中国でのSNS公式アカウントの運用に注意

2021年1月22日、中国国家インターネット情報弁公室は「インターネットユーザー公衆アカウント情報サービス管理規定」を公布した。2021年2月22日より施行されている。

「インターネットユーザー公衆アカウント(互联网用户公众账号)」とは、インターネットユーザーがWEBサイトやアプリなどのオンラインプラットフォームに登録し、社会大衆に向けて文字、画像、音声映像などのコンテンツを発信するアカウントを指すと定義されている(22条)。

同規定の中で具体的なサービス名は挙げられていないが、多くの企業や個人が宣伝や集客に利用している「微信公衆号(WeChat公式アカウント)」や中国版TikTokの「抖音」などのSNSが該当すると思われる。これらのSNSで情報を発信する個人や法人が適用対象となる。

本稿では、同規定の重要なポイントを整理し、日系企業への影響についてもまとめている。

目次

適用対象

中国国内でインターネットユーザー公衆アカウントサービスを提供するか、またはこれに従事する場合、本規定を順守しなければならない。(2条)

公衆アカウント運営者の義務と責任

公衆アカウント運営者(公众账号生产运营者)」とは、公衆アカウントを開設してコンテンツを発信する自然人、法人、非法人組織をいう。(22条)

公衆アカウント運営者が法人等の組織である場合、主な事業内容を登録し、当該事業領域に関連するコンテンツを発信しなければならない。(15条)

アカウントの運営やコンテンツ供給において第三者と協力する場合、書面で契約を結び、第三者の情報セキュリティ管理義務の履行責任を明確にしなければならない。(16条)

コンテンツを転載する場合、法に従って著作権者を表示し、情報源をたどれるようにしなければならない。(17条)

公衆アカウント運営者は次に列挙する違法行為を行ってはならない。(18条)

  • 真実の身分情報で登録しない、または真実の身分情報と一致しない公衆アカウントの名称、アバター、プロフィール等を登録すること。
  • 他の公衆アカウントが作成、発信したコンテンツを悪意をもって偽造、模倣、又は盗用すること。
  • 許可なく、又は許可の範囲を超えてインターネットニュース情報の収集、編集、発信サービスを提供すること。
  • 複数のプラットフォームのアカウントを操作し、低質な情報コンテンツを大量に発信したり、虚偽のトラフィックデータを生成したり、虚偽の注目を集める世論を形成すること。
  • 予期せぬ事態を利用して極端な感情をあおる、あるいはオンライン上での暴力によって他人や組織の信用を傷つけ、組織の正常な運営を妨害し、社会の調和と安定に影響を与えること。
  • 虚偽の情報を捏造し、作成元を偽造し、正確でない情報源を表示し、真実を歪曲し、社会大衆を欺くこと。
  • 有料での配信や情報の削除等の手段によって、違法なネットワーク監視、詐欺、恐喝、違法な利益を得ること。
  • 法律に違反して公衆アカウントを大量に登録する、買い占める、又は違法に売買すること。
  • 違法な情報を作成、複製、発信する、または不良な情報を作成、複製、発信することを防止し、抑制するための措置をとらないこと。
  • 法律、行政法規で禁止されているその他の行為。

違反に対する罰則

公衆アカウント情報サービスプラットフォームは、本規定及び関連する法律法規に違反する公衆アカウントに対し、法律に従って警告、アカウント機能の制限、情報更新の一時停止、広告出稿の停止、アカウントの閉鎖、ブラックリストへの収載、新規アカウント登録の禁止等の措置を取り、関連する情報は記録して保存した上で、関連主管部門に速やかに報告しなければならない。(19条)

本規定による影響

本規定はSNSの公衆アカウントの管理に関する基本的なルールを定めるもので、微信をはじめとするプラットフォーム側と実際に発信を行う公衆アカウント運営者のそれぞれに対し、義務や責任、禁止事項を明らかにしている。

本規定に日系企業の広告・プロモーション活動に直接的な制約を加えると考えられるものはないが、発信できる内容は登録した事業内容に関連するものに限られることに注意したい。またマーケティング会社等に公衆アカウントの運用を委託している場合は、情報セキュリティ管理義務を定めた契約書面を交わすことが必要となる。

なお本規定に関連して、公衆アカウントでの発信に際しては「サイバーセキュリティ法」12条や「インターネット情報サービス管理弁法」15条などで禁止されている内容(※)が含まれていないかどうか、慎重に対応することが求められる。社内に明確な運用ルールがなかったり、現在の運用ルールが関連する法令に準拠しているかどうか不安があれば、専門家の判断を仰ぐことが推奨される。

※「サイバーセキュリティ法」第12条では、「国家の安全・栄誉・利益を脅かす、政権を転覆させ社会主義制度の打倒を扇動する、国家の分裂・国家統一の破壊を扇動する、テロリズムおよび過激主義を流布する、民族的な恨みおよび民族差別を流布する、わいせつ情報を拡散する、虚偽の情報を捏造・流布し、経済の秩序および社会の秩序をかく乱する、他人の名誉・プライバシー・知的財産権およびその他の合法的権益を侵害する」ことを禁止している。

公式リンク(中国語)


本レポートはクララが発行する「中国法令アラート 2021 年 3月号」の内容を一部抜粋、編集したものです。「中国法令アラート」では、最新の法令・制度変更に関する詳細および予想される日系企業への影響、実務で得た動向変化に関する情報等を毎月 PDF でお届けしています。

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この記事を書いた人

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