中国では2010年代後半から、健康的な食事の代わりとして、あるいはバランスのとれた栄養補給を目的として、様々な種類のライトミールやミールリプレイスメント製品(食事代替品)が登場した。都市部を中心に人々の健康志向が高まっていることを背景として市場規模は年々拡大しており、健康や美容を目的に不足する栄養素を補給するために、あるいは栄養のある食事の代わりとしてミールリプレイスメント製品を購入する消費者の増加が伺える。
ミールリプレイスメント製品はいずれも、甘さ控えめ、低脂肪、減塩、食物繊維豊富、高たんぱく、ゼロカロリーといったポイントをアピールしており、さらに、新鮮な食材を使用していること、素材本来の味や風味を生かしていること、簡単に調理ができることなどを消費者に訴える商品も多い。特に近年は、フィットネスクラブやフィットネス用アプリがライトミールやミールリプレイスメント製品を開発してビジネス展開するケースも珍しくない。
ミールリプレイスメント製品の市場規模
観研報告網の調査によれば、ミールリプレイスメント製品の市場規模は、2017年にわずか58.2億元だったが、2021年には924.3億元、2022年には1321.8億元に達したと予測される。
関連メーカーは広東省と北京市を中心に全国に分布しており、2022年8月時点で最もメーカー数が多い広東省は627社、北京市には494社が所在している。
ECで人気のミールリプレイスメント製品ブランド
現在中国で人気のあるミールリプレイスメント製品は、大きく分けてダイエットをアピールする製品と、高たんぱくや低脂肪といった特徴で健康に寄与することをアピールする製品があり、ダイエット目的の製品は7日分セットのような形で販売されていることも多い。
食事として位置づけられている製品では、日本でいう丼物のようなご飯におかずがかけてあるもの、お粥、麺類の種類が豊富だが、パンやパスタ、スープのような洋食メニューの商品はあまり見かけない。食事としてのミールリプレイスメント製品の多くは、レンジで温めるだけで食べられる手軽さが人気の理由の一つで、完全栄養食ではないものの、低カロリー、低脂肪、低糖質、あるいは高たんぱくといった特徴をアピールしている。
一方、軽食や間食向けの商品では、プロテインバーやプロテインウエハース、全粒粉を使ったクッキーといったもののほか、中国で人気のある肉製品も種類が豊富だ。冷蔵が不要な鶏胸肉やささみの燻製、ビーフジャーキー、肉団子等もそろう。
ここではECで人気のミールリプレイスメント製品ブランドを紹介しよう。参考までに商品の価格を掲載しているが、これは京東(JD)や天猫(Tmall)における執筆時の販売価格である。
Smeal
2017年に創業したニュージーランドのミールリプレイスメント製品メーカー。国立マッセー大学食品研究所と共同開発した食事置き換え用シェイク、プロテインクッキー等を扱っている。海外ブランドであるが価格は抑えめ。
ダイエット用置き換えシェイク 3日分6本 125元
プロテインクッキー 25g12袋 65元
Wonder Lab
2019年に創設した深圳精准健康食物科技有限公司による健康栄養食品ブランド。プロテインシェイクのほか、乳酸菌パウダー、食物繊維パウダー、ヒアルロン酸やGABA配合のグミ等の美容サプリメント領域を得意としている。小瓶に入った乳酸菌パウダーは、2020年6月の発売開始から約2年でオンライン販売数1億瓶を突破。
食事置き換え用プロテインシェイク 6本 149元
乳酸菌パウダー 7日分7瓶 89元、1カ月分30瓶 296元
玉鶴鳴
2015年に設立された南京玉鹤鸣医学营养科技股份有限公司のミールリプレイスメント製品ブランド。同社は医学用の特殊配合食品も手掛けており、中国国内の100を超える三級甲等医院(最もランクの高い大病院)と長期的なパートナーシップを結んでいる。ローカーボシェイク、糖質ゼロシェイク、食物繊維パウダーなどを扱っており、朝食の置き換えダイエット食品としても販売されている。
ローカーボシェイク 15瓶 286元
食物繊維パウダー 21包 118元
ffit8
2019年に北京市で創業した北京幸福能量健康科技有限公司によるミールリプレイスメント製品ブランド。プロテインバー、プロテインウエハース、プロテインドリンク、粉末プロテイン等を扱う。創業翌年の2020年にはプロテインバーを1050万本販売し、年間売上は1.17億元に上った。
プロテインバー チョコレート味 7本 109元
プロテインロールクッキー ストロベリー味 6本 34.9元
王飽飽
杭州饱嗝电子商务有限公司が2017年に商標登録したシリアルを中心とする ミールリプレイスメント製品ブランド。2018年からTmallで販売をはじめ、初年度は双11で1日300万元を売り上げた。20~30代の若い女性をターゲットにしており、2カ月おきに新フレーバーの商品を投入している。
オートミール(コーヒー・ドライフルーツ味)1袋460g 55.9元
餡入り全粒粉パン 7種類7個セット 39.9元
