中国で拡大するオタク市場、アニメ・漫画アプリの今

目次

1. インターネットを通じたアニメ・漫画市場は順調に拡大

文化部文化市場司のまとめによれば、2016 年上半期(1-6 月)のインターネット文化市場の規模は 1017.2 億元で、このうちアニメ・漫画分野の市場規模は前年同期比 77.1% 増の 70.3 億元に上る(そのほかオンラインゲーム市場が同 24.1%増の 838.9 億元、音楽市場が同 43.5%増の 25.4 億元、生配信市場が同 209.3%増の 82.6 億元)。

現在アニメ制作会社は全国に約4,600社あり、専門技術を持つ人材はおよそ22万人、 業界全体の就業人数は 50 万人以上といわれる。2011 年にはアニメの年間制作数が385 本、時間にして22 万分に達し、質ではかなわないものの量の面では日本を超えるアニメ制作大国となっている。また漫画について、大手アプリが国内の漫画家と独占契約を 結んだり、新人漫画家の発掘に力を入れたりしており、こちらもストーリーや絵の質は別にして、インターネット上で作品を発表している漫画家は国内に相当数いることがうかがえる。

他方、作者と制作スタジオあるいはアプリ運営会社等との間で、著作権の帰属先にまつわるトラブルが散見される。さらに権利者と正式な契約を結ばずに作品を配信、掲載する海賊版アプリの問題も根深い。2015 年には騰訊(Tencent)グループのアプリ「騰訊動漫」が、 上海元酷網絡科技有限公司が運営する無料漫画アプリ 「漫画幇」について、『狐妖小紅娘』など 5 作品を違法 に掲載し、原作者および権利者の権益を侵害したとして提訴、最終的に騰訊動漫側が 32.3 万元の賠償を勝ちとった。なお「漫画幇」は資金難などを理由に 2016 年 1 月 1 日に運営を終了している。

2. アニメ・漫画はモバイルで楽しむのが主流に

Analysys 易観千帆の調査では、2016 年第 2 四半期(4-6 月)の時点で、スマートフォン 等のモバイル端末でアニメや漫画を見ているユーザーは 1644.67 万人に上る。アニメ・ 漫画アプリを利用するユーザーが最もよく利用しているのは「快看漫画」で、利用率は58.21%だった(パネル総数はモバイル端末の月間アクティブユーザー1.94 億人)。

また 1 人あたりの 1 日の平均使用時間が最も長いのは「動漫之家」で 71.05 分、逆に最も短いのは「咕咪動漫」でわずか 8.76 分となっている。アプリの平均起動回数は「快看動漫」が 1 日 4.8 回で最も多く、「咕咪動漫」は「愛動漫」と共に最も少ない 1.6 回だ った。Analysys 易観千帆は、「動漫之家」の使用時間が特に長い要因として、漫画だけでなく、ニュースや読み物、ライトノベルを豊富に取り揃えているためと分析している。

25 歳以下の青少年を対象とした調査ではあるが、インターネットで閲覧する好きなアニメ・漫画のジャンルは、コメディが最も多い 50.6%で、次いで熱血モノが 46.0%、 ファンタジーが 35.6%となっている(中国インターネット情報センター(CNNIC)調べ)。

3. 主要なアニメ・漫画アプリ

● 快看漫画 http://www.kuaikanmanhua.com

2014 年 9 月に設立された快看世界(北京)科技有限公司が運営する無料漫画アプリ。創業者の陈安妮は 1992 年生まれの女性で、漫画家でもある。

2016 年 3 月末時点の登録会員数は 3,000 万人以上で、月間アクティブユーザー数 (MAU)は 1,100 万、1 日あたりアクティブユーザー数(DAU)は 350 万。2014 年末にシリーズ A ラウンドで 300 万ドル、2015 年末には B ラウンドで 1 億元(約 1500 万ドル)の 調達に成功し、海外の有名 IP の購入やオリジナル作品の制作に投資している。

アプリは漫画を縦に読み進めるデザインで、毎日新作が公開される。作者が日常の様 子を投稿する SNS もあり、ファンとの交流も盛んだ。アプリと WEB 版ともに完全無料 で、広告も表示されない。運営側は主に作品の書籍化などで収益を得ているようだ。漫画家を目指す若者からの投稿を歓迎しており、同社の広告によると独占契約ならば 1 話 につき 500~1,200 元の原稿料が支払われるという。

● 騰訊動漫 http://ac.qq.com 騰訊(Tencent)

グループのアニメ・漫画プラットフォームで、2012 年 3 月にサービス 開始。中国、日本、韓国、香港、台湾などの漫画を 2 万タイトル以上扱っており、独占 契約を結ぶ漫画家を 500 人以上抱えている。日本の漫画家の作品だけで 500 タイトル 以上あり、うち約半分が有料タイトルだ。2013 年には集英社と版権契約を結び 「NARUTO」、「ONE PIECE」、「ドラゴンボール」など 11 作品を独占公開。2015 年 7 月 には角川とライトノベルの版権契約を結び、2016 年には講談社と「FAIRY TAIL」、「金田 一少年の事件簿」、「宇宙兄弟」など 12 作品の版権契約を結んでいる。

