中国データ三法|「重要データ」の定義と識別基準まとめ

目次

はじめに

「重要データ(重要数据)」は、中国データ三法の中でも特にグレーゾーンが強い概念です。初出の法律そのものには重要データとは何を指すかについては明確な説明はなく、下位の国家標準や業界別のガイドラインによって徐々に輪郭が示されてきた、という経緯があります。

本記事では、重要データという概念がどこで生まれ、現在どのような基準で識別されているのかを整理します。本記事では判断の土台となる基礎情報や考え方などを整理します。

なお、「自社のデータが重要データに該当するか」の正式な判断などは外部専門家に確認されるのをおすすめします。

※本記事は更新時点(2026年8月)の情報に基づいています。なお、データ三法の全体像や具体的なデータ越境移転の手続き(安全評価など)については下記記事で整理しています。

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「重要データ」はどこで生まれた概念か

「重要データ」という言葉は、サイバーセキュリティ法で初めて登場しました。この条文では、重要インフラ運営者に対して重要データの国内保存を義務付けるとともに、国外への提供が必要な場合には「安全評価」を実施すべきことが示されています。ただし、「重要データとは何か」という定義そのものは、この条文には書かれていません。

关键信息基础设施的运营者在中华人民共和国境内运营中收集和产生的个人信息和重要数据应当在境内存储。因业务需要,确需向境外提供的,应当按照国家网信部门会同国务院有关部门制定的办法进行安全评估;法律、行政法规另有规定的,依照其规定。(重要インフラ運営者が中国国内での運営において収集・発生した個人情報及び重要データは、国内で保存しなければならない。業務上の必要により、やむを得ず国外に提供する場合は、国家インターネット情報部門及び国務院関係部門が定める弁法に従い安全評価を実施しなければならない。法律・行政法規に別段の定めがある場合は、その定めに従う)

《中华人民共和国网络安全法》第39条

その後、データセキュリティ法において、重要データの保護を強化する枠組みと、それよりさらに機微度の高い「国家核心データ(国家核心数据)」という概念が示されました。あわせて、重要データの具体的な範囲(分類目録)を定める役割は、国レベルの制度を踏まえつつ、各地域・各部門に委ねられています。

国家建立数据分类分级保护制度,根据数据在经济社会发展中的重要程度,以及一旦遭到篡改、破坏、泄露或者非法获取、非法利用,对国家安全、公共利益或者个人、组织合法权益造成的危害程度,对数据实行分类分级保护。国家数据安全工作协调机制统筹协调有关部门制定重要数据目录,加强对重要数据的保护。 关系国家安全、国民经济命脉、重要民生、重大公共利益等数据属于国家核心数据,实行更加严格的管理制度。 各地区、各部门应当按照数据分类分级保护制度,确定本地区、本部门以及相关行业、领域的重要数据具体目录,对列入目录的数据进行重点保护。(国家はデータ分類・分級保護制度を確立し、経済社会の発展におけるデータの重要度、及び改ざん・破壊・漏えい・不法取得・不法利用された場合に国家安全、公共利益又は個人・組織の適法な権益にもたらす危害の程度に応じて、データの分類・分級保護を実施する。国家データ安全業務協調機関は関係部門を統括・協調し、重要データ目録を制定し、重要データの保護を強化する。 国家安全、国民経済の命脈、重要な民生、重大な公共利益等に関わるデータは国家核心データに属し、より厳格な管理制度を実施する。 各地域、各部門はデータ分類・分級保護制度に基づき、管轄地域、管轄部門及び関連業界・分野の重要データの具体的な目録を確定し、目録に記載されたデータについて重点的な保護を実施しなければならない)

《中华人民共和国数据安全法》第21条

サイバーセキュリティ法:「重要データ」という言葉が初めて登場し、国内保存義務と越境時の安全評価の必要性が示された(ただし定義はなし)

データセキュリティ法:重要データの保護を強化する制度枠組みと、より上位の「国家核心データ」という概念が示された。ただし、重要データの具体的な範囲(分類目録)を定める作業は、国レベルの枠組みのもと、各地域・各部門及び下位の標準・規則に委ねられている

つまり、「重要データを守るべきこと」自体は法律に明記されていますが、「何が重要データに当たるか」という具体的な線引きは、法律より下位の標準・規則に委ねられている、という構造になっています。

現在の識別基準:GB/T 43697-2024

「重要データの具体的な線引き」については、これまで意見募集稿(パブリックコメント段階の草案)の形で示されたのちに、2024年3月に正式な国家標準として発布されました。

