ICPライセンスの外資規制緩和について(2023年)

目次

要約と結論

中国では、インターネット関連ビジネスを行う際にICP登録およびICPライセンスの取得が必要となるが、これまでICPライセンスは実務上、外資企業による取得が極めて困難とされてきた。

しかし2022年の「外商投資電信企業管理規定」の改正により、外資企業の出資比率制限の緩和や参入条件の一部撤廃が行われた。この変更は、ICPライセンスは「これまでよりも外資に開放された」「外資に次第に開放する方針」と認識することができ、制度上は出資比率などの条件を満たす外資企業については参入可能性が拡大したと言えるだろう。

本記事では、中国の電信業務の分類やICPライセンスの概要を整理した上で、今回の規制緩和のポイントを解説する。

ICPとは

ICPとは「Internet Content Provider」の略であり、中国でWebサイトの開設やインターネットサービスを提供する際に必要となる制度である。ICP登録は外資企業でも申請可能だが、ICPライセンスは従来、実務上ほぼ内資企業のみ取得可能とされていた。

  • ICP登録
    中国国内サーバーで運営するすべてのWebサイトに必要な登録(義務)
  • ICPライセンス(電信業務経営許可証)
    ECサイトやオンラインサービスなど、営利目的のインターネット事業に必要な許可

中国における電信業務分類内訳

中国では電信業務は以下の2種類に分類される。

  • 基礎電信業務
    (通信インフラ、データ伝送、音声通信など)
  • 増値電信業務
    (インターネットサービス、情報提供サービスなど)

「電信条例」によれば、これらの業務を行うには、主管部門から電信業務経営許可証(=ICPライセンス)を取得する必要があり、許可なしでの事業運営は禁止されている。

第7条  国は、電信業務経営について電信業務分類に従い許可制度を実行する。 電信業務の経営については、必ずこの条例の規定により国務院の情報産業主管部門又は省、自治区若しくは直轄市の電信管理機構の発行する電信業務経営許可証を取得しなければならない。 電信業務経営許可証を取得していない場合には、いかなる組織及び個人も、電信業務経営活動に従事してはならない。
第8条  電信業務は、これを基礎電信業務及び増値電信業務に分ける。「基礎電信業務」とは、公共ネットワークインフラストラクチャー、公共データ伝送及び基本音声通信サービスを提供する業務をいう。「増値電信業務」とは、公共ネットワークインフラストラクチャーを利用して提供される電信及び情報サービスの業務をいう。 電信業務分類の具体的な区分は、この条例に添付する「電信業務分類目録」の中にこれを列挙する。国務院の情報産業主管部門は、実情に基づき、目録に列挙する電信業務分類項目について局部的な調整をし、新たに公表することができる。

「電信条例」(2016年改正)

従来は外資企業による電信業務は実質不可

中国では、営利目的の電信業務(経営性電信業務)に対して許可制が採用されている。

  • 根拠法令:
    • 「電信条例」
    • 「インターネット情報サービス管理弁法」(互联网信息服务管理办法)

これらにより、「電信業務分類目録」に該当するサービスを提供する場合は、ICPライセンスの取得が必須となる。しかし、外資企業による参入には「外商投資電信企業管理規定」による制約が存在しており、

  • 基礎電信業務:参入不可
  • 増値電信業務:要件を満たしても取得困難

という状況が続いていた。

「外商投資電信企業管理規定」の改正

2022年3月29日、国務院は「一部の行政法規の改正及び廃止に関する決定(国令第752号)」を公布し、「外商投資電信企業管理規定」の改正を行った(2022年5月1日施行)。

主な変更点①:出資比率制限に例外規定追加

改正後も外国側投資家の出資比率は下記の通り制限されているが、「国家が特に規則を設けた場合を除く」という例外規定が追加された。

  • 改正後の出資比率
    • 基礎電信業務:外資比率 49%以下
    • 増値電信業務:外資比率 50%以下

第6条 基礎電信業務(無線呼出業務を除く)を経営する外商投資電信企業の外国側投資家の、企業における出資比率は、最終的に49%を超えてはならない。ただし、国家が特に規則を設けた場合を除く。 増値電信業務(基礎電信業務における無線呼出業務を含む)を経営する外商投資電信企業の外国側投資家の、企業における出資比率は、最終的に50%を超えてはならない。ただし、国家が特に規則を設けた場合を除く。

「外商投資電信企業管理規定」(修正後)

この例外規定「国家が特に規則を設けた場合を除く」により、

  • 自由貿易試験区
  • 特定分野(EC、データサービスなど)

において、外資比率制限の緩和が適用される可能性がある。なお、この「国家が特に規則を設けた場合を除く」は空言ではなく、例えば、国令第752号による「外商投資電信企業管理規定」の改正前ではあるが、特定の分野や自由貿易試験区等の特定の地区に限って外国投資者が増値電信業務に参入する場合の出資比率制限を緩和したケースがある。

主な変更点②:業績・運営経験要件の削除

改正前は、外資企業に対して以下の条件が求められていたが、今回の改正でこれらの要件は削除された。これにより、外資企業の参入ハードルは制度上大きく低下したといえる。

  • 良好な業績
  • 電信業務の運営経験

ただし、

  • 基礎電信業務については本国での許可取得が必要

という条件は引き続き維持されている(第9条の2)。

基礎電信業務を経営する外商投資電信企業の外国側の主たる投資家は、基礎電信業務への従事にかかる良好な業績及び運営経験を有すること
増価電信業務を経営する外商投資電信企業の外国側の主たる投資家は、増価電信業務経営にかかる良好な業績及び運営経験を有しなければならない

「外商投資電信企業管理規定」第9条、第10条(改正前)

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