有料タイトルは“騰訊動漫点券”という専用仮想通貨を使って購入する。年会費 96 元の“漫画 VIP”会員(1 カ月・3 カ月・6 カ月単位でも申込可)になると 2 割引きで購入できるほか、一部の有料タイトルが読み放題になったり、イベントに参加できたりする。 騰訊グループで 8 億人のユーザーを抱えるインスタントメッセージサービス「QQ」の 漫画コンテンツ「QQ 動漫」と提携しており、さらなるユーザーの増加を狙う。

● 動漫之家 http://donghua.dmzj.com

北京凌飛天下軟件有限公司が運営する漫画とアニメの総合サービスプラットフォー ムで、中国で最も早い 2005 年にスタートしている。現在は、漫画、アニメのほか、ラ イトノベル、総合ニュース、ファンコミュニティのチャンネルを運営しており、全て無料で利用できる。

国内の漫画家の作品は 1 万 7,000 作品以上が無料で閲覧できるほか、日本の漫画は少 し古いものを中心に約 1 万 4,000 作品を揃えている。アニメは 9,700 作品ほどあり、日本のアニメが約半分の 4,200 作品を占める。総合ニュースチャンネルでは、日本を含む海外のアニメや映画、舞台の情報、声優や漫画家に関するニュース、グッズの発売日や イベント日程などがタイムリーに伝えられている。またコミュニティには作品や趣味ごとに 100 あまりのグループがあり、なかには“日本語フォーラム”や“日系音楽”も。 コミュニティの会員は約 147 万人で、2013 年 4 月には同時接続数が 5 万人を超えた記 録もある。ぼう大にある作品の全てが無料で閲覧できることに加え、ニュースが頻繁に更新されていること、コミュニティが活発なことも 1 日のアプリ起動回数や使用時間の長さにつながっているものと思われる。

● 漫画島 http://www.manhuadao.cn

2013 年末にサービスを開始した無料漫画・アニメアプリで、運営元の上海元聚網絡科技有限公司は創業者でもある劉慧敏女史が CEO(最高経営責任者)を務める。登録会員数は 3,000 万人以上、月間アクティブユーザー数は 500 万人以上。取り扱い作品数は 6 万を超えるといい、ライ センスの状況については明らかでないが日本の漫画も取り揃えている。

劉 CEO はインタビューで海外の人気作品の版権購入にも動いていると話しているが、現在は中国の漫画家による作品が中心で、小説の漫画化作品も人気コンテ ンツとなっている。

新人漫画家の育成にも積極的で、作品の条件(10 ページ以上、週 1 回更新等)を満たせば、上海の新卒初任給並みの月給 5,000 元を約束するとしている。人気作品 の書籍化や映像化などで収益をあげているようだ。

● 暴走漫画 http://baozoumanhua.com

アニメ制作やキャラクターデザインなどを手掛ける 西安摩摩信息技術有限公司が 2012 年 8 月から運営して いるアプリ。いわゆるギャグ漫画に特化しており、日常の些細な出来事や笑い話を大げさな表情でコミカルに描き、1 話あたり数コマで完結するものが多い。

中国の漫画家による連載が常に 50 本以上あり、1 日 のアクセス数は 100 万人を超える。読者からの投稿作品も多い時で 1 日 1 万件以上あるという。2013 年からは 「暴走大事件」シリーズとして実写版が毎年制作され、 アプリ内での配信が人気だ。現在は主に広告やゲーム、 グッズ販売によって収益を得ているという。

4. アニメの一部は当局が配信禁止に

文化部は 2015 年からインターネット上にある有害コンテンツ(未成年の犯罪誘発・暴力・わいせつ・テロ・公衆道徳に悪影響を与える可能性があるもの)の取締りを強化して いる。同年 6 月には中国での配信を禁じる 38 作品をブラックリストで公開しており、 これには日本の「進撃の巨人」、「寄生獣」、「暗殺教室」、「インフェルノコップ」、「東京 ESP」、「桜通信」、「DEATH NOTE」、「黒執事 3」などが含まれる。一部のアニメはかね てより中国でも配信され人気を博していたが、似た作品の配信を自主的に取り下げる動きも出ている。今後は漫画にも規制が広がる可能性があり、当局の動向に注意が必要だ。

よかったらシェアしてね!
  • URLをコピーしました!
  • URLをコピーしました!

この記事を書いた人

中国ビジネスをワンストップでご支援しています。クララは20年以上にわたり日本と中国の間のビジネスを牽引している会社で、日中両国の実務経験と中国弁護士資格を有するコンサルタントの視点・知見・ネットワーク・実行力を生かして、お客様の課題解決と企業成長を強力に支援しています。

Webサイトはこちら
>>日本企業の「中国事業支援」で実績20年以上 | クララ

目次