中国の健康食品・サプリメント市場

目次

1. 中国の健康食品とは

いわゆる健康食品は中国語で「保健食品」と呼ぶ。一般的には広く健康に役立つ食品全般を指すが、厳密には当局の審査に合格した「保健食品」とその他の「普通健康食品」 に分けられる。保健食品は 2005 年 4 月 30 日に公布された「保健食品登録管理弁法(試行)※」において、“特定の保健効能を有している食品あるいはビタミンやミネラルの補 充を目的とした食品を指し、特定の人々の摂取に適しており、体調を整える働きを備え、 疾病の治療が目的ではなく、かつ人体に急性、亜急性、慢性的に危害を与えない食品” と定められている。日本の特定保健用食品や栄養機能食品のような位置づけだ。

保健食品の認定審査は、「保健食品管理弁法(衛生部 1996 年 6 月 1 日施行)」の規定に基づいて、国家食品薬品監督管理局(CFDA)が行って いる。CFDA が定める効能と成分含有量の基準を満たしていることが 認められると、批准番号(国食健字(年号)第 XX 号)が記された「保健食品批准証書」が与えられ、商品パッケージに“青帽子マーク”と呼ばれる保健食品認定マークをつけることが許される。販売に際しては、さらに「食品安全法(2015 年 10 月 1 日施行)」に基づいて CFDA で食品流通許可証を取得する必要がある。

なお海外から保健食品を輸入する場合は、輸出国の管轄部門が発行した当該保健食品の権利所有者に関する証明書、輸出国での品質管理合格証、製品の成分配合や生産工程等に関する資料などの必要書類を添えて CFDA に商品を登録あるいは届出する必要がある。さらに中国入境検験検疫機関で商品ごとに審査を受け、輸入食品検験合格証を得てようやく輸入販売が可能となる。

2. 保健食品の市場規模

保健食品を含む広義の“健康食品”は、デパートやショッピングモール内のメーカー直営店のほか、スーパーや薬局でも購入できる。最近ではネットショッピングモールの天猫(TMALL)などに直営旗艦店を構えるメーカーもあり、越境 EC でもベビー用品に続く次の重点販売分野となっている。

保健食品の市場規模は年々成長しており、2014 年時点で 1,858 億元を超えている。ボストン・コンサルティング・グループ(BCG)は調査レポートの中で、高齢化と食品の安全性やヘルスケアへの関心の高まりを理由に、毎年 11%程度の成長が続き 2020 年には市場規模が 4,000 億元を超えると予測する。

一方で中商産業研究院は、全支出に占める保健食品の購入額の割合が欧米では 25%であるのに対し、中国はわずか 0.07%しかないことから、まだ大きな伸びしろがあると分析。2016 年の市場規模は 2,729 億元、2020 年には 4,803 億元にまで拡大すると予測している。中国で有名な保健食品ブランドには、安利(Amway)、湯臣倍健、完美、太太、交大昴立、無極限、碧生源、天獅、椰島、紫光古漢などがある。安利は日本でもネットワークビジネスで知られる米企業で、中国では高級サプリメント「纽崔莱(NUTRILITE)」の販売で圧倒的な認知度を誇る。直営店や代理店販売の形式をとっており、古いデータながら 2011 年の売上は 267 億元と同社にとって世界最大の市場だ。

また購入者を地域別にみると、広東省、浙江省、江蘇省といった沿海部の経済発展が進んだ地域に集中している。特に長江デルタ一帯だけで保健食品の売上全体の 25%を占めると言われている。

また BCG の行った調査結果によると、大都市と小都市の住民では保健食品の購入に違う傾向が表れている。購入にあたり重視するポイントについて、大都市住民は「ブランド」「安全性」「機能性」と答えた割合が僅差だったが、小都市住民は「安全性」と「機能性」をより重視していることが分かる。情報源についても大都市住民が圧倒的に「口コミ」を信頼する一方で、小都市住民はより「自身の経験」を信頼している。その一方、小都市住民は販売店舗でのセールスの影響をより受けやすい傾向にあるようだ。

3. 輸入保健食品の状況

CFDA によると、2016 年 6 月時点で登録されている国産保健食品は 1 万 5,793 件、輸入保健食品は 749 件で、このうち日本で生産・輸入されている商品は 34 件ある。

保健食品を効能別にみると、国産製品では免疫力向上が最も多い 2,952 件で、全体のおよそ 2 割を占める。一方の輸入製品では、高脂血症(脂質異常症)の改善が 134 件と最も多く、免疫力向上をうたった製品は 57 件とわずか 1 割にも満たない。

中国ではかねてから保健食品や健康食品を高齢者や友人、子供への贈り物とすることが多い。免疫力増強や疲労回復を目的とした商品はその代表とも言え、訪日旅行のおみやげ品としても好まれている。子供向けには、成長をサポートするカルシウム補給や記憶力アップをうたった商品が人気だ。

なお CFDA のサイトでは、各商品の登録詳細を確認することができる。製造企業名や所在地、CFDA への登録日、登録内容の更新記録のほか、説明書きと同じように保健効能、有効成分、原材料、用法・用量などを確認することができる。

例えば養命酒製造株式会社の「養命酒」の場合、効能は「疲労緩和、胃腸の機能改善(便通改善)」となっており、注意事項には「薬物の代替にはならない」と明記されている。ちなみに日本では、保健食品ではなく第二種医薬品と認められており、効能は「次の場合の滋養強壮:胃腸虚弱 、食欲不振、血色不良、冷え症、肉体疲労、虚弱体質、病中病後」となっている。中国への輸入販売にあたって、効能の表示を絞るなどの工夫がみられる。

※「保健食品登録管理弁法(試行)」は、2016 年 7 月 1 日の「保健食品登録届出管理弁法」施行に合わせて廃止されている。

保健食品登録届出管理弁法:http://www.sfda.gov.cn/WS01/CL1197/145380.html

保健食品登録管理弁法(試行):http://www.sda.gov.cn/WS01/CL0053/24516.html

保健食品管理弁法:http://www.sda.gov.cn/WS01/CL0056/10749.html

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