  • GB/T 43697-2024《数据安全技术 数据分类分级规则》(推薦性国家標準)
  • 発布:2024年3月/施行:2024年10月1日
  • 全国網絡安全標準化技術委員会(TC260)が策定

「推薦性」標準であるため法的な強制力そのものはありませんが、重要データの識別基準として実務上広く参照されています。なお、GB/Tは日本でいうJIS規格に相当するもので、下記の記事で詳しく解説しています。

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重要データの定義

同標準( GB/T 43697-2024 )に基づくと、重要データとは特定の分野・集団・地域に関するデータ、または一定の精度・規模に達したデータであって、漏えいまたは改ざん・毀損した場合に、国家の安全、経済の運営、社会の安定、公衆衛生及び安全に直接危害を及ぼす可能性があるものを指すとされています。

◆「一般データ/重要データ/核心データ」の3層構造

区分位置づけ
一般データ上記のいずれにも該当しないデータ
重要データ上記の定義に該当するデータ
核心データ重要データのうち、より広い範囲・高い精度・大きな規模で、
違法に使用・共有された場合に政治的安全に直接影響を及ぼしうるもの
(根拠:データセキュリティ法第21条、前述)

「重要データ」よりさらに機微度の高い「核心データ」という上位区分が存在する、という点は、意見募集稿の段階にはなかった整理です。自社データが重要データに該当しそうな場合、それが核心データに近いレベルのものかどうかも、あわせて意識しておくと良さそうです。

業界別の識別ガイドも存在する

GB/T 43697-2024は全業種に共通する枠組みですが、これに加えて例えば下記のような業界ごとの重要データ識別ガイドの整備が進んでいます。

  • 工業領域重要データ識別指南(YD/T 4981-2024、2024年12月10日発布/2025年4月1日施行)
  • 電信領域重要データ識別指南(YD/T 3867-2024、2024年7月5日発布/2024年10月1日施行、YD/T 3867-2021の改訂版)
  • 車聯網プラットフォーム重要データ識別指南(YD/T 6617-2025、2025年12月17日発布/2026年4月1日施行)

いずれも中国通信標準化協会(CCSA)が策定し、工業和信息化部が発布した業界標準です。

製造業など、特定の業界に該当する場合は、全業種共通の基準に加えて、こうした業界別ガイドの有無・内容を確認しておくことが望ましいです。該当する業界別ガイドがあるかどうか、内容がどうなっているかは、個別確認をお勧めします。

重要データに該当する場合、何が必要になるか

重要データに該当するデータは、原則として中国国内での保存が求められます。
そして、中国国外に持ち出す(越境移転)する場合は、安全評価などの手続きが必要になる場面があります。
具体的な手続きの流れについては、別記事で解説していますので、あわせてご参照ください。

自社データの棚卸しを始める際の視点

「自社のデータが重要データに該当するか」を自己判断で断定することはお勧めできませんが、棚卸しの出発点として、次のような視点を持っておくと役立ちますなお、該当する可能性がある、というだけであり、実際の該当性は個別確認が必要です。

  • 生産設備の稼働データ、工場のセンサーデータなど、重要な産業インフラの運用状況を反映するデータ
  • 輸出管理の対象となりうる技術情報(設計、製造プロセス、重要なパラメータ等)
  • サプライチェーンに関する非公開情報(重要な仕入先・顧客のリスト等)
  • 大量の個人情報をもとに作成した統計データ・分析データ(個人情報そのものではなくても、重要データに該当しうる点に注意)
  • 地理情報、気象・環境観測データなど、一定の精度・規模に達した基礎データ

まずは、自社のどの業務・システムがこれらに近いかを洗い出すことが、重要データ対応の第一歩になります。判断に迷う場合は、専門家への相談を検討することをお勧めします。

情報源・参考資料

《中华人民共和国网络安全法》 中央网络安全和信息化委员会办公室
https://www.cac.gov.cn/2025-12/29/c_1768735112911946.htm
《中华人民共和国数据安全法》 中央网络安全和信息化委员会办公室
https://www.cac.gov.cn/2021-06/11/c_1624994566919140.htm
GB/T 43697-2024《数据安全技术 数据分类分级规则》
https://openstd.samr.gov.cn/bzgk/std/newGbInfo?hcno=F0C385EDC38CBF277AEC021F23126ADE
中国通信標準化協会(CCSA)
https://www.ccsa.org.cn/

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本記事では、重要データの分類について解説しました。中国におけるデータ規制は頻繁にアップデートされており、正確な理解と適切な対応が求められます。

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