2022年1月4日、国家インターネット情報弁公室など4部局は「インターネット情報サービスのアルゴリズムレコメンド管理規定」を公布した。2022年3月1日から施行されている。
中国国内のサービス等にアルゴリズムを用いたレコメンド機能を導入している事業者では、本規定に基づいた対応が急務となる。
本稿では、インターネット情報サービスのアルゴリズムレコメンド管理規定の重要なポイントを整理し、最後に日系企業への影響についてまとめている。
対象
中国国内において、アルゴリズムを使ったレコメンド機能を応用するインターネット情報サービス(以下、アルゴリズムレコメンドサービスという)を提供する場合に本規定を適用する。
用語の定義
この「アルゴリズムを使ったレコメンド機能の応用」とは、生成・合成、パーソナライズされたプッシュ通知、ソート・選択、検索・フィルタリング、スケジューリング・意思決定等のアルゴリズム技術を利用して、ユーザーに情報を提供することを指す。(2条)
サービス提供者の義務と禁止行為
アルゴリズムレコメンドサービスを利用して、国家の安全や社会公共の利益を脅かす、経済や社会の秩序を乱す、他人の合法的な権益を侵害する等の法令、行政法規で禁止されている活動を行ってはならない。また法令、行政法規で禁止されている情報を流布してはならず、不良情報の流布を防止、抑制する措置を講じなければならない。(6条)
違法・不良情報を識別するための特徴データベースを構築し、データベースに収載する基準、規則、プロセスを整備しなければならない。違法な情報を発見した場合は、直ちに送信を停止し、インターネット情報部門および関連部門に報告しなければならない。不良情報を発見した場合、ネットワーク情報コンテンツのエコロジーガバナンスに関する関連規定に従って対処する。(9条)
アルゴリズムを利用して、アカウントの虚偽登録、不正取引、ユーザーアカウントの操作、または虚偽の「いいね」、コメント、情報の転送を行ってはならない。アルゴリズムを利用した情報の遮断、過剰な推薦、ランキングや検索結果の表示順の操作、検索トレンドや特集の制御等を行って情報提示の妨害やネット世論への影響力の行使、監督管理を回避する行為を行ってはならない。(14条)
アルゴリズムを利用して、独占的および不正な競争行為を行ってはならない。(15条)
ユーザーの権益保護に関する義務
ユーザーにアルゴリズムレコメンドサービスを提供していることを分かりやすく告知し、アルゴリズムレコメンドサービスの基本原理、目的、意図及び主な運用メカニズムを適切な方法で公表しなければならない。(16条)
ユーザーに個人の特性を対象としない選択肢を提供するか、又はアルゴリズムレコメンドサービスを停止するための選択肢を提供しなければならない。(17条)
未成年者にサービスを提供する場合、法令に基づいてインターネット上の未成年者保護義務を履行し、未成年者の利用に適したモデルの開発及びその特性に適したサービスの提供を行わなければならない。(18条)
高齢者にサービスを提供する場合、高齢者の旅行、医療、消費、仕事に対するニーズを十分に考慮して高齢者向けスマートサービスを提供し、法令に従ってオンライン詐欺に関わる情報の監視、識別、対処を行わなければならない。(19条)
消費者に商品の販売又はサービスの提供を行う場合、消費者の嗜好、取引の習慣等の特性に基づくアルゴリズムを利用して取引価格等の取引条件において不当な差別的待遇を行ってはならない。(21条)
監督管理
インターネット情報部門は、アルゴリズムレコメンドサービス提供者に対し分級分類管理を実施する。(23条)
世論属性または社会動員能力を有するサービス提供者は、サービス提供日から10営業日以内に、インターネット情報サービスアルゴリズム届出登録システムを通じて、サービス提供者の名称、サービス形式、対象分野、アルゴリズムの類型、アルゴリズムの自己評価報告、公示内容等の情報を届出登録しなければならない。(24条)
届出登録を行ったサービス提供者は、サービスを提供するWEBサイトやアプリケーションプログラム等の目立つ位置に届出番号を表示し、かつ公示情報へのリンクを提供しなければならない。(26条)
世論属性または社会動員能力を有するサービス提供者は、関連する規定に基づき、セキュリティ評価を実施しなければならない。(27条)
法的責任
サービス提供者が、7条、8条、9条第1項、10条、14条、16条、17条、22条、24条、26条の規定に違反した場合、法律・行政法規に規定がある場合はその規定に従い、規定がない場合はインターネット情報部門および電信、公安、市場監督等の関連部門がその職責に基づき、警告を与え、違反を指摘して通報し、期限付きの改善を命じる。改善を拒否し、または状況が深刻な場合は、情報の更新の一時停止を命じ、1万元以上10万元以下の過料に処す。治安管理違反に該当する場合は法律に基づき公安管理処罰を行い、犯罪に該当する場合は法律に基づき刑事責任を追及する。(31条)
サービス提供者が、6条、9条第2項、11条、13条、15条、18条、19条、20条、21条、27条、28条第2項の規定に違反した場合、インターネット情報部門および電信、公安、市場監督等の関連部門がその職責に基づき、関連する法律、行政法規および部門規則の規定に従って処罰する。(32条)
本規定に対する見解
アルゴリズムを用いたレコメンド機能は今や様々なサービスで活用されているが、消費者のサービス利用状況に応じて表示する価格を変えたり、特定の商品を繰り返し見ている消費者にのみキャンペーンを表示して購入意欲を煽ったりするといった行為が多発し、消費者の権益保護を求める声が強まっていた。
また、意図的ではなくとも未成年者のユーザーに向けて心身の健康を害するようなコンテンツが表示されたり、ITサービスに不慣れな高齢者が詐欺等のトラブルに巻き込まれたりするケースも増えており、レコメンド機能の管理強化が急務となっていた。
本規定はこれらの喫緊の課題を解決すると共に、国家の安定や情報保護、消費者権益の保護といった観点から総合的にレコメンド機能を規制する内容となっている。
中国国内で展開するサービス等にアルゴリズムを用いたレコメンド機能を導入している事業者においては、当該機能の使用をユーザーに目立つよう告知し、法令で定めている違法・不良情報を流布しないようデータベース化して管理する等の対応が必要となる。
またメディア系や大量のユーザーを有するサービスを運営している場合、当局への届出登録とセキュリティ評価の実施が必要となる可能性があり、違反には10万元以下の過料を含む罰則も定められていることから、対応が急務となる。
公式リンク(中国語)http://www.cac.gov.cn/2022-01/04/c_1642894606364259.htm
本レポートはクララが発行する「中国法令アラート 2022 年 1 月号」の内容を一部抜粋、編集したものです。「中国法令アラート」では、最新の法令・制度変更に関する詳細および予想される日系企業への影響、実務で得た動向変化に関する情報等を毎月 PDF でお届けしています。