日系企業にも影響する「化粧品登録届出管理弁法」とは

2021年1月7日、国家市場監督管理総局は「化粧品登録届出管理弁法」を公布した。2021年5月1日より施行されている。本稿では、化粧品登録届出管理弁法の重要なポイントを整理し、最後に日系企業への影響についてまとめている。

1. 総則

中国国内における化粧品と化粧品の新原料の登録、届出、およびその監督管理について本弁法を適用する。(2条)

特殊化粧品および比較的高リスクの化粧品新原料には登録管理を行う。普通化粧品およびその他の化粧品新原料については届出管理を行う。(4条)

国家薬品監督管理局が、特殊化粧品、輸入普通化粧品、化粧品新原料の登録および届出の管理を行う。省・自治区・直轄市の薬品監督管理部門が、管轄行政区域内の国産普通化粧品および国家薬品監督管理局から委託された輸入普通化粧品に関する届出の管理を行う。(5条、6条)

化粧品・化粧品新原料の登録者および届出者は、当該製品の品質の安全性に責任を負う。(7条)

登録人・届出人が海外にいる場合、中国国内の企業法人を国内の責任者として指定しなければならない。国内の責任者は次に列挙する義務を履行しなければならない。(8条)

  • 登録者・届出者の名義にて、化粧品・化粧品新原料の登録または届出を行う。
  • 登録者・届出者と協力して、化粧品の副作用および化粧品新原料の安全性に関するモニタリングと報告作業を実施する。
  • 登録者・届出者と協力して、化粧品・化粧品新原料のリコールを実施する。
  • 登録者・届出者との協議に基づき、中国国内で販売する化粧品・化粧品新原料の品質に対する安全責任を負う。
  • 薬品監督管理部門の監督検査に協力する。

登録・届出は、化粧品・化粧品新原料登録届出情報サービスプラットフォームを通じて行う。(10条)

2.化粧品新原料の登録と届出管理

中国国内で初めて使用する化粧品の天然または人工の原料を化粧品新原料という。すでに使用されている化粧品原料の使用目的や安全な使用料などを調整して使用する場合も新原料として登録・届出が必要となる。(12条)

防腐、日焼け防止、着色、カラーリング、シミ対策・美白の効果を備えた化粧品新原料は、国家薬品監督管理局の技術審査機構によって登録の可否を審査する。その他の化粧品新原料は、国家薬品監督管理局の求める資料を提出することで届出が完了する。(13条~18条)

登録・届出をおこなった化粧品新原料の安全性モニタリング期間は3年間とし、毎年新原料の使用状況及び安全性に関する年度報告書を国家薬品監督管理局に提出しなければならない。(19条、21条)

次に列挙する状況が発生した場合、化粧品新原料の登録者・届出者は速やかに調査を実施し、技術評価機構へ報告しなければならない。(22条)

  • 海外の国や地域で、同類の原料の使用により重篤な副作用が発生したか、または集団で副作用が発生したことが確認された場合
  • 海外の国や地域の化粧品に関する法令や標準規格で、同類の原料の使用基準値の引き上げ、使用制限、または使用禁止が行われた場合
  • その他の化粧品新原料の安全性に関わる状況

3.化粧品の登録と届出管理

化粧品の登録者・届出者は、次に列挙する条件を備えていなければならない。(28条)

  • 法律に基づいて設立された企業またはその他の組織である
  • 登録・届出を行う化粧品に相応の品質管理システムを有している
  • 副作用の監測及び評価能力を備えている

化粧品の登録者・届出者は、使用する化粧品原料の安全性に責任を負う。化粧品の登録・届出時に、原料の仕入れ先および原料の安全性に関する情報を明らかにしなければならない。(30条)

普通化粧品は販売開始または輸入する前に、届出者が情報サービスプラットフォームから届出に必要な書類を提出することにより、届出完了とする。(34条)

普通化粧品の届出者は、管轄の薬品監督管理部門に生産・輸入の状況および法令、強制性国家標準規格、技術規範に準拠しているかについて毎年報告しなければならない。(37条)

特殊化粧品は、生産および輸入する前に、登録申請者が国家薬品監督管理局に技術評価の申請を行う。技術評価に合格した特殊化粧品には、化粧品登録証を発行する。化粧品登録証の有効期間は5年間とする。(38条~40条)

4.監督管理と法的責任

技術審査機構による登録のための技術審査では、必要に応じて現場検査を実施できる。国内の現場検査は45営業日以内に完了する。海外の現場検査は、海外での検査に関連する規定に基づいて実施する。(47条)

化粧品・化粧品新原料の登録者が、本弁法の規定に従って特殊化粧品・化粧品新原料の変更登録を行わなかった場合、改善を命令し警告した上で、1万元以上3万元以下の過料を科す。化粧品・化粧品新原料の届出者が、普通化粧品・化粧品新原料に関する届出内容を更新しなかった場合、改善を命令し警告した上で、5000元以上3万元以下の過料を科す。(56条)

化粧品新原料の登録者・届出者が本弁法21条の規定に違反して、年度報告書の提出を怠った場合、省レベルの薬品監督管理部門が改善を命じる。改善を拒否した場合、5000元以上3万元以下の過料を科す。(57条)

5.附則

化粧品の内容物が接触する最後のプロセスが中国国内で完成するものを国産製品とし、海外で完成するものを輸入製品とする。台湾、香港、マカオで完成するものは輸入製品として管理する。(61条)

見解とポイント

本弁法は国務院が制定し、2021年1月1日より施行されている「化粧品監督管理条例」に関連するもので、化粧品および化粧品新原料の登録届出制度や安全監測制度、届出者・登録者の安全に対する責任などについて詳細に定めている。

本弁法では、化粧品や新原料の安全性と管理に重きを置いており、36条では正当な理由なく化粧品の名称や宣伝する効能を変更したり、製品の配合を自由に変更したりしてはならないことが明確に規定された。これにより、いったん市場から排除された製品が違う名前で再度流通したり、勝手な配合の変更によって健康被害が発生したりするといった事故を未然に防ぐことが期待される。また22条では、化粧品新原料の登録者・届出者に対し、海外で発生した副作用や原料の使用規制に関する情報提供を義務化しており、当局が化粧品による健康被害の発生にいち早く対応しようとする姿勢が伺える。

さらに8条では、登録者・届出者が海外にいる場合に、中国国内の法人を責任者として指定することを求めている。実務上、当該化粧品の輸入販売を行う輸入事業者や販売総代理が国内責任者になることが想定されるが、リコールの実施や安全性に関する責任を負うなど、以前に増して大きな責任が課されることから、中国で化粧品を販売する日系事業者においては信頼できるパートナーの選定が重要になる。

また47条では、技術審査における生産現場の検査を許可しているが、中国国内はもとより海外にある生産工場の検査も可能としていることに留意したい。

本弁法は中国で化粧品やその原料を販売しているか、あるいは中国で化粧品の製造委託を行っている日系事業者に影響が生じることから、「化粧品監督管理条例」と合わせて対応したい。

公式リンク(中国語) http://gkml.samr.gov.cn/nsjg/fgs/202101/t20210112_325127.html


本レポートはクララオンラインが発行する「中国法令アラート 2021 年 1 月号」の内容を一部抜粋、編集したものです。「中国法令アラート」では、最新の法令・制度変更に関する詳細および予想される日系企業への影響、実務で得た動向変化に関する情報等を毎月 PDF でお届けしています。

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この記事を書いた人

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