成長を続ける中国のペット関連市場

目次

1. ペットブームが本格到来

中国はペット産業の市場規模でも日本を抜き、米国に次いで世界 2 位の規模を誇る。 犬を飼う人をターゲットにしたポータルサイト「狗民網」が 2018 年 8 月に発表した 「2018 年中国ペット産業白書」によれば、中国のペット産業の市場規模は 2017 年時 点で 1,708 億元(約 2.7 兆円)となっており、前年比の伸び率は 27%に上る。

市場は急速に伸びており、2010 年から 2016 年の 7 年間の年間複合成長率は 49.1% に上る。このままいけば 2020 年には 2,000 億元(約 3.2 兆円)を突破するとの見通しで、 「爆買い」ならぬ「爆飼い」ブームが押し寄せている。

中国では全国でおよそ 5,648 万世帯が犬・猫を飼っている。飼育頭数は犬が 5,085 万 頭、猫が 4,064 万頭で、合計 9,149 万頭に上る。世帯数でみても、犬を飼っているのが 3,390 万世帯、猫が 2,258 万世帯と、圧倒的な犬人気が特徴だ。国家統計局の調査によ れば、2017 年時点で全世帯数のおよそ 17%が何らかのペットを飼っているという。

一方の日本は、およそ 1,300 万世帯が犬・猫を飼っており、飼育頭数は犬が 890.3 万 頭、猫が 964.9 万頭の合計 1855.2 万頭となっている(2018 年、ペットフード協会調べ)。 数年前に猫の飼育数が犬を抜いたと話題になったことを覚えている人も多いだろう。

米国は、犬が 6,020 万世帯で 8,970 万頭、猫が 4,710 万世帯で 9,420 万頭となってい る。猫は複数飼いすることが多いことから、米国でもやはり猫の数の方が多くなってい る(2017 年、米ペット用品協会 APPA 調べ)。

2. 飼い主の中心は若者

中国のペット産業をけん引するのは、80 後から 90 後(1980~1990 年代生まれ)の若 者だ。彼らは年を追うごとに生活水準が向上しているが、仕事や生活にかかるストレス とプレッシャーが大きいためペットに癒しを求めている、という見方が一般的だ。

ある程度の収入があるため、「家族の一員」としてペットの食事に気を配り、定期的 に動物病院に通って健康に注意し、シャンプーやトリミングのために病院やサロンを訪 れたり、おもちゃなどを買い与えたりと、ペットのいる生活を楽しんでいる様子がうかがえる。

犬の飼い主は、全体の 75.3%を 80 後から 90 後の若者が占めている。男女比は男性 が 12.5%であるのに対し、女性が 87.5%と大半を占める。

一方、猫の飼い主は、全体の 79.0%を 80 後から 90 後の若者が占めている。男女比 は男性が 11.2%、女性が 88.8%を占める。犬の飼い主と同じく、4 年制大学あるいは大 学院を卒業した人が 58.4%と過半数を占めている。全体では、猫の飼い主の方がやや若 く、わずかながら女性が多く、高学歴といった傾向がみられる。

ちなみに飼い始めた理由は、犬の飼い主の 51.9%、猫の飼い主の 45.7%が「犬・猫が 好きだから」と答えている。犬では理由の 2 位が「精神的な支え・楽しみを増やすため」 で 21.1%、3 位が「里親になった」で 15.4%だが、「プレゼントにもらった」が 2.7%、 「衝動的に」が 0.7%、「他人が飼っていて欲しくなった」も 0.3%あった。猫では、理 由の 2 位が「里親になった」で 28.5%と多く、「精神的な支え・楽しみを増やすため」 が 18.6%と続いた。「プレゼントにもらった」は 1.4%、「衝動的に」は 0.5%、「他人が 飼っていて欲しくなった」は 0.2%と、いずれも犬に比べて少ない傾向がある。

実際、ペットの入手経路についても犬は「購入」が最も多い 43.9%で、「もらった」 が 27.3%と続くが、猫は「購入」が 25.3%であるのに対し、「拾った」が 32.6%と最も 多く、次いで「里親になった」が 19.9%となっている。

3. ペット消費のうちわけ

2018 年のペット(犬・猫)に関する消費額は、1 頭平均 5,016 元で、前年の 4,348 元に 比べ 15%増加している。犬に関する消費額は 1 頭平均 5,580 元、猫は 4,311 元だった。

消費額の内訳をみると、犬では全体の 72%を占める商品購入のうち、フードが 36% を占め、犬用品、犬用おやつと続く。サービス利用は全体の 28%で、このうち医療サー ビスが 15%を占め、シャンプー・トリミングが続く。

対する猫は、商品購入が消費全体の 82%を占めており、特にフードの購入が 44%を 占める。次いで、猫用品、猫用おやつと続く。サービス利用は 18%と少なく、医療サー ビスが 14%で、シャンプー・トリミング等はわずかな比率となっている。

フードの購入では、犬、猫ともにドライフードを購入する比率が最も高い。ついで犬 ではおやつ、猫ではウェットフードとなっており、手作り食もそれぞれ 3 割強に上る。 特に犬ではいわゆる残飯を与えている人も約 1 割いる。フードの平均購入金額は 1 カ 月あたり犬が 335.2 元、猫が 359.3 元となっている。

なお、おやつでは犬はジャーキーの購入が最も多い 92.1%で、歯磨きガムが 82.1%と 続く。猫ではジャーキー・煮干しが 82.1%で最も多く、マタタビが 71.1%、猫草が 65.0%、 「ちゅ~る」のようなペースト状のおやつ(中国語で「猫条」という)が 43.1%と続く。 おやつの平均購入金額は 1 カ月あたり犬が 173.6 元、猫が 177.2 元となっている。

犬・猫の飼い主ともに関心の高い健康食品では、犬はミネラルやカルシウムといった 発育に関する商品の購入が最も多く、次いで胃腸の調子を整える商品に人気がある。

猫では、毛玉ケアに関する商品が 80%と最も多く、胃腸の調子を整える商品が続い ており、発育に関する商品への関心は犬に比べて低いことがわかる。サプリメントの平 均購入金額は年間で犬が 408.5 元、猫が 473.2 元となっている。

サービス消費で最も多い医療サービスでは、犬では 82.5%がワクチンの接種、63.1% が寄生虫の駆除を受けている。中国では動物病院にペットサロンが併設されていること が多く、シャンプー・トリミングのために動物病院を訪れる飼い主も 58.2%いるが、避 妊・去勢手術は 22.0%と低い。平均サービス消費額は年間で 1557.2 元となっている。

また猫ではワクチンの接種が 69.9%、避妊・去勢手術が 57.9%、寄生虫駆除が 55.9% となっており、シャンプー・トリミングは 24.6%にとどまる。平均サービス消費額は年 間で 1446.1 元となっている。

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