鯊魚菲特(SharkFit)
山东鲨鱼菲特健康科技有限公司が2017年に創設したミールリプレイスメント製品ブランド。主に男性をターゲットにしており、手軽に食べられて高たんぱくな鶏胸肉や牛肉の加工品が中心。ほかにも脂質ゼロの麺類、全粒粉パン等を扱う。創業してすぐの2017年の双11では、鶏胸肉の加工品類の売上が1日で13万元に達し、翌年の2018年には年商1000万元を突破している。
純鶏胸肉100g 10袋 58.9元
全粒粉パン 10枚 29.9元
超級零
闪电计划(北京)生物科技有限公司が2017年に創設したミールリプレイスメント製品ブランド。レンジで温めるだけの低カロリー丼シリーズやパスタシリーズは、3日間置き換えで2.5㎏減セット、7日間置き換えで4㎏減セットといった見せ方でも販売している。2019年には天猫に出店して8カ月で1億元を売り上げた。
7日間置き換え4㎏減セット 279元
牛肉雑穀丼 6個 159元
野獣生活
2015年に北京で創立した野兽生活(北京)食品科技有限公司が運営するブランドで、「理想燃料」と「丟糖」の2つのシリーズがある。「理想燃料」はダイエットやフィットネスに特化したプロ仕様のシリーズで、エナジーバー、プロテインシェイク、食物繊維パウダー、ケトジェニックコーヒーなどがある。「丟糖」は、体重管理やローカーボをテーマに、糖質や糖分の多い主食やおやつを無糖に改良した食品をそろえており、麺類、カリフラワーライス、無糖ミルクティー、間食用ナッツといったものがある。
理想燃料 コーヒーシェイクエネルギーボトル 15瓶 299元
理想燃料 ケトジェニックプロテインバー 1箱5本 118元
Keep
2014年に創業した北京卡路里科技有限公司は、創業当初はフィットネスジムを運営し、ランニングマシンやフィットネス用アパレル製品、フィットネスアプリ等を手掛けるスポーツブランドだったが、2019年ごろからフィットネスや健康をテーマにしたミールリプレイスメント製品にも事業を拡大。朝食の代わりに食べられる栄養食としてのお粥、全粒粉パン、こんにゃく麺、低脂肪丼、プロテインバー、電解質飲料粉末などを扱う。2020年には食品類の売上が10億元を超え、事業全体の25%を占めるまでになっている。
鶏胸肉燕麦チャーハン 1食230g 19元
プロテインバー 30g7本 89元
薄荷健康
2008年に創業した上海薄荷健康科技股份有限公司が展開する総合ヘルスケアブランドで、栄養管理アプリの「薄荷健康」でも知られている。2015年頃からオリジナルブランドのミールリプレイスメント製品の開発に取り組み、お粥、低脂肪丼、全粒粉パン、インスタントラーメン、春雨といった主食から、プロテインバー、プロテインシェイク、肉加工製品、クッキーやビスケットのお菓子類まで豊富なラインナップが揃う。
カロリーコントロール食21日分セット 1880元
低脂肪砂糖ゼロ全粒粉パン 8個 39.9元
若者はミールリプレイスメント製品の購入に積極的
健康補助食品メーカーの康宝莱(HERBALIFE、米ハーバライフの中国法人)が新華網と共同で1980~1990年代生まれ(当時23~42歳)の消費者を対象に行ったミールリプレイスメント製品の消費に関する調査結果によれば、回答者の99%がミールリプレイスメント製品を知っており、購入したことがある人は95%に上った。まだ購入していない人のうち59.9%はいつか購入したいと回答している。
またミールリプレイスメント製品の購入予算は、1カ月あたり1,000元前後(約19,000円)と答えた人が41.8%に上っており、ミールリプレイスメント製品がすでに食事の重要な選択肢となっている様子がうかがえる。
ミールリプレイスメント製品を週に3回以上食べている人は58%に達し、食べ始めてから3カ月以上という人は57%に上っている。食べるタイミングでは、朝食が45.8%、夕食が37.9%となっているが、昼食や午後のおやつにという人もそれぞれ17.8%と17.9%いた。
ミールリプレイスメント製品を食べる目的は、体重管理のためが51.4%、食事の時間がとれないためが49.7%で、実際に44.5%がミールリプレイスメント製品を食べることでダイエットに成功したり、筋トレにプラスになったと回答している。
ミールリプレイスメント製品で重視する栄養成分としては、タンパク質が54.9%、食物繊維が48.0%、ミネラルが39.6%、ビタミンが23.9%、適量の炭水化物が37.6%となっている。
購入時に最も注意するポイントでは、食品の安全性が77.6%、機能的なニーズ(低カロリー等)が51.4%、満腹感が50.8%、ブランドの研究開発力が42.0%、原料の科学的な配合が21.9%だった。
※本調査は2022年に全国33の省・直轄市に住む消費者に対して行われた。有効回答数は約1.4万件で、回答者のうち男性が59.9%、女性が40.1%、年代別では1980年代生まれが56%、1990年代生まれが41%となっている。