中国で今話題の「沉浸式回家」動画とは?新たなPR手段に注目

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「沉浸式回家」動画とは?

様は「沉浸式」という言葉をご存知だろうか。中国語では、「没入型」という意味で、「沉浸式回家」とは直訳すると「没入型帰宅」という意味になる。中国では現在このような「没入型帰宅」動画がSNS上で非常に人気を集めていて、中国版インスタ「RED」でも、8万件以上の関連動画が投稿されている。

REDで「沉浸式回家」と検索すると8万件以上の投稿がヒットする。

動画の内容は、主に撮影者が仕事または外出先から帰宅後のルーティーンなどを記録した内容だが、通常のルーティーン動画と比べて、撮影者はあまり映らず、喋ることもなく、作業中の手のみが映ることが多く、視聴者にまるで撮影者の生活を体験しているような錯覚を与えることができる。投稿者は主に20-30代の独身女性がほとんどで、特にキラキラした都会のライフスタイルを記録した動画がとても人気である。

REDにて投稿された「沉浸式回家」動画、ハートの横の数字はいいね数を表している。

また、「沉浸式回家」動画はライブコマースなどに次いで、新たな有力なPR手段としてマーケティング企業から注目されている。

何故今「沉浸式回家」動画が注目されてるのか

では何故今「沉浸式回家」動画がマーケティング企業から注目されているのか。理由は以下の通りである。

①より自然に商品を露出できる

このような動画は、従来のPR手段であるライブコマースや商品紹介動画等と比べて、日常生活の中で商品をさりげなく露出しているため、押し売り感が薄く、視聴者に不快感を与えることが少ないと考えられている。

シャワー中に映るシャンプーやバスグッズ、夕食の準備に使われた便利な冷凍食品にネット注文で届いた新しいバッグなど、設定と動画の流れによってはとても自然に露出することが出来る。また、動画内で映った全ての商品が宣伝商品とは限らず、撮影者が実際に使用している愛用品も含むため、より宣伝色を薄めることができるのが特徴だ。

ただ、このような動画はライブコマースや商品紹介動画等と比べて、商品説明があまりできないため、実演することで良さが分かる便利グッズや外観がユニークな食器やインテリアなどの方が宣伝しやすく、説明が必要なスキンケア商品などは良さが伝わりにくい傾向がある。

②短時間で多くの商品を紹介できる

このような動画はライブコマース等と比べて、短時間で複数の商品を紹介できるため、非常にコスパが良いと思われる。1回で1-2時間かかるライブコマースでは通常5~10商品が紹介されるが、「沉浸式回家」動画は3-5分間で10-30商品を露出させることが出来る。

実際にとある動画を開いてみると、3分間の動画で18商品が紹介されていることが確認できる(すべてが宣伝商品とは限らない)。

帰宅後の着替えから夕食の準備、食後の運動、お風呂タイム、洗濯、スキンケアなど様々なシチュエーションがあるため、商品も食品から雑貨、バスグッズ、インテリア、スキンケア商品まで幅広く扱うことも可能である。

③ターゲットとマッチしやすい

また、この様な動画を視聴するのは主に20-30代の女性であるため、宣伝される商品(便利グッズや映える雑貨、インテリアなど)のターゲット層とマッチ度が高いこともPR業界から人気の要因でもある。視聴者の属性が分かりやすいため、宣伝側もより商品が選定しやすくなり、ピンポイントで商品を目標ターゲットに向けて紹介することが出来る。

どのような商品が紹介されているのか

では、実際にどのような商品が動画内で紹介されているのか。投稿された動画を確認してみると、これらの商品が紹介されたことが分かる(すべてが宣伝商品とは限らない)。

商品ジャンル露出商品数
便利グッズ6
冷凍食品4
雑貨3
家電2
アパレル2
スキンケア製品1
<例1:動画の長さ3分>
商品ジャンル露出商品数
便利グッズ6
雑貨4
冷凍食品3
スキンケア製品1
<例2:動画の長さ2分>

前述の通り、この様な動画では商品について多く説明できないため、便利グッズや調理が簡単な冷凍食品、映えるおもしろ雑貨など説明なしでも良さが伝わる商品の露出が多く、宣伝効果もより良くなると考えられる。

実際に某動画で撮影者が使用していたティーバッグのガチャガチャマシンは、「沉浸式回家」動画をきっかけに話題を集め、1ヶ月で1000台以上が売れた。

右下に販売数1000台以上と記載されている。

また、こちらのピアノの鍵盤を模したフックも、「沉浸式回家」動画を通して注目され、累計販売数が1万個を突破した。

右下に販売数10,000個以上と記載されている。

今後のトレンド

「中国で商品をバズらせるには宣伝が必須」と言われる程競争力が高い中国市場、ここ数年、中国でのプロモーション手段はライブ配信やインフルエンサーによる商品紹介動画が中心だったが、Z世代の消費行動がより一層理性的に変化してきている。

その傾向から、これからのプロモーション手段は、いかに宣伝色を薄め、より自然に消費者に商品の魅力を伝えられるかに変化していくと思われる。実際、弊社でも中国市場にて商品の宣伝を行う際、このことを念頭に置いて、宣伝手段と内容を選択・企画している。

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この記事を書いた人

中国海洋大学 大気科学(気象学)学科卒業。
東京都出身、学生時代を中国で過ごした後、クララ株式会社に新卒入社。出向先のセイノーアジアトレーディング株式会社にて日本企業の中国進出・販路開拓支援業務に従事。中国市場調査やリスク分析をはじめ、美容領域における中国インフルエンサーPRやライブコマース販売の企画立案、現地販売代理店の開拓支援サポート等を行う。

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