この記事について
2025年11月以降、中国政府が自国民に日本への渡航を控えるよう呼びかけたと報じられてきており、2026年6月時点でもその影響が続いていると伝えられています。
こういった報道があると注目されやすいのは旅行業界ですが、中国の訪日客の渡航自粛は、食品・農林水産業にも関わる話と言えます。
実際、日本政府は「農林水産物・食品の輸出拡大実行戦略」を掲げ、訪日前(旅マエ)・訪日中(旅ナカ)・帰国後(旅アト)の施策を連動させ、インバウンドと輸出の相乗効果を高める考え方をとっており、2030年の目標にも、輸出額5兆円と並んで、インバウンドによる食関連消費額4.5兆円が掲げられています。
本稿では、2025年5月〜2026年4月の月別データで、中国訪日客数と農林水産物の輸出額を確認します。また比較対象のために、台湾・香港も追加し、中国大陸・台湾・香港の3市場のデータを整理します。
※本記事は2026年7月に作成したもので、データは2026年4月までです。最新の数値は、日本政府観光局(JNTO)と農林水産省の公表データでご確認ください。
中国・台湾・香港の訪日客数と農林水産物輸出額の推移
訪日客数:中国だけが約3分の1に減少
日本政府観光局(JNTO)のデータによると、中国からの訪日客は2025年8月の約102万人をピークに大きく減少し、2026年4月には約33万人と、約3分の1になりました。
一方、台湾と香港は、中国ほどの落ち込みは見られません。同じ期間に、台湾は約53万〜69万人、香港は約15万〜29万人の範囲で推移しました。
※本記事の「訪日客数」は、JNTOの「訪日外客数」(総数)を指します。また、国籍別の集計で、観光以外の目的(商用・留学など)の入国者も含みます。

輸出額:3市場とも概ね横ばい
一方、農林水産省の統計によると、日本から3市場への輸出額を見ると、月ごとの増減はあるものの、1年を通じて増え続ける、あるいは減り続けるという傾向は見られず、概ね横ばいであると言えます。

訪日客と輸出額の月次伸び率チャートで見る3市場
ここからは「前年同月比」で、訪日客と輸出額の関係を見ます。以降でご紹介するグラフは、
- 横軸に訪日客数の前年同月比
- 縦軸に農林水産物の輸出額の前年同月比
をとり、1年間の月別の動きを矢印でつないだものです。市場を下記の4つのカテゴリ(象限)にわけて整理していきます。
- 【成長市場】: 訪日客も輸出も前年を上回る(右上)
- 【輸出堅調市場】: 訪日客は前年を下回るが、輸出は前年を上回る(左上)
- 【停滞市場】: 訪日客も輸出も前年を下回る(左下)
- 【輸出潜在市場】: 訪日客は前年を上回るが、輸出は前年を下回る(右下)

中国:訪日客減により【成長市場】から【輸出堅調市場】に
訪日客の前年同月比は、2025年5月の約+45%だったのが、2026年4月には約-57%となりました。一方、輸出額の前年同月比はどの月もプラスで、多くの月は5〜15%程度でした。
つまり、この期間の中国は、訪日客は激減したものの、輸出額は前年を上回り続けたということです。
下記のチャート上では、この期間で中国は【成長市場】から【輸出堅調市場】にポジションが変わっていることが読み取れます。

台湾:一貫した【成長市場】
台湾は、同期間の訪日客の前年同月比は約+2%〜+37%、輸出額の前年同月比も多くの月で10%前後と、どの月もプラスでした。下記のチャート上では、この期間の台湾は訪日客と輸出の両方が最も安定して伸びている【成長市場】のポジションに留まっています。

香港:安定した【輸出堅調市場】
香港は、同期間の訪日客の前年同月比は平均約-10%前後で推移し、大半の月が前年割れでした。また、輸出額の前年同月比は平均約+5%程度です。
下記のチャート上では、この期間の香港は安定して【輸出堅調市場】のポジションに留まっています。

2026年1月の輸出額急伸は春節影響か
また、中国・香港・台湾のいずれも、2026年1月の輸出額が、この期間の前年同月比の最高値でした。
考えられる要因の一つは春節の時期のずれです。春節は2025年が1月29日、2026年が2月17日と、約3週間ずれました。春節向けの出荷時期が変わると、1〜2月の前年同月比は大きく上下に振れやすくなると考えられます。
まとめ
- 中国からの訪日客は約102万人(2025年8月)から約33万人(2026年4月)へ約3分の1に減りましたが、農林水産物の輸出額は、どの月も前年同月比でプラスでした。
- 台湾は訪日客・輸出額とも前年比プラスの【成長市場】、香港は訪日客が前年割れの月が多く、輸出額は小幅プラスの【輸出堅調市場】でした。
- 2026年1月は3市場とも輸出額の伸び率が最高で、春節の時期のずれ(2025年は1月29日、2026年は2月17日)が影響した可能性があります。
※なお、中国の農林水産物輸出額については、水産物の輸入規制の影響が含まれますが、本記事では品目別に切り分けていません。
情報源・参考情報
訪日外客統計|JNTO(日本政府観光局)
https://www.jnto.go.jp/statistics/data/visitors-statistics/
農林水産物輸出入情報・概況:農林水産省
https://www.maff.go.jp/j/tokei/kouhyou/kokusai/joho_gaikyo.html
農林水産物・食品の輸出拡大実行戦略:農林水産省
https://www.maff.go.jp/j/shokusan/export/progress/
農林水産物・食品の輸出拡大実行戦略 ~輸出拡大等による「海外から稼ぐ力」の強化~(令和8年5月30日)
https://www.maff.go.jp/j/shokusan/export/progress/attach/pdf/index-43.pdf
中国、日本渡航自粛を呼びかけ 高市首相発言で安全に「重大リスク」:朝日新聞(2025年11月15日)
https://www.asahi.com/articles/ASTCG61DWTCGUHBI03DM.html
日本行きツアー募集の中国旅行会社、一転して募集停止…関連報道広がり中国政府から圧力か : 読売新聞(2026/06/20)
https://www.yomiuri.co.jp/world/20260620-GYT1T00204/
日本産水産物の輸入、中国が事実上の再停止 高市首相答弁に反発か – 日本経済新聞(2025年11月19日)
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUA195E00Z11C25A1000000/
中国、日本産水産物の輸入を全面停止(中国、日本) | ビジネス短信 ―ジェトロの海外ニュース – ジェトロ(2023年08月25日)
https://www.jetro.go.jp/biznews/2023/08/153fa14cd46332bf.html
※本文中のデータは四捨五入により、合計と小計が一致しない場合があります。
※本文中の表・グラフは、データ元の情報を参考にし、弊社で作成しました。
中国市場の消費動向・マクロ環境に関心をお持ちの方へ
本記事では、中華圏における訪日客数と農林水産物の輸出額の関係を整理しました。
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