだり、サプライヤーに対応状況を照会したりすることが求められる。

VOC 規制は、日系企業が中国国内で該当する製品を生産、使用、販売する場合だけでなく、日本を含めた海外で生産された塗料などを中国に輸出する場合にも適用される。2020 年 12 月 1 日以降、当該規格に準拠していない場合は中国向けの輸出ができなくなるが、塗装済み部品のように適用外となる製品もあるため注意が必要だ。また今回適用される標準規格では、製品の VOC 含有量の測定が求められているが、当局が指定する検査機関を利用しなければならない製品もあるため、早急な対応が求められる